前回は「電柱を減らして、景観を良くしよう」の話でした。
僕は建築設計の仕事しています。
2010年代に集合住宅(マンション)を設計した際、東京電力と新築建物の配電に関する協議する機会がありました。
その時「この集合住宅に配電するには、電柱を新設する必要があります。」と言われて、驚きました。
三井不動産や野村不動産が展開する大規模な集合住宅ならまだわかりますが、僕が設計したのは6階建で、20戸あまりの集合住宅。
「大規模」ではないのですが「新しい電柱が必要です」とのことです。

これには困りました。
僕は「電柱を減らす方向なのに、なぜわざわざ新設するんですか。周りにも既存の電柱があるので、なんとか新設せずに配電できる方策を考えて頂けませんか。」と東電担当者にお願いしました。
しかし、担当者の回答は「規則ですから」で終わりです。

以前「日本人とノーベル賞 1〜日本の科学力の行方を考えよう〜」の話でもありました。
このように役所や役所に類する機関との協議は、「話し合いにならない」で「却下」が多いですが、少しは前向きに考えて欲しいです。
粘り強く何度も何度も依頼しましたが、どうにもなりません。
「規則ですから・・・・・」で終わりです。
結局、新しく建築した集合住宅のすぐ脇に新たな電柱を設置せざるを得ませんでした。
せっかく外観も綺麗に設計したのに、すぐ隣に「この建築のために、新設した電柱」がドテーンと構えていて、複雑な気持ちになりました。
完成した後に見てみても、やっぱり不自然というか、なんというか。
電柱と電線があるだけで、建築の外観の美観は大きく損なわれてしまいます。

小泉内閣の時に、「日本橋を復活させよう」と、日本橋周辺の首都高を「地下化する」ことが真剣に検討されました。
しかし総工費が兆円単位で、該当する首都高を一時的に止めなければならないので、「現実的でない」と今は話にすらならなりません。
日本橋周辺の「首都高地下化」は現実的に難しいでしょう。
それだけの膨大なコストをかけるなら、まずは少しでも都内の電柱を地中化して欲しいと思います。

まず「電柱新設」は極力控えて欲しいと思います。
そして、東京電力など電力を支える各社の担当者も「規則で・・・」と言う前に「考える余地」が欲しい。
「上手く配電できないか」を、担当者がきちんと考えるシステムにして欲しいです。
その上で景観・防災の観点から、きちんと予算をつけて、既存の電柱の地中化を今まで以上に進めて欲しいと思います。

電柱は「倒れないように建てている」はずです。
阪神淡路大震災の時、鉄筋コンクリートの塊の高速道路の高架がドテーンと倒れた衝撃的な写真・映像が世界中を駆け巡りました。
大震災の際に電柱が倒れたり、上部のトランスが落ちてくることは「十分に想定されること」です。
無電柱化には大きな費用がかかりますが、防災にも大きく貢献するので、予算をつけて具体的に対処して欲しいです。
様々な再開発工事が進んでいる東京。
とにかく沢山ある電柱を出来るだけ早く、出来るだけ多く地中化することが大事です。
このままでは22世紀になった時も、日本の街のこの景観は「変わらないで、醜さそのまま」になりそうな気がします。