違反建築物が景観を乱す日本の都市空間〜法律よりも財産権が優先される日本・無意味な建築基準法・「カオスのような」雑然とした東京の都市空間〜|都市問題

前回は「美しくない日本の都市景観〜建築・都市の美観と防災性・首都高地中化プロジェクトと未来の日本・「規則ですから」に終始する東京電力との協議・電柱の必要性と東京電力の姿勢〜」の話でした。

目次

「カオスのような」雑然とした東京の都市空間

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東京(新地球紀行)

東京は憲法で首都とは明記されていませんが、日本の首都であることは間違いない世界的大都市です。

昔は「江戸」と呼ばれた東京の都市・街は、もともとは「水辺の空間」でもありました。

現代も荒川・隅田川など大きな河川が東京の中央を流れています。

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東京の中心:皇居付近(新地球紀行)

皇居付近には、かつての江戸城のお堀が残されていて、とても美しい景観です。

日本人の中では、「東京の街は好き」な方が多いでしょうし、筆者もそうです。

ところが、東京が都市・街として「美しいかどうか」あるいは「世界に誇れるかどうか」は別です。

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Firenze(新地球紀行)

欧州の歴史ある街と比較しても仕方ありませんが、欧州の街並は景観が統一されています。

色彩まで統一しなくても良いですが、全体的にパリッとした感じがあります。

これらの欧州の都市・街と比較すると、東京は、

TokyoはChaos(カオス)
のようだ・・・

と外国の方から表現されることもあります。

「カオス」というと、英語なので良い意味のような悪い意味のような、判然しません。

「カオス=混沌」なので、「混沌とした都市・街」である東京は、美しいとは言えなさそうです。

違反建築物が景観を乱す日本の都市空間

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東京(新地球紀行)

実際、欧州の都市・街と東京などの日本の都市・街の景観を比較すれば、

まあ、欧州の都市・街の方が
美しいかな・・・

私は絶対、欧州の街の
方が好き!

という意見の方が多いでしょう。

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東京(新地球紀行)

建物の統一感はゼロであり、電柱が林立する「大カオスの都市・街」の東京などの日本の大都市。

これだけでも日本人としては、なんだか悲しい気持ちになりますが、さらに大きな問題があります。

それは、日本の都市・街には違反建築物が多いことです。

建物を設計・建築する際には、建築基準法等の法律に従う・適合する必要があります。

そして、建築確認申請という事実上の「建築許可申請」を行なって、それを通過する必要があります。

規模が大きくなるにつれて、自治体の条例等に従う申請等が増えます。

中でも、最も大事なのは「建築確認申請」となります。

ところが、この「建築確認申請」に明確に違反した建物が、日本では数多く見受けられます。

つまり、日本は「違反建築物が多い」という特徴があります。

そして、それら違反建築物は当然のことながら、「高さ規制」などに違反しています。

その結果、違反建築物たちは「カオスの都市」の景観をさらに乱しています。

法律よりも財産権が優先される日本:無意味な建築基準法

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東京(新地球紀行)

東京の街を歩いていると、経験豊富な建築設計者ならば、

あの建物は
この辺りには建たなそうだな・・

あっちの建物は、あのあたりが
日影規制(高さ規制)に違反している感じだな・・・

と感じることがあります。

建物に対する法規制には、都市・街のエリアごとに指定されている「用途地域」が大事です。

住宅地ならば「第一種低層住居地域」が多く、大きな道路に面する商店街などは「商業地域」が多いです。

これらの「用途地域」は、ネットですぐに調べられます。

それを調べなくても「エリアごと」なので、建築士・建築設計者ならば大体分かります。

このあたりの用途地域だと、
あの高さは建たないはず・・・

勝手に増築したのか、
建築時に申請とは異なる建築をしたのか・・・

と思うことがあります。

設計する計画地の所有者の隣に、違反建築物があったことがありました。

隣の建物が
ちょっと高い気がするけど・・・

建物の情報は「建築概要書」等で取得できます。

そして、詳細に法規制をチェックすると、違反建築物であることが判明しました。

本来、この「明白な建築基準法違反の建築物」に対しては、建築基準法に規定があります。

建築基準法第九条:違反建築物に対する措置

特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

法律というのは、いつも「長くて分かりにくい」です。

上の建築基準法第九条では、

違反建築物に対して、自治体(特定行政庁)は
除却(解体)・使用停止等命ずることが出来る!

と明記されています。

ところが、この「違反建築物に対して除却(解体)が命令」されることは、ほとんど皆無です。

違反建築物に対しては、自治体も特定行政庁も、

民間の所有物に対しては、
何も言えません・・・

となってしまう傾向があります。

これは「どう考えてもおかしい事態」です。

「違反の程度」にもよるかも知れませんが、違反建築物に対しては強い姿勢が必要でしょう。

そして、そのような「当たり前の姿勢」が日本の都市景観を少しでも良くするでしょう。

新地球紀行

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