外国の方に対しては「分かりやすい言葉」を 3〜黙殺のニュアンス・唯一つの同盟国ドイツの無条件降伏・Kamikazeの頑強な抵抗・大日本帝国陸軍の意気込み・「黙殺」の本当の理由〜|原爆投下と日本政府

前回は「外国の方に対しては「分かりやすい言葉」を 2〜黙殺の日本語のニュアンス・黙殺の余波・トルーマン大統領とポツダム宣言・鈴木貫太郎の意外な返事〜」の話でした。

目次

黙殺のニュアンス:唯一つの同盟国ドイツの無条件降伏

鈴木貫太郎 首相(人物で読む太平洋戦争 世界文化社)

ポツダム宣言を
「黙殺」し、断固戦争完遂に邁進する・・・

鈴木首相の「黙殺」は、日本人には理解できるニュアンスでした。

「黙殺」と
発表せざるを得ない・・・

この「黙殺と言わざるを得ない」こと。

それは日本人には理解できても、主に二元論の欧米人には「無視」としか捉えようがありませんでした。

当時、大日本帝国(日本)の唯一の同盟国であったドイツ。

Adolf Hitler独総統(Wikipedia)

1945年4月30日に、ヒトラーが自殺し、ベルリンが陥落します。

そして、1945年5月7日に無条件降伏したドイツ。

その後、大日本帝国は、文字通り「世界中を敵に回して」闘っていました。

もうすでに、誰が考えても「日本は敗北する」のは確定していたのです。

Kamikazeの頑強な抵抗:大日本帝国陸軍の意気込み

大日本帝国の敗戦時の領土(第二次世界大戦全史 洋泉社MOOK)

ドイツが無条件降伏し、世界中と戦っていた大日本帝国。

「世界中と戦っていた」とは言っても、事実上は「米国と戦っていた」のでした。

誰がどう考えても、大日本帝国に勝ち目が全くない状況です。

ドイツが無条件降伏した1945年5月7日から2ヶ月余り経過した、同年7月。

後世から見れば、「大日本帝国はすぐにでも降伏するしかない」状況です。

Douglas MacArthur連合軍総司令官(Wikipedia)

実際に、大日本帝国と前線で戦い続けていたDouglas MacArthur連合軍総司令官。

MacArthur連合軍総司令官は悲観的見方をしていました。

あの
Kamikaze Attack・・・

我がUS軍の損害は、
それほどではないが・・・

自ら爆弾を抱いて、突進してくるJapanの将兵に対し、
我が軍から精神を病む将兵が出ている・・・

「統率の外道」と呼ばれていた神風特別攻撃隊。

実際の米軍の損害は、大日本帝国軍の損害と比較して少なかったものの、ある程度の破壊力がありました。

さらに、米軍の一部の将兵を精神的に追い詰めていたのです。

Japanを降伏させるには、
あと1年ほどかかるのでは・・・

MacArthur連合軍総司令官をして、そこまで悩ませていたのが実情だったのでした。

阿南惟幾 陸軍大臣(Wikipedia)

当時、陸軍首脳をはじめとする一部の軍部は、

まだまだ
日本は戦える。

最後は内地(日本本土)で、
本土決戦だ!

一億総特攻だ!

と意気込んでいます。

そして、彼らは基本的に聞く耳を持ちません。

内閣において、外相と並んで強力な権限を持つ陸軍大臣及び参謀総長。

彼らが

降伏反対!

という姿勢を崩しません。

梅津美治郎 参謀総長(Wikipedia)

降伏など、
もってのほか!

我が日本の
本土決戦を、米軍に見せてくれよう!

「黙殺」の本当の理由

新地球紀行
左上から時計回りに J.Stalinソビエト連邦指導者、Winston Churchill英国首相、Harry Truman米大統領、鈴木貫太郎首相(Wikipedia、人物で読む太平洋戦争 世界文化社)

そして、1945年7月26日に発せられたポツダム宣言。

この状況では、当時の鈴木首相が、

ポツダム宣言を、
前向きに検討したい・・・

などと言うのは不可能でした。

まして、

ポツダム宣言を、
受け入れる・・・

などと言おうものなら、

そんなことを言ったら、
陸軍の将兵に殺される・・・

という状況だったのでした。

そのため、

黙殺する・・・

と答えた日本政府。

「ポツダム宣言を検討する」とすら「決して発言できない」国内情勢があったのでした。

原爆投下後の無条件降伏の際においても、一部の陸海軍軍人の中には「まだ決戦できる」と主張する方々もいたのです。

ポツダム宣言発表時は、そういう殺伐とした雰囲気が政府内にあったのでしょう。

苦しい胸の内を、鈴木首相が持っていたことは間違いのないことです。

・・・・・

陸軍・海軍共に絶望的な状況は皆分かっていたことです。

特に陸軍は、「本土決戦」を主張する将校が多数いたのです。

その中、鈴木首相が、

黙殺と
言わざるを得ない・・・

のは「日本国内の環境」としては、

そう発表する
しかなかった・・・

のでした。

一方で、それは日本国内の事に過ぎなかったのです。

米国・英国は、日本国内の情報を的確に掴んでいたでしょう。

そして、日本政府・国家元首の対応次第で、様々な選択肢を持っていたのでしょう。

世界は「日本国内の環境」よりも、

Japanの国家元首は、
何を話すのか?

Japanは、
国家として何を考えているのか?

に注目していたのです。

そこには、日本人特有の「空気を読む」という「発想すらない」のでした。

新地球紀行

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