建築裁判の現場〜一級建築士の建築基準法の運用・判断する裁判官のスタンス・「勝てない」裁判の理由・問題点が多い「調査報告書」〜|建築裁判・不動産裁判

前回は「裁判と国家の姿 5〜一級建築士の指摘と賠償・裁判の証拠の問題点・建築基準法違反と裁判・法律違反と賠償額の関係〜」の話でした。

目次

一級建築士の建築基準法の運用

東京(新地球紀行)

一級建築士は、設計実務において建築基準法をはじめとする様々な法規に従う必要があります。

建物を建てる際には、「建築確認申請」という建築許可のような手続きを経る必要があります。

その建築確認申請の手続きの際には、面積・高さなど様々な事項に関して法規制があります。

この件は、建築基準法〜条に
従うから、〜である必要がある・・・

など「明確に従うべき規制」があることが多いですが、

この建築基準法〜条に
明記されている内容は、〜ではどうなのだろうか?

あるいは、

これは、問題ないのか
あるいは、法規に規制されるのか?

という、「法律の解釈」によって「規制のされ方」も様々である場合があります。

建築確認申請は、基本的には民間の建築確認検査機関に出して「審査を受ける」ことになります。

そこで、集合住宅や施設などの大型の建物の場合など、

この建築基準法〜条の解釈は
〜で良いのでしょうか?

と、申請前に審査機関に問い合わせて、

これは、〜という考え方になるので、
〜という規制になります。

などの「回答を得る」上で、設計を進めることが多いです。

この「法律の解釈」の内容・仕方は、建築確認検査機関による場合も多々あります。

そのため、

〜の内容は、
建築確認検査機関AではNGだったけど・・・

建築確認検査機関Bでは
OKだった・・

という場合も多々あります。

そのため、大規模な建築を設計する一級建築士は、建築基準法などの法規をある程度理解しています。

そうは言っても、「法律の専門家」である弁護士資格を持つ裁判官とは、「法律に対する理解」は浅いでしょう。

建築裁判を判断する裁判官のスタンス

工事現場(新地球紀行)

同様に、弁護士資格を保有するとはいえ、裁判官は建築基準法等の「建築関連法規」には詳しくありません。

裁判官の方々は、

法律のことは
分かるが・・・

建築基準法や消防法、
建築士方には、それほど詳しくない・・・

というのが現実でしょう。

まして、建築設計の具体的プロセスや建築工事などのことは、

設計や工事のことは、
全く分からない・・・

設計図書や
見積書を見ても、全然分からない・・・

というのが現実でしょう。

その中、建築・不動産裁判の「判決を下す」立場の裁判官たち。

「全然分からない」ことに対して、「判決を下す」際には、その根拠が必要です。

その根拠となるのが、様々な書証・証拠です。

原告・被告から
提出された証拠をもとに判断を下す!

数年前から、様々なケースの建築・不動産に関するコンサルティングを行っています。

きっかけは、中学・高校の親しい同期の弁護士から「建築裁判に関する相談」を受けたことでした。

そして、初めて知った「裁判の世界」ですが、思っていたより非常に「書類ベース」で進行します。

建築裁判に関する書類・証拠・書証には、問題点も多いです。

「勝てない」裁判の理由:問題点が多い「調査報告書」

工事現場(新地球紀行)

いくつか建築訴訟に関するコンサルティングをしていると、弁護士の方から「勝てない」話を良く聞きます。

その「勝てない」理由は、裁判所に提出される「一級建築士による調査報告書」であることが多いです。

裁判の証拠・書証には、設計図書・見積書・工程表・工事写真などが多数提出されます。

ところが、裁判官たちは、

設計図書・見積書・工程表・工事写真などを
見ても、全然分からない・・・

のです。

そこで、多くの場合、原告の弁護士は、一級建築士の資格を持つ調査会社に建物調査を依頼します。

この建物は、〜の点が
大問題で、大きな瑕疵があります!

そして、「建物に関する調査報告書」を作成してもらい、裁判所に証拠として提出します。

この建物は、〜と〜と〜など様々な
問題があり、施工者(被告)の過失です!

という調査報告書が証拠となり、提出されれば、裁判官は、

設計図書・見積書・工程表・工事写真などは
全然分からないが・・・

報告書の文章を
理解することはできる!

調査報告書内には、様々な設計図書・写真等がありますが、裁判官にとって大事なのは、

現場写真などは見ても分からないが、
専門家・一級建築士による調査結果の文章を重視!

となります。

そして、多くの場合、「原告の弁護士の方針に基づく」調査報告書が提出されているのが現実です。

これらの「建物の調査報告書」を様々見ましたが、「瑕疵があること前提」で作成されていることが多いです。

中には、「建築実務・工事現場のこと」を全く知らないと思われるような記述もあります。

例えば、「断熱材の瑕疵」に関して、「断熱材が貼れない・吹けない」場所にも、堂々と

この部分にも断熱材があるべきなのに、
入っていません!

と書いてあることもあります。

こういう「建築実務・工事現場の実態」を全く知らない報告書に対して、裁判官は、

そうか!
そんなに大問題があって、瑕疵があるのだな!

と判断するのでしょう。

すると「勝てない」裁判になってしまいます。

それでは、勝つためにはどうすればよいのか、というと、それらの証拠の調査報告書の矛盾点をつくのが効果的です。

弊社は、様々な建築・不動産裁判のコンサルティング経験があります。

裁判の当事者、あるいは代理人の弁護士の方からご一報いただきましたら、一度、ご相談に乗ります。

建築裁判は訴訟額が非常に高額になる傾向にありますが、大きな反撃になる意見書を作成できます。

お困りの方は、ぜひ一度ご連絡をいただければと思います。

新地球紀行

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