前回は「外国の方に対しては「分かりやすい言葉」を 1〜遺憾=Regrettableという意味・米英中連名の降伏勧告「ポツダム宣言」・鈴木貫太郎首相の「黙殺」と無視=ignore〜」の話でした。
トルーマン大統領とポツダム宣言:鈴木貫太郎の意外な返事

超異例の「大統領四選」を成し遂げ、第二次世界大戦の米国を引っ張ったルーズベルト大統領。

日独の枢軸国を倒した後の「世界政治の構成」を米英ソで作り上げようと、多数の会談を実施しました。

我がUnited Statesが
GermanyとJapanに負けるはずがない!



我がUnited Statesは
勝つしかないのだ!
この中、1945年4月12日にルーズベルト大統領は急死してしまいます。



・・・・・
脳卒中でした。
米国が「勝つしかない」状況だった第二次世界大戦。
と言っても、枢軸国の日本・ドイツの抵抗も相当なものでした。
その中、長く大統領を務めたルーズベルト大統領は、かなりの重圧のある人生だったのでしょう。
ルーズベルト大統領の急死に伴い、副大統領から大統領に昇格したのがトルーマン大統領でした。





Japanは、もはや我がUnited Statesに
勝つことは不可能だから・・・



早々に
無条件降伏せよ!
日本に対して、「無条件降伏=ポツダム宣言」を発しました。


この「無条件降伏」には、天皇の扱いなどが曖昧でした。
さらに、陸軍を中心とする軍部は、



最後は
本土決戦だ!
「本土決戦で米軍と最終決戦」という強硬な主張を繰り返す中、



ポツダム宣言を
「黙殺」し、断固戦争完遂に邁進する・・・
時の鈴木首相は、ポツダム宣言「黙殺」を発表しました。
黙殺の余波


この鈴木首相の「黙殺」。
外電には、



日本政府が、
ポツダム宣言をignore(無視)した!
「黙殺=ignore(無視)」と伝わりました。
日本語の意味では、「黙殺」と「無視」では全然違います。
ところが、この「無視」を英語で聞いたHarry Truman大統領は、



よしっ!
ならば!
一気に原爆投下を前線に指示しました。


そして、原爆投下の決断に踏み切りった米政府。
本来、戦争と外交は「別物」ではないので、



降伏などの協議は、話し合いをして、
初めて価値を持つ・・・



それをignore(無視)では、
全く話にならない・・・
こう考えたのでしょう。
実際は、米国はソ連との関係も含め、原爆投下へ向けて着々と準備を進めていました。
おそらく、日本へ投下する方針は、当時すでにほぼ固まっていたのでしょう。
そこに、ポツダム宣言の「無視」で、米国側に原爆投下の「大義名分」を与えることになりました。
鈴木首相が「黙殺=ignore」の声明を出して10日も立たないうちに、まずは広島に原爆が投下されます。
黙殺の日本語のニュアンス


日本語の黙殺というのは、無視ではありますが、「単なる無視」とはニュアンスが異なります。
当時の状況を考えれば、
状況としては宣言を受け入れざるを得ない状況であることは分かっている。
だが、国内状況(陸海軍の反対)等を鑑み、「無視」あるいは「無回答」とせざるを得ない。
このような意味だったのでしょう。
これは、日本人同士であれば、時代が違っても「理解できる」話です。
当時、「本土決戦」を主張する将校が多数だった日本陸軍。
実際には陸軍幹部の本音は、



一億総特攻と
なるが・・・



本土決戦で、
米国に痛撃を与えることが可能なのかどうか・・・





実際に本土決戦で、
どのように米軍と戦うのか・・・



武器弾薬も
底を突きかけている・・・
心の奥底では、陸軍幹部は、



戦争続行は
難しい・・・



日本軍の将兵だけではなく、
何人の日本国民が犠牲になるのか・・・
「現実には難しい」と考えていたでしょう。
本音ではそう考えていたであろう陸軍二大幹部の阿南惟幾陸軍大臣、梅津美治郎参謀総長。
陸軍の大多数が「本土決戦」を主張する中、二人もまた降伏反対でした。



本土決戦は大変困難だが、
陸軍としては、これしかない・・・



「降伏」を決めたら、陸軍の将兵たちが
クーデターを起こすかもしれぬ・・・
実際に、日本は国内でクーデターも起きかねない一触即発の極限的状況であったのです。
その極めて厳しい国内の情勢の中、「国内情勢を鑑みて」鈴木首相は、



断固、
戦争完遂に邁進する!
このように言い続けていましたが、本音は、



「断固、戦争完遂に邁進する!」と
言い続けるより他に選択肢がない・・・
「こう言うしかない」状況だったのでしょう。
一方で、米国・英国・中国からすると、



何か伝えても、Japanは
またignore(無視)するのではないか・・・



それならば、
交渉の余地がない・・・
大日本帝国政府に対する、「ある種の不信感」を持つに至ったでしょう。
国内状況がどうであれ、国家元首としては、もう少しまともな回答をすべきでした。
「何らか前向きとも取られるような」回答を。



検討して、
近日回答します・・・
など、なんでも良いので「黙殺」等の「誤解を生みかねない言葉」は発するべきではありませんでした。
特に戦争中の外国・相手に対しては。
交渉のテーブルについてくれなければ、外国・相手は、



こちらの話を「無視」する
のならば・・・



何も言うことが、
出来ないではないか・・・
そんなイメージを持ってしまいます。
ただ、「それを言えない」空気が日本国内にあったのも事実でした。
次回は上記リンクです。