日本人とノーベル賞〜日米の科学者の立場と日本の科学力の行方・「日本に帰りたくない」真鍋淑郎博士・日米の科学者の立場の大きな違い〜|ノーベル賞1

前回は「母国語・日本語と英語〜難しい日本語と子供の教育〜 」の話でした。

目次

日本人とノーベル賞:今年のノーベル物理学賞

物理学者 真鍋淑郎 博士(2021年ノーベル賞受賞者)(朝日新聞社)

今回はノーベル賞の話です。

今年、真鍋淑郎さんがノーベル物理学賞を受賞され、大変喜ばしいことです。

真鍋氏が記者会見を行った際、「日本に戻りたくない理由」を挙げています。

本記者会見で、真鍋氏は「アメリカ国籍に変えた理由」の質問に対して、答えています。

日本に
帰りたくない・・・

とハッキリ言っており、

日本は
「調和を求める社会」です。

日本語の「はい」「いいえ」などの語感・文化を理由に表現しています。

「日本に帰りたくない」真鍋淑郎博士

新地球紀行
東京(新地球紀行)

これも本質的なことですが、最も重要なのは1997年に、彼が日本に一時的に帰国した時の出来事です。

真鍋氏が、あるプロジェクトのリーダーを務めた際のこと、研究予算を所管の科学技術庁に求めました。

〜を実行するために、
〜円ほど予算を頂きたい・・・

この真鍋氏の要望に対して、科学技術庁の官僚は、

・・・・・
無理ですね。

驚いたことに、官僚は難色を示したのでした。

なぜ?

予算がなければ、
研究は進みません!

この研究、
よく分からないですね。

どんな意味が
あるんですか?

・・・・・

それに対して、憤慨した真鍋氏は「辞任して、米国へ戻った」のでした。

真鍋氏は今年90歳。

1997年の時は66歳であり、すでにノーベル賞を受賞するだけの大きな功績を持っていました。

すでに彼は、その業界では世界中で、かなりの実績と評価を受けていたはずです。

会見内で、

米国では、欲しいコンピューターの予算を
上司が確保してくれて・・・

自由に
やらせてくれた。

と言っている真鍋氏。

1997年当時、真鍋氏のチームに必要なコンピューター等の予算要求に対応した、科学技術庁の幹部。

なんと、否定的な姿勢を示しました。

おそらく科学技術庁の幹部は、

全然
分からん・・・

内容も重要性も「理解ができない」ので難色を示したのでしょう。

それに対して、おそらく真鍋氏も説明に務めたでしょう。

これは、
本当に必要な予算なんです!

この予算がなければ、
日本の科学技術が遅れをとってしまいます!

・・・・・

分からないものは、
分からない!

相手が重要性もわからず、理解しようとする姿勢もなかったのでしょう。

・・・・・

それで、研究者として長年の実績を持つ自分のプライドが傷つき、「嫌になって辞任した」に違いないでしょう。

日米の科学者の立場の大きな違い

新地球紀行
日の丸(Wikipedia)

「挑戦すること」に対する、米国と日本の文化の大きな文化の違いが最も大きな理由です。

それだけに留まらず、この事実は「科学立国としての日本」の根幹を揺るがします。

日本の未来がかかる、非常に重大な問題だと考えます。

前例主義ばかりが先行する日本。

基礎科学は「基礎」ですが、非常に難解です。

その道のプロでなければ、全く理解できません。

それに人生をかけて取り組む「科学者の精神」を理解しなかった、科学技術庁の幹部。

そして、理解しようとすらしなかった、科学技術庁の幹部。

自分が「分からないこと」には、
興味がない・・・

「分からないことには、興味が持てない」という姿勢には、大きな問題があります。

こういう政府の姿勢が、バブル崩壊以降の日本の最も大きな問題点であると考えます。

遅れに遅れている「日本のイノベーション」の大きな原因でしょう。

次回は上記リンクです。

新地球紀行

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