外国の方に対しては「分かりやすい言葉」を 2〜黙殺の日本語のニュアンス・黙殺の余波・トルーマン大統領とポツダム宣言・鈴木貫太郎の意外な返事〜|原爆投下と日本政府

前回は「外国の方に対しては「分かりやすい言葉」を 1〜遺憾=Regrettableという意味・米英中連名の降伏勧告「ポツダム宣言」・鈴木貫太郎首相の「黙殺」と無視=ignore〜」の話でした。

目次

トルーマン大統領とポツダム宣言:鈴木貫太郎の意外な返事

Franklin Roosebelt米大統領(Wikipedia)

超異例の「大統領四選」を成し遂げ、第二次世界大戦の米国を引っ張ったルーズベルト大統領。

ヤルタ会談:ルーズベルト米大統領、チャーチル英首相、スターリン ソ最高指導者(Wikipedia)

日独の枢軸国を倒した後の「世界政治の構成」を米英ソで作り上げようと、多数の会談を実施しました。

この中、1945年4月12日にルーズベルト大統領は急死してしまいます。

脳卒中でした。

我がUnited Statesが
GermanyとJapanに負けるはずがない!

我がUnited Statesは
勝つしかないのだ!

米国が「勝つしかない」状況だった第二次世界大戦。

と言っても、枢軸国の日本・ドイツの抵抗も相当なものでした。

その中、長く大統領を務めたルーズベルト大統領は、かなりの重圧のある人生だったのでしょう。

Harry Truman米大統領(Wikipedia)

ルーズベルト大統領の急死に伴い、副大統領から大統領に昇格したトルーマン大統領。

Japanは、もはや我がUnited Statesに
勝つことは不可能だから・・・

早々に
無条件降伏せよ!

という「ポツダム宣言」を発しました。

鈴木貫太郎 首相(人物で読む太平洋戦争 世界文化社)

この「無条件降伏」には、天皇の扱いなどが曖昧でした。

さらに、陸軍を中心とする軍部は、

最後は
本土決戦だ!

と強硬な主張を繰り返す中、

ポツダム宣言を
「黙殺」し、断固戦争完遂に邁進する・・・

と時の鈴木首相は、ポツダム宣言「黙殺」を発表しました。

黙殺の余波

1945年8月6日広島へ原爆投下(Wikipedia)

この鈴木首相の「黙殺」。

外電には、

日本政府が、
ポツダム宣言をignore(無視)した!

と伝わりました。

よしっ!
ならば!

と、米国は原爆投下の決断に踏み切りました。

本来、戦争と外交は「別物」ではないので、

話し合いをして、
初めて価値を持つ・・・

それをignore(無視)では、
全く話にならない・・・

からでした。

実際は、米国はソ連との関係も含め、原爆投下へ向けて着々と準備を進めていました。

おそらく、日本へ投下する方針は、当時すでにほぼ固まっていたのでしょう。

そこに、ポツダム宣言の「無視」で、米国側に原爆投下の「大義名分」を与えることになりました。

鈴木首相が「黙殺=ignore」の声明を出して10日も立たないうちに、まずは広島に原爆が投下されます。

黙殺の日本語のニュアンス

阿南惟幾 陸軍大臣(Wikipedia)

日本語の黙殺というのは、無視ではありますが、「単なる無視」とはニュアンスが異なります。

当時の状況を考えれば、

「黙殺」のニュアンス

状況としては宣言を受け入れざるを得ない状況であることは分かっている。

だが、国内状況(陸海軍の反対)等を鑑み、「無視」あるいは「無回答」とせざるを得ない。

という意味になるのでしょう。

これは、日本人同士であれば、時代が違っても「理解できる」話です。

当時、「本土決戦」を主張する将校が多数だった日本陸軍。

実際には陸軍幹部の本音は、

一億総特攻と
なるが・・・

本土決戦で、
米国に痛撃を与えることが可能なのかどうか・・・

梅津美治郎 参謀総長(Wikipedia)

実際に本土決戦で、
どのように米軍と戦うのか・・・

武器弾薬も
底を突きかけている・・・

心の奥底では、陸軍幹部は、

戦争続行は
難しい・・・

日本軍の将兵だけではなく、
何人の日本国民が犠牲になるのか・・・

と、考えていたでしょう。

本音ではそう考えていたであろう陸軍二大幹部の阿南惟幾陸軍大臣、梅津美治郎参謀総長。

陸軍の大多数が「本土決戦」を主張する中、二人もまた降伏反対でした。

本土決戦は大変困難だが、
陸軍としては、これしかない・・・

「降伏」を決めたら、陸軍の将兵たちが
クーデターを起こすかもしれぬ・・・

実際に、日本は国内でクーデターも起きかねない一触即発の極限的状況であったのです。

その極めて厳しい国内の情勢の中、「国内情勢を鑑みて」鈴木首相は、

断固、
戦争完遂に邁進する!

と、言い続けていました。

本音としては、

「断固、戦争完遂に邁進する!」と
言い続けるより他に選択肢がない・・・

だったのでしょう。

一方で、米国・英国・中国からすると、

何か伝えても、Japanは
またignore(無視)するのではないか・・・

それならば、
交渉の余地がない・・・

と不信感を持つに至ります。

国内状況がどうであれ、国家元首としては、もう少しまともな回答をすべきでした。

「何らか前向きとも取られるような」回答を。

検討して、
近日回答します・・・

など。

特に戦争中の外国・相手に対しては。

交渉のテーブルについてくれなければ、外国・相手は、

何も言うことが、
出来ないではないか・・・

そんなイメージを持ってしまいます。

ただ、「それを言えない」空気が日本国内にあったのも事実でした。

新地球紀行

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