「どうする家康」の大問題点〜「公共放送」の矜持を捨てたNHK・NHKと民放・過剰演出・武田信玄〜|公共放送と教育

前回は「「どうする家康」をどうする?〜NHKの存在意義 2〜」の話でした。

目次

「類い稀な苦労人」徳川家康と「どうするのだあ〜?」

徳川幕府初代将軍:徳川家康(Wikipedia)

とにかく不評な、NHK大河ドラマ「どうする家康」。

前回は、

どうする
のだあ〜?

と間抜け面して、大騒ぎする徳川家康の「軽さ」の問題点の話でした。

織田信長・羽柴(豊臣)秀吉と比較すると、わかりにくい徳川家康。

織田がつき 羽柴がこねし天下餅 
座りしままに食うは徳川・・・

という風刺した歌(?)もありますが、家康が「座りしまま」ではなかったことは、明白です。

信長も秀吉も苦労しましたが、最も苦労したのは家康かも知れません。

人の一生は・・・

重荷を負うて、
遠き道を行くがごとし・・・

という家康の遺訓がありますが、まさに「重荷を背負い続けた」人生を具現化した家康。

その「類い稀な苦労人」である家康に、

どうするのだあ〜?

と何度も言わせる発想が理解できません。

「どうする?」と考える視点

左上から織田信長、羽柴秀吉、上杉謙信、毛利元就(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)

戦国時代の大大名、小大名、あるいは国衆や地侍と言われる方々全て、

次は
どの手を打つべきか・・・

敵はこう出てきたか・・・
どうするか・・・

と、常に「どうするべきか?」「どうするか?」を考えていたのでしょう。

平和な現代ですら、

あの仕事を
どうしようか?

あの会社との関係は、
どうしようか?

と多くの方が、考え続けています。

まして、戦国時代では、「どうするか?」の結果の判断が間違っていたら、死に直結します。

そして、死にゆくのが「自分だけ」ならまだしも、家族や家臣たちも巻き添えをくいます。

その意味では、「現代では考えられなかったようなプレッシャー」にさらされ続けていた戦国時代の人々。

それゆえ、

どうするのだあ〜?

になるのかも知れませんが、あまりに「軽すぎる」のです。

この辺りは、「若い層に受けるように」と考えた「脚色」なのでしょう。

子どもたちに誤解与える演出

戦国大名 武田信玄(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)

今回は、子供の教育上の「大きな問題点」を指摘したいと思います。

桶狭間の戦いの後に、弱体化をつづけた。今川家・今川氏真。

その今川家に対して、武田信玄は非情にも一方的に同盟を破棄します。

そして、武田信玄と家康が同盟を結び、

駿河は
武田!

遠江は
徳川!

という秘密事項を含む軍事同盟へ発展しました。

当時、名門で大勢力の武田家に比べれば、「はるかに格下」の徳川家。

武田信玄としては、

徳川などと
対等同盟結ぶ立場でもないが・・・

徳川は、織田信長と
同盟を結んでおる・・・

信長はよくわからぬが、我が
武田と織田も同盟を結んでいる・・・

まあ、格下だが、
織田の手前もあり、対等同盟でよかろう・・・

というのが本音だったでしょう。

「どうする家康」の問題点は、この同盟締結を描くシーンでした。

信長が
「家康に会ってくれ」というから・・・

顔をたてて、
家康に会ってやろう・・・

「信玄に会う」約束をした家康と本多平八郎(忠勝)たち家臣団。

そこへ、突然、入道面した人物が出てきました。

それが、なんと武田信玄その人だったのです。

こ、
この人が・・・

登場の仕方は、ちょっとした演出がありましたが、それは良いとして、

のう・・・
同盟むすぶか・・

と、信玄が一人でフラッと登場です。

これは「絶対あり得ない」ことで、「演出を超えている」ことだと思います。

NHKの脚本家・製作者からすれば、

あり得ないこと、
などというのは分かっている!

これは「演出」
なんだよ!

と反論するでしょう。

民放とNHKの違い

これが、「民放」であれば良いと思います。

一方で、「教育テレビ・Eテレ」という地上波の「教育チャンネル」をただ一つ有するNHK。

子供たちにとって、NHKは「教育上、正しいことしか放送しない」放送局なのです。

NHKで放送することは、
全部正しいこと!

と子どもたちは思っているのです。

僕は歴史が好きで、歴史好きの多くの方同様に戦国時代が好きです。

そこで、戦国時代に関する映画や大河ドラマもたくさん見てきました。

中学・高校生の頃に、大河ドラマや正月特番を楽しみに見ていました。

それらの大河ドラマや特番でも、さまざまな「演出」がありましたが「絶対あり得ない」ことは無かったように思います。

この「武田信玄がフラッとやってきて、家康とサシで会談する」状況を見た子どもたちは、

戦国時代は、
こういうふうなフレンドリーな関係もあったんだ・・・

友情的な気持ちも
あったんだね。

と「誤解してしまう」かも知れません。

さらに、数ある諸大名の中でも「最も暗いイメージ」で、「どこで何をしていたのか」が謎の武田信玄。

よりにもよって、その武田信玄を「表舞台に一人で出る」演出をするのは、「公共放送」として大問題と考えます。

「教育テレビ・Eテレ」を持ち、「子どもたちに教育をする責務を持つ」NHK。

行きすぎた演出は、「子どもたちに戦国時代の誤解を与える」のではないでしょうか。

小学生が観ることは少ないでしょうが、中学生〜高校生は観る方も多い大河ドラマ。

それだけに、「子どもたちが大きな誤解をする」可能性のある演出だけは、絶対に避けて欲しい。

関係している歴史家の方達も、

この演出は、
流石に「いきすぎ」では?

と演出家・脚本家の方に、疑問を呈して「正しい道」にして欲しかったものです。

「子どもたちに誤解を与える」演出は、歴史ファンにとっては「大きな侮辱」でもあります。

武田信玄役の阿部寛さんの演技は、非常に良いと思います。

「視聴率」や「世間受け」も大事でしょうが、NHKには「子供の教育を背負っている」矜持を持って欲しい。

民放とNHKは「違う」のです。

それだけに、この「教育上、大きな誤解をもたらす」最悪の演出。

こういう「誤解をもたらす、悪い演出」は、「公共放送」たるNHKは二度と「やるべきでない」ことでしょう。

新地球紀行

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