裁判と国家の姿 4〜弁護士と建築士の視点・法律違反・裁判官の判断〜|建築裁判・不動産裁判

前回「裁判と国家の姿 3〜建築士と建築基準法・証拠偽造・建築確認の実態・耐震偽装事件〜」の話でした。

目次

裁判における「違反の認定」のハードル

工事現場(新地球紀行)

友人の弁護士から相談を受けた、建築裁判。

建築士の視点から見て「建築基準法などの法律違反が多数ある」現実があります。

一方で、法律の世界では、

「法律違反の認定」は
裁判では、なかなかされないんだ・・・

という状況のようです。

このことは、ある意味で新鮮味がありました。

建築設計の実務と様々な法律・法規

工事現場(新地球紀行)

日頃、建築設計の実務をおこなっていると、建築基準法・消防法など様々な法規に従う必要があります。

マンション(集合住宅)や幼稚園などの規模になると、バリアフリー法などの法律も登場します。

さらに、法律以外に各自治体の条例などもあります。

あの法律を
しっかり認識して・・・

この条例の内容も
明確にしておかないと・・・

大規模な建築の設計においては、様々な法律・条例が関係し、申請先も多岐に渡ります。

慣れてくると「それほど大変でもない」ことですが、大規模な建築設計を始めてやる時は、

他に何か
関係する法律・条例はないか・・・

と非常に神経質になったものです。

これら、非常に多岐にわたる法律などを「守ること」は建築士として「当然のこと」であります。

もし、これらの法律や条例に違反したら、建築設計の業務に重大な影響が出るでしょう。

そして、建築士として罰せられる対象となるかもしれません。

そうならないように、一生懸命デザインやコンセプトを念頭におきながらも、「遵守すべき」存在の法律・条例。

判断は「裁判官に委ねる」姿勢

工事現場(新地球紀行)

友人の弁護士と相談しながら、意見書をまとめてゆきます。

〜であり、〜という建築基準法に
抵触している。

と説明しますが、友人の弁護士からは、

法律に抵触「する」か「しない」かは
裁判官が判断することだから・・・

「抵触する可能性がある」と
記載して欲しい。

えっ、
そうなんだ。

日々建築基準法などの諸法律に接している建築士としては、「裁判官よりも詳しい自信」があります。

ところが、裁判においては絶対的な存在である裁判官。

その裁判官に意見する「意見書」においては、明確な法律違反等は「言わない方が良い」ということです。

法律のプロである裁判官にしっかり訴求するような文章をまとめます。

そして、友人の弁護士に送ってチェックしてもらいました。

この辺りは、
こういう書き方にして欲しい。

様々なところでチェックが入りました。

やはり、各業種ごとに「その業界の習わし」があるので、その風習には従う必要があります。

生麦事件と「行き違い」

生麦事件では、当時の日本の風習である「大名行列に対しては、下馬して道を譲る」ことがポイントでした。

そのことを知らなかった英国人たちは、薩摩藩の大名行列を横切ってしまいます。

英国人たちにとっては、

大勢の行列を
横切っただけ。

だったのですが、薩摩藩及び薩摩藩士にとっては、

我が薩摩藩の大名行列を
横切るとは言語道断!

だったのでした。

生麦事件(Wikipedia)

その「完全な行き違い」が、「1名死亡、2名重傷」という惨事に至ったのでした。

日頃、文書作成もしますが、設計図書・パース・模型などを中心とする私たち建築家(建築士)の世界。

対して、ほぼ文書ベースの弁護士の世界。

大きく異なることを実感しながらも、「法律のプロ」である弁護士のチェックにより意見書の完成度を高めてゆきます。

最終的に「建築基準法違反の可能性」を明確にした意見書を提出しました。

ありがとう!
この意見書を正式に裁判に提出するよ。

友人から喜ばれ、依頼主からも感謝され、良かったです。

「違う世界」が垣間見えたこともまた、大きな収穫でした。

新地球紀行

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