禁じ手に踏み切った山本五十六連合艦隊司令長官〜連合艦隊司令長官の権限と軍令部・原油の確保を最優先する軍令部・正統派の伊藤次長〜|リメンバー・パール・ハーバー3・真珠湾奇襲攻撃

前回は「山本五十六連合艦隊司令長官の執念と乾坤一擲の作戦〜山本長官の「危険すぎる」投機的作戦・猛反対する海軍将官たち・伊藤軍令部次長〜」の話でした。

目次

連合艦隊司令長官の権限と軍令部

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本戦記シリーズNo.61 新人物往来社)

「作戦実行部隊」に過ぎない連合艦隊。

そして、「前線司令長官」に過ぎない山本五十六 連合艦隊司令長官。

職名氏名権限
軍令部総長永野修身軍令・作戦
海軍大臣及川古志郎人事・兵站・管理
連合艦隊司令長官山本五十六前線の作戦指揮
日本海軍の三顕官

軍令部が同意しなければ、連合艦隊はハワイ奇襲攻撃を実施することは、許されません。

連合艦隊の作戦行動の戦略権限は、軍令部が握っていたのです。

具体的な作戦に関して、連合艦隊司令長官として山本が持つ権限は、戦術的権限に限定されていました。

米国と断絶・戦争となった時には、米国に大きく依存していた軍需物資の確保が喫緊の課題です。

なかでも、ほとんど「米国に頼っており、内地(日本本土)でほとんど産出しない原油」の確保は最優先です。

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世界の原油生産量 1940年(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

原油の確保を最優先する軍令部:正統派の伊藤次長

伊藤整一 軍令部次長(Wikipedia)

軍令部は絶対反対し、常識的な戦略を連合艦隊に指示します。

南方を攻撃・占領して、
早く原油を確保して頂きたい。

軍令部としては、
あくまで南方優先です!

この発想は至極当然であり、最も合理的な発想でした。

艦船を動かす
燃料が無くなっては、海軍は何もできなくなります!

唸るほど原油を算出する米国に対して、ほとんど国内(内地)では、原油を算出しない日本。

このハンディキャップは、とてつもなく大きなものでした。

一方で、山本五十六長官にとっては原油の確保よりも、

世界最強の米海軍と、
いかに戦うか・・・

の方が、遥かに重大な問題です。

山本長官にとっては、もはや米海軍と戦う術に比べたら、

原油は大事だが、
強敵米国を倒すことに比べれば、後回しだ!

くらいの気持ちだったでしょう。

山本長官には、信念がありました。

危険なことは
百も承知だ。

だが、これをしなければ米海軍には
絶対に勝つことは絶対にできない!

ところが、軍令部の永野総長も伊藤次長も、絶対に同意しません。

こんな危険な案は、
絶対認められません!

虎の子の日本海軍の空母を緒戦で、
沈没させるようなことになっては・・・

それこそ取り返しの
つかない事態となります!

永野修身 軍令部総長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本戦記シリーズNo.61 新人物往来社)

確かにそうだ!

山本よ、
その作戦が危険すぎる・・・

作戦指揮の最高意志決定者である永野修身 軍令部総長も反対しました。

海軍長官が最終決定権を持っている米国・英国。

この場合、海軍長官が決定するか、大統領・首相が自ら乗り出してきて、事態を収集したでしょう。

一方で、日本は、曖昧に権限が分散していました。

作戦の権限権者=軍令部総長、人事の決定権者=海軍大臣、作戦実施の決定権者=連合艦隊司令長官という形。

最前線で、米海軍と実際に
戦うのは私なのだ。

山本長官は、自らの信念を貫くことを考えます。

禁じ手に踏み切った山本五十六連合艦隊司令長官

及川古志郎 海軍大臣(Wikipedia)

通常の手段では、ハワイ奇襲攻撃の
了承を得ることは不可能だな。

悟った山本長官は、遂に奥の手を考えます。

その「奥の手」は組織、とりわけ軍においては「禁じ手」とも言える事態でした。

この手しかないが、
これを使って良いものか・・・

山本長官は懊悩し、悩みに悩みます。

禁じ手
なのだが・・・

悩み抜いた挙句、山本五十六は米国と対峙するため、あえて「禁じ手」を使う事を決意します。

やむを得ん・・・

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本戦記シリーズNo.61新人物往来社)

意を決した山本長官。

海軍省及び軍令部幹部に伝えました。

ハワイ奇襲攻撃を
了承頂けないならば・・・

私は、連合艦隊司令長官を
辞任します。

新地球紀行

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