身近な価値に気づく大事さ〜身の回りの科学技術・八木アンテナ・マグネトロン・自国の最先端技術を敵国から教わった日本〜|先端科学技術

前回は「世界情勢と情報機関」の話でした。

目次

八木アンテナ

八木アンテナ(Wikipedia)

今回は、身の回りの技術の話です。

一昔前のものとなったアンテナ。

インターネットやデジタル放送が主流となり、アナログ放送が廃止された今や、見かける機会が少なくなりました。

昔は、個人邸・マンション(集合住宅)でも必ず設置したアンテナ。

国内外で様々な方が発明・改良を加え、様々な規格があったアンテナ。

発明家 八木秀次(Wikipedia)

中でも、非常に有効で価値が高かった「八木アンテナ(八木・宇田アンテナ)」があります。

発明家・電気工学者で 八木秀次と電気工学者 宇田新太郎の二人が考案して、実用化しました。

電気工学者 宇田新太郎(Wikipedia)

当時、超短波などの電磁波を研究していた二人が発明した「画期的なアンテ」ナでした。

八木と宇田の共同研究の賜物であるアンテナですが、「八木アンテナ」と言われることが多いです。

それは八木の方が宇田よりも10歳ほど年上であり、八木が株式会社八木アンテナを起業したことによるのでしょう。

画期的アイデアを生み続けた八木秀次:アンテナ・マグネトロン

東郷平八郎と戦艦三笠(Wikipedia)

1886年に生まれ、小さな頃から優秀だった八木秀次は1906年に東京帝国大学(東大)電気工学科を卒業します。

時は、日露戦争において、日本がロシアに対して辛くも勝利した1905年の翌年。

日本が軍国主義に突っ走る前夜とも言える、世の中でした。

東京帝国大学卒業後、

やはり、先端技術は米国で
研究しなければ!

渡米して、勉強を続けた八木。

さすが米国だ・・・
設備など、何もかもわが国より全然進んでいる・・・

Harvard大学で学んでいるうちに、

これからは、
無線が大事だ!

と考えた八木。

そして、八木は画期的アイデアをどんどん形にしてゆきます。

帰国後の1924年には東北帝国大学工学部長に就任し、

どんどん新たな
イノベーションを起こそう!

一生懸命、後進を育ててゆきます。

大勢の優れた科学者・発明家を輩出し、多くの新技術や「新技術の種」を開発しました。

そして、最初にご紹介した「八木アンテナ」もまた、画期的な先進技術でした。

第二次世界大戦で、枢軸国陣営で米国などの連合国と戦った日本。

大日本帝国の敗戦時の領土(第二次世界大戦全史 洋泉社MOOK)

緒戦こそ連戦連勝だった日本陸海軍でしたが、ミッドウェー海戦での敗戦をきっかけに後退を続けます。

そして、資源・物資では、米国とは比較にならぬほど貧弱な日本。

科学技術で当時も最先端だった米国に対して、物量のみならず科学技術でも大きな差を見せつけられました。

日米の科学技術と資源

世界の原油生産量 1940年(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

今も昔も物資が極めて豊かで、科学技術が最先端で、経済力がピカイチで国土も広い米国。

20世紀中盤に、中東で原油が大量生産されるようになりましたが、1940年では米国の原油産出量は世界の2/3ほどでした。

対して、大日本帝国は「ほとんど原油を算出しない」国でした。

これだけでも、米国と戦争をするのは無謀でしかなかったのでした。

蘭印の年間800万トンの
重油があれば・・・

我が大日本帝国の
需要を十分賄える!

と考えた大日本帝国の軍部。

陸海軍総出で、大日本帝国は東南アジアに資源を求めて開戦します。

当時、世界五大強国の一角をしめ、海軍においては米国に次ぐ世界第二位とも言える立場だった日本。

日本の科学技術力も相応のレベルでしたが、やはり米国と比較すると、はるかに劣るレベルでした。

原爆をも作り上げた米国。

1945年8月6日広島へ原爆投下(Wikipedia)

さらにレーダーやVT信管などの最新技術で、米軍は日本陸海軍を翻弄し続けました。

自国の最先端技術を敵国から教わった日本

山下奉文 司令官(Wikipedia)

八木が開発した画期的アイデアだった「八木アンテナ」の重要性を、当時の大日本帝国軍部は理解できませんでした。

アンテナ?
こんなものよりも、武器が大事だ!

もっと米軍をバシッと叩ける
兵器が欲しい!

アンテナなんか、
いらんわ!

ところが、日本陸海軍は、その重要性に気付きながらも実用化しなかったのです。

その重要性を、他ならぬ敵から教わることになりました。

開戦直後に、英国領だったマレー・シンガポールで快進撃を遂げた山下司令官率いる日本陸軍。

Winston Churchill英国首相(Wikipedia)

当時、日本に対して「はるかに格下」と考えていたチャーチル首相は、英軍の後退に驚愕しました。

まさか、
Japanの陸海軍がこんなにも強いとは・・・

そして、英軍の将兵を多数捕虜にした日本軍。

英軍のレーダー担当の技術将校のノートを見つけて、押収します。

英国の最新鋭の
技術が書かれているのでは・・・

これは
大戦果だぞ!

そして、日本の技術将校がノートを読んで、英国の技術を盗もうと努力しました。

Yagiって文字が頻繁に出てくるけど、
知ってる?

Yagi?
知らないね。

日本軍の内部で「Yagi」を知っている人がいません。

Yagiは、
暗号かもしれんな・・・

仕方ないので、英軍の捕虜となった技術将校に聞いてみます。

このYagiって、
なんのことだ?

なにか大事な機密を
示す暗号か?

これを聞いた英軍将校は、びっくりして、

これは、あなた方の国Japanの
高名なYagi博士が発明したアンテナのことだ。

あなた方は、こんなことも
知らないのか?

と返答します。

それに対して、絶句した日本軍将校。

知らなかった・・・

しかし、我が国の発明を
我が国ではなく敵国に利用されるとは・・・

なんという間抜けな
事態なのだろうか。

「最新鋭の英軍のレーダー」は「八木アンテナを活用したレーダー」だったのでした。

これは、
大変な事態だ!

慌てて、八木レーダーの研究を開始した日本軍。

ところが、すでに「遅すぎた」のでした。

空母 赤城(Wikipedia)

日本軍が必死に後を追いかけるものの、すでに八木レーダーの軍事利用を確立していた米英。

米英の最新技術に追いつくことは、不可能だったのです。

今の時代でも、同じようなことがあるかもしれません。

「海外での高い評価」にすぐ舞い上がりがちな、私たち日本人。

最先端技術や大きな発明は、意外な身近な所にあるのかもしれません。

新地球紀行

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