マンションの欠陥調査と裁判〜「守秘義務」のベールに包まれた弁護士の世界・書類ベースで進行する裁判「調査報告書」・重要な専門家・建築士の意見書・相手方のストーリー成立を防ぐ〜|建築裁判・不動産裁判

前回は「建築裁判の現場〜一級建築士の建築基準法の運用・判断する裁判官のスタンス・「勝てない」裁判の理由・問題点が多い「調査報告書」〜」の話でした。

目次

「守秘義務」のベールに包まれた弁護士の世界

東京(新地球紀行)

世の中ではたくさんの裁判がおこなされていますが、普通の・一般の方には「縁遠い」世界です。

建築設計のプロ・一級建築士として業務を行っている僕は、弁護士の友人が多数います。

「弁護士の友人」は多数いますが、あくまで「友人」であり「友人が、たまたま弁護士」であることが多いです。

その意味では、「弁護士の友人」というよりも「友人が弁護士」が実情に近いです。

そして、「弁護士の世界」である特殊な「訴訟の世界」。

友人から訴訟等の話を「少し話を聞く」ことがありますが、具体性が非常に低い話がほとんどです。

その理由は、弁護士には守秘義務があるからです。

〜で〜という
裁判があるんだけど・・・

ここから先は、友人といえど
守秘義務で話せないんだ・・・

友人といえども、弁護士である彼らは「その責務」をしっかり認識しています。

蚕糸の森アパートメント(新地球紀行)

作品という具体例を見せることが出来る、私たち建築家・建築士の場合は、

おっ、
すごいね!

などの「具体的な仕事」に対する反応を頂くことが多いです。

その反面、「守秘義務」のベールに包まれた弁護士の「具体的な仕事」。

それは、一般の方には全く分からない世界です。

書類ベースで進行する裁判

工事現場(新地球紀行)

僕が建築・不動産に関する訴訟のコンサルティングにを始めたきっかけは、やはり弁護士の友人でした。

ある時、弁護士の友人から電話があって、

やあ・・・
今、建築裁判の案件を抱えているんだけど・・・

工事の見積書、工程表、
打ち合わせ記録など沢山書類があるんだ。

だが、見ても何が何だか
よく分からないから、相談に乗ってくれ!

中学〜大学まで同じ学校の同級生(大学の専門は異なります)からの相談。

いいよ。
とりあえず、資料を送って欲しい。

と二つ返事で応じたのがキッカケで、以後様々な裁判のコンサルティングをしています。

建築裁判のコンサルティングをしていると、大抵の場合は「どちらが悪いか」は明確であることが多いです。

「明確である」のは「私たち専門家から見て」であり、専門外の方がみると違うかもしれません。

初めて裁判の現場に関わって、膨大な準備書面・書証などを読むと、

これは、被告の建設会社に
問題があり過ぎる・・・

とか、

これは、原告の不動産会社の
論理が無茶すぎるのでは・・・

と思うこともしばしばです。

専門家から見れば「どう考えても白黒が明白」なのですが、裁判では異なります。

それは、裁判官が「書類をもとに善悪を判断する」からです。

建築業界や建設業に多少詳しい裁判官がいるかもしれませんが、専門家でない以上限界があります。

建築の詳しい実務の流れや建築基準法の運用などが、裁判官にわかるはずがありません。

それは、私たち建築士が「裁判のことをよく知らない」ことと同様でしょう。

そして、裁判官は「よく分からない書面・書証」をもとに、自分なりに考えて判断するのでしょう。

とにかく「書類ベースで進行する」のが裁判の実態です。

重要な専門家・建築士の意見書:相手方のストーリー成立を防ぐ

工事現場(新地球紀行)

この「書類ベースで裁判が進行する」ことは、弁護士・裁判官など法曹界の方にとっては、

それは、
当たり前でしょう。

かもしれません。

ところが、僕を含めた「法曹界以外の人間」からみると、非常に特殊に感じられる世界です。

「法曹界以外の人間=一般人」が考える裁判は、法廷で原告・被告それぞれの弁護士が、

この被告の主張は、
〜点で絶対におかしい!

何言ってんだ!
原告こそ、こんなでっち上げでしかない証拠を出して!

と侃侃諤諤の議論をするものと思っていました。

ところが、実際の法廷は全く異なる世界でした。

それでは、原告の準備書面から
いきましょう・・・

原告のこの主張に対して、
被告は〜と主張していますが・・・

と裁判官が主導し、弁護士の方々は「あまり話さない(話せない)」のが現実です。

とても「侃侃諤諤」という世界ではなく、「書類ベースに整然と進んでゆく」感じです。

見方によっては、

これほど「全て書面で判断」ならば、
弁護士が法廷に出てくる必要がないのでは・・・

と感じてしまうほど、とにかく「書類ベース」の裁判。

そして、マンションの欠陥調査の報告書などが証拠として上がってくると、

原告の甲〜号証では、
〜と記載されています。

と「欠陥調査報告書の内容」をもとに裁判官が判断します。

つまり、「欠陥調査報告書の内容」の真偽は「それほど議題にならない」のが実情です。

相手方が「欠陥調査報告書の内容」を出してきて、「相手方のストーリーが成立」する時。

多くの場合、こちら側が「勝てない」裁判になってしまいます。

それでは、勝つためにはどうすればよいのか。

それらの「欠陥調査報告書の内容」の矛盾点をつくのが効果的です。

「書面の内容」の矛盾・間違いを具体的に指摘して、「相手方のストーリーが成立」するのを防ぐことが最優先となります。

そして、相手型のストーリーを叩き潰すために、明確な文書が必要です。

建築裁判に勝つためには、経験豊富な一級建築士に書面・書証をチェックしてもらうことが必須でしょう。

新地球紀行

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次