「違反建築物」が跳梁跋扈する日本の都市〜民民不介入で「いつも他人事」の行政・秀逸な皇居周辺の空間・醜い電柱や電線がない特別な空間〜|日本の建築・都市問題

前回は「違反建築物が景観を乱す日本の都市空間〜法律よりも財産権が優先される日本・無意味な建築基準法・「カオスのような」雑然とした東京の都市空間〜」の話でした。

目次

秀逸な皇居周辺の空間:醜い電柱や電線がない特別な空間

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東京の中心:皇居付近(新地球紀行)

東京の皇居付近の都市空間は、世界中の都市と比較しても、とても良い空間と考えます。

ニューヨークのセントラルパークのように、巨大な公園も良いですが、「皇居」は別格です。

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東京の中心:皇居付近(新地球紀行)

季節にもよりますが、皇居のお堀付近は水面に樹木が映り込んで、とても綺麗な空間です。

天皇陛下がいらっしゃる「日本人にとって特別な空間」である皇居。

巨大な水面がとても心地よく、「秀逸な空間」と表現しても良いほどの素晴らしい都市空間です。

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東京の中心:皇居付近(新地球紀行)

日本の都市空間を見出す、あの醜い電柱や電線も、流石に皇居付近にはほとんどありません。

「特別な空間」だからこそ、「別格」として念入りに整備されているのが皇居・丸の内の空間です。

「違反建築物」が跳梁跋扈する日本の都市

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東京(新地球紀行)

皇居周辺は別格としても、再開発等された地域以外は、電柱と電線だらけの東京の都市。

どんなに建築をかっこよく、美しくデザインしても、電柱と電線で台無しです。

これだけでも大問題ですが、日本の都市空間にはさらに問題があります。

それは、「違反建築物」や「違法建築物」が非常に多いことです。

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工事現場(新地球紀行)

建築を設計する際には、建築基準法に従う必要があります。

そして、この法規には、広さ・高さ・大きさなどが厳格に定められています。

例えば、東京で建築設計する際には、東京都安全条例や自治体の条例に従う必要があります。

さらに、消防法に関する規定や、避難に関する規定など、数多くの諸法規があるのが建築設計です。

「数多くの法律・法規に従わなければならない」建築設計の現場。

ところが、「明らかに従っていない」建物が多数あります。

以前、東京都内でマンションを設計した際、隣地に違反建築物がありました。

計画地に関する法規を調べた上で、現地を訪問した際に、

あ、あの建物は
高さ規制に違反しているな・・・

と一目で分かりました。

高さ規制には、斜線規制や日影規制など様々あり、斜線規制は比較的分かりやすいです。

一方で、日影規制は少し専門的内容ですが、建築設計に熟練すると「大体の感覚」が分かります。

隣の建物が建築基準法違反であっても「関係ない」ので、計画地の建築設計を進めました。

そして、建主に設計案の説明をすると、

このあたりは、
なぜ建たないのですか?

と、建物の角のあたりを指差しました。

同じ4階建ての隣の
建物は、このあたりも建っているのですが・・・

「隣の建物」ならば「同一の法規制」になるであろうことは、素人の方でも分かります。

必ずしも「隣と同じ」ではありませんが、「計画地と隣地の法規制は概ね同一」であることは確かです。

そこで、建主に説明するために、

隣の建物は、
日影規制に違反しています。

えっ!
違反しているんですか?

私たちは、建築基準法等の法規制に
完全に適合する設計をしますので、ご理解ください。

この建物は、しっかり容積率を
満たしており、ここはテラスになります。

それは
良いですね!

と建主は納得するも、やはりどうしても「隣地建物が高さ違反」には納得いかないようです。

民民不介入で「いつも他人事」の行政

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東京(新地球紀行)

どの程度、
隣の建物は違反しているのですか?

と聞かれたので、私たちは日影規制を簡単に説明して、「違反の程度」を説明しました。

「隣地建物の違反」は計画地に「甚大な悪影響」はもたらしませんが、「日影の影響」が少しあります。

このことは行政に指導して
もらいたいので、私が言いに行きます!

建主は、「隣地の建築基準法違反」を役所に言いに行くことになりました。

「ただ違反」では仕方ないので、「どのように違反しているか」の資料を作成しました。

建築基準法第九条:違反建築物に対する措置

特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

建築基準法でも、「違反建築物に対して除却、使用禁止等命ずることができる。」規定があります。

これは、当然のことであり「違反の程度」にもよりますが、違反建築物は存在してはいけないのです。

役所の建築指導課(審査課)に違反建築物のことを伝えに行った建主は、

隣の建物の、この辺りが
日影規制を大きく違反しています!

と、かなり強く担当者に伝えたようです。

ところが、担当者は、

建築基準法に違反しているかも
知れませんが・・・

役所は民民(民間)不介入なので、
何も言えません・・・

と言われたものの、建主はすぐに引き下がらず、

私たちの土地に新たに
マンションを建てるのですが、日影が多いのです!

これでは、困るので、
役所から是正指示を出して下さい!

と強く主張したものの、

繰り返しになりますが、
役所は「何も言えない」のです・・・

裁判でも起こせば別かも知れませんが、裁判には多額の費用と時間がかかります。

結局「泣き寝入りせざるを得ない」状況になった建主。

こういうことが「当たり前」である日本の法規制は、おかしいと思います。

違反建築物は、「除却」とまでいかなくても「何らかの是正指導」はあるべきでしょう。

例えば、

違反部分を、〜までに法に
適合するよう改修せよ。

この通告に従わない場合は、
罰金を課す。

民事上の罰則となるかは別としても、最低限「罰金程度は払わせるべき」と考えます。

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