前回は「リメンバー・パール・ハーバー 2〜山本五十六の執念〜」の話でした。
軍令部が同意しなければ、「作戦実行部隊」に過ぎない連合艦隊はハワイ奇襲攻撃を実施することは、許されません。
連合艦隊の作戦行動の戦略権限は、軍令部が握っていたのです。
具体的な作戦に関して、連合艦隊司令長官として山本が持つ権限は、戦術的権限に限定されていました。

米国と断絶・戦争となった時には、米国に大きく依存していた軍需物資の確保が喫緊の課題です。
なかでも、ほとんど「米国に頼っており、内地(日本本土)でほとんど産出しない原油」の確保は最優先です。

軍令部は絶対反対し、常識的な戦略を連合艦隊に指示します。

南方を攻撃・占領して、
早く原油を確保してくれ!



南方を攻撃・占領して、
早く原油を確保してくれ!


しかし、山本五十六長官にとっては原油の確保よりも、「米海軍といかに戦うか」の方が遥かに重大な問題です。
もはや米海軍と戦う術に比べたら、



原油は大事だが、強敵米国を倒すことに比べれば、
後回しだ!
くらいの気持ちだったでしょう。
山本には、信念がありました。



危険なことは百も承知だ。



しかし、これをしなければ米海軍には
絶対に勝つことは絶対にできない!
しかし、軍令部の永野総長も伊藤次長も、絶対に同意しません。



こんな危険な案は、
絶対認められない!



虎の子の日本海軍の空母を緒戦で、
沈没させるようなことになっては・・・



それこそ取り返しのつかない事態となる!


米国であれば、海軍長官が最終決定権を持っていますから、海軍長官が決定するか、大統領自ら乗り出してきて、事態を収集したでしょう。
しかし、日本は、曖昧に権限が分散していました。
作戦の権限権者=軍令部総長、人事の決定権者=海軍大臣、作戦実施の決定権者=連合艦隊司令長官という形。



最前線で、米海軍と実際に
戦うのは私なのだ。
山本長官は、自らの信念を貫くことを考えます。





通常の手段では、ハワイ奇襲攻撃の
了承を得ることは不可能だな。
悟った山本長官は、遂に奥の手を考えます。
その「奥の手」は組織、とりわけ軍においては「禁じ手」とも言える事でした。



この手しかないが、
これを使って良いものか。
山本長官は懊悩し、悩みに悩みます。
悩み抜いた挙句、山本五十六は米国と対峙するため、あえて「禁じ手」を使う事を決意します。


意を決した山本長官。
海軍省及び軍令部幹部に伝えました。



ハワイ奇襲攻撃を
了承頂けないならば・・・



私は連合艦隊司令長官を
辞任します。