裁判と国家の姿 5〜一級建築士の指摘と賠償・裁判の証拠の問題点・建築基準法違反と裁判・法律違反と賠償額の関係〜|建築裁判・不動産裁判

前回は「裁判と国家の姿 4〜弁護士と建築士の視点・法律違反・裁判官の判断〜|建築裁判・不動産裁判」の話でした。

目次

建築基準法違反と裁判:裁判の証拠の問題点

工事現場(新地球紀行)

弁護士の友人から相談を受けた、建築に関する裁判。

相手方の設計図書・プロセス等において、様々な問題点を多数発見しました。

中でも、明確な建築基準法を発見し、

これは、
建築基準法に完全に抵触する!

法律は分かっていても、
建築に関してど素人の裁判官・・・

その裁判官にも
よく分かるように、具体的に意見書を作成しよう!

裁判の訴状などを読むのは初めての経験でした。

そして、裁判に関する「意見書を作成する」経験もまた初めてのことでした。

友人の弁護士から色々と法律的アドバイスをいただきながら、なんとか意見書が完成しました。

法律違反と賠償額の関係

新地球紀行
東京地方裁判所(新地球紀行)

先日の意見書を提出して、
期日に裁判所で弁論したよ!

僕の意見書、
どうだった?

相手方に大きな打撃を与えることが予想される内容を、しっかりと書き込んだ意見書。

裁判官は
どのような反応だった?

意見書の内容は、
よく理解してくれたよ!

非常にわかりやすい
書き方をしてくれたおかげだ!

嬉しい反応です。

具体的に、
相手方の賠償要求額削減に大きな影響もちそう?

「裁判官がよく理解した」ということは、具体的な「賠償要求額削減」につながりそうです。

少しワクワクしながら、話を聞いていました。

いや、まあ、
それがな・・・

ちょっと、ここでトーンが急速に下がる友人の弁護士。

裁判では、
「よくあること」なんだが・・・

裁判官は「法律違反と賠償額は別」
というスタンスなんだ・・・

えっ!
なんで?

唐突な展開に大いに驚きました。

賠償要求の弁論と法律違反:一級建築士の指摘と賠償

工事現場(新地球紀行)

初めて裁判に「プロの専門家」として、具体的に関わりました。

訴状や準備書面を読んでみると、とにかく「〜円を賠償額として要求する」ことの主張と反論の応酬です。

いわば、「相手が悪い」ことを主張する裁判。

具体的な要求としては、金銭となることが多いのが現実です。

そこで、建築基準法違反を「建築のプロ」として指摘しました。

これで、
相手方は終わりだろう!

こう考えていました。

ところが、

裁判官は「法律違反は問題。
だが、かかった費用は別」というスタンスなんだ・・・

そうなんだ・・・

これは、非常に大きな驚きであると同時に新鮮なことでした。

このことは、弁護士・裁判官など「裁判に関わる方々」にとっては、

裁判というのは、
そういうものだよ・・・

法律違反も問題だが、
そもそもの裁判の元の訴状の主張が最重要!

かもしれません。

一方で、日々建築基準法・消防法・建築士法などの法律を遵守している立場からすると、

法律違反を
したら「終わり」なのでは?

とも思います。

私たち建築士が、「建築士としての職責からずれた行為」をおこなったら処罰が下ります。

2005年に発生した「耐震偽装事件」では、犯罪を主導した一級建築士の免許取消となりました。

法律の総本山である
裁判所で、「法律違反は別」というのは、おかしくないのか?

と思います。

建築士以外の国家資格である医師の場合も、「医師としての職責を果たさなかったら、終わり」でしょう。

工事現場(新地球紀行)

弁護士との友人との話がつづきます。

「法律違反をしていても、
賠償額は請求できる」ということ?

ま、
そうなんだ。

ということは、僕の意見書は
「あまり有効ではなかった」ということ?

いやいや、
あの意見書のお陰で、論点がすごくクリアになった!

意見書のお陰で、
相手方の何が具体的に問題か、が明確になった!

それは
良かった!

でも、賠償請求額の
縮減には直結しない、ということ?

ここで、友人は少し困ったように、

まあ、
そうなんだよな・・・

僕も裁判官に強く
「法律違反」を主張したんだが・・・

「法律違反」を
明確に認めるのは・・・

その裁判の決定権者である
裁判官にとっては、非常にハードルが高いことなんだ・・・

確かに「法律違反を正式に認める」のは「法律専門家」としては大変なことかもしれません。

一方で、「法で裁く総本山」である裁判所で、「法律違反が大して影響しない」現実。

ちょっと
納得がいかないな・・・

まあ、とにかく意見書は
とても役立だったし・・・

また、別の
件でも力になってくれ!

OK!
任せて!

少しは力になれたようです。

「決定打」と思った「法律違反の指摘」でした。

それが、「決定打とは程遠い結果」になりました。

こういうことが欧米の裁判でも同様なのか、異なるか、は分かりません。

いずれにしても、裁判という「特殊な世界」を垣間見た気がしました。

新地球紀行

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