外国の方に対しては「分かりやすい言葉」を 5〜「戦争=外交の延長」という考えに逆行した「黙殺」・ポツダム宣言と天皇制・「黙殺」によって導かれた歴史・外交と大義名分〜|原爆投下と日本政府

前回は「外国の方に対しては「分かりやすい言葉」を 4〜「黙殺」と欧米の二元論・原爆投下とソ連の侵攻・ソ連の日ソ不可侵条約一方的破棄・ヤルタ会談での秘密協定・スターリンの思惑〜」の話でした。

目次

「戦争=外交の延長」という考えに逆行した「黙殺」

鈴木貫太郎 首相(人物で読む太平洋戦争 世界文化社)

外交も「駆け引き」「交渉」です。

そして、戦争は「外交の延長」という考え方もあります。

ポツダム宣言に対して、

ポツダム宣言を
「黙殺」するのみ・・・

と発言・回答した鈴木貫太郎首相。

本来ならば、国家元首として鈴木首相は、

検討するので、
〜日待ってください・・・

などの回答を、すべきであったでしょう。

仮に「黙殺=全く受け入れられない」と言わざるを得ない状況であっても。

梅津美治郎 参謀総長(Wikipedia)

特に陸軍が「徹底抗戦を主張」していましたが、誰の目にも日本が敗北するのは分かっていたのです。

問題は「いつ日本が降伏するか」だけだったのが現実でした。

阿南惟幾 陸軍大臣(Wikipedia)

ポツダム宣言受諾においては、「天皇陛下の戦勝国の扱い方」は大きな問題でした。

降伏直前に、指導者であるヒトラーが自殺してしまったドイツ。

Adolf Hitler独総統(Wikipedia)

つい最近まで独裁者であったヒトラー総統が「この世からいなくなってしまった」ドイツ。

Karl_Dönitz 独大統領:敗戦時(Wikipedia)

ヒトラーの命令により、デーニッツが大統領となり、ドイツの連合軍への降伏を進めます。

ドイツ国内・ドイツ内部で、何度も暗殺計画が計画されたヒトラー総統の突然の死。

日本同様、もはや絶望的な状況となっていたドイツ。

連合軍、ソ連軍に対する
降伏の手続きを進めよ!

Hitlerさえ
いなければ、連合軍と話が進められる・・・

ヒトラーが消えたことで、「連合軍・ソ連軍との降伏」は進みましたが、大混乱だったでしょう。

ポツダム宣言と天皇制

御前会議:1943年(Wikipedia)

そのドイツの状況とは、大きく異なる状況であった日本。

日本もまた、連合軍、主に米軍に追い詰められていましたが、政府の体制は比較的安定していました。

一方で、

天皇陛下は
どうなるのだ?

天皇制は
どうなるのだ?

様々な不安要素が沢山あり、日本国内の状況としては、

「黙殺する」と、
言わざるを得なかった・・・

のかもしれません。

一方で、外交は「相手あってのこと」であるのは当然です。

Harry Truman米大統領(Wikipedia)

とにかく、
Japanは無条件降伏せよ!

と主張する米国・連合軍に対して、日本は、

天皇制などの条件が、
曖昧では・・・

と考えていたのでした。

そして、陸軍は若手を中心に爆発して、クーデターすら起きかねない状況。

Japanは、ポツダム宣言に
対して、回答せよ!

そして、国内の諸事情から、

黙殺する
のみ・・・

と言ってしまった鈴木首相。

自分が「黙殺」と言った時、

連合軍に、
どう伝わり、どう考えるのか?

を、考えていなかったのでしょう。

当時の鈴木首相は。

考える余裕すらなかったのかもしれません。

「黙殺」によって導かれた歴史:外交と大義名分

Winston Churchill英首相(Wikipedia)

「黙殺」の結果、米国・英国に攻撃の「大義名分」を与えてしまいました。

旧ソ連に対しては、不可侵条約の一方的破棄の「大義名分」を与えてしまいます。

J.Stalinソビエト連邦指導者(書記長)

よしっ!
Japanとの日ソ不可侵条約破棄!

ポツダム宣言を
拒否したJapanが悪い!

そして、これが日本にとって、取り返しのつかない致命的大失態へとつながります。

この「黙殺」問題に関しては、諸説あります。

当時の状況や歴史を考えて「相手国に誤解を与え、大義名分を与えてしまった」と考えます。

原爆Little Boy(Wikipedia)

日本人同士であれば、この「黙殺」は「以心伝心」で状況が伝わります。

こちらの

回答しようがない、
やむを得ない状況・・・

を、理解してくれたかもしれません。

そしてその理解を元に相手も状況を推察し、対応してくれたかも知れません。

Stalinソ連書記長は、

不可侵条約破棄に、
うってつけの大義名分だ!

この際、
Japanの領土を、たくさんもぎ取れ!

内心ほくそ笑んだことでしょう。

欧米は、こういう日本の「以心伝心」的な心を推し量るような文化はありません。

政府の発表は正式な回答として「文面」で相手に伝わるのです。

「遺憾」の話にしても今回の「黙殺」にしても、言葉は非常に大事です。

特に、国家間の折衝・外交においては。

「正しい意味が、正しく相手に届いてこそ意味がある」と改めて思います。

まして、言葉によって「誤解を届けてしまう」こともあること。

それは、外交においては、最も避けなければならないことでしょう。

「黙殺」によって導かれた歴史は変えようがありません。

1945年8月6日広島へ原爆投下(Wikipedia)

外交においては、海外に対して「黙殺」や「遺憾」などの使用は避けるべきでしょう。

日本語的な「曖昧な言葉」は、絶対に使用しないべきと考えます。

自国民が分かりやすく、相手国の首脳を含む方々にも「分かりやすい言葉」を使用するべきと考えます。

それが、日本が海外により積極的に発信できるようになる「はじめの小さく、大きな一歩」でしょう。

新地球紀行

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