前例主義の日本の裁判〜過去の判例と裁判戦略・「静かな論争」が多い法廷の現場〜|建築裁判の問題点

前回は「時間がかかり過ぎる裁判の現場〜設計図書や工事見積書が分からない弁護士と裁判官・「建築のことが分からない同士で裁判進行」の現実〜」の話でした。

目次

「静かな論争」が多い法廷の現場

新地球紀行
工事現場(新地球紀行)

これまでに、建築裁判に関するコンサルティングを多数経験してきました。

誰しも裁判に関しては「裁判があるのを知っている」程度であることが多いです。

その中、「裁判の実態」は「なかなか分からない」のが現実です。

テレビドラマなのでは、

被告は、この点を誤って
主張している!

現に、音声記録によると〜と言う事実が
あるが、一体どう言うことか、説明してもらいたい!

原告の今の誤りは、
完全に間違っている!

そうではなく、原告こそが
犯罪を犯したのだ!

法廷を舞台に弁護士が侃侃諤諤主張する、と言うより怒鳴り合う場面がよく登場します。

ところが、テレビドラマのように「弁護士が怒鳴って主張」と言う場面は、見たことがありません。

中にはあるのかも知れませんが、筆者が関わった建築裁判は、

原告の書面では、
このような主張がなされている・・・

これは、〜と言う整理で
良いのか?

と「淡々と話す」裁判官に対して、その内容の是非によりますが、

裁判官のその認識は
間違っております!

など主張・強く反論することは、ほとんどなく、大抵は、

はい、裁判官の
認識の通りです・・・

のような感じで「書面ベース」で進行し、粛々と進むのが裁判です。

そして「静か」と言うより「シーンと静かすぎる論争」が大多数であるのが裁判の実態と考えます。

前例主義の日本の裁判:過去の判例と裁判戦略

New Global Voyage
東京地方裁判所(新地球紀行)

そして、一般の方でも知っている方が多いのが「判例によって裁判の方向性が左右される」ことです。

過去の最高裁の
〜と言う判例において、〜と言う判決出た!

今回の裁判は、本判例と
類似している面があるので、〜となるべきだ!

という主張が聞かれることがあります。

この「過去の判例」と言うのは、「いつまでの過去」なのか判然としませんが、基本は「過去」です。

「過去」と言っても、社会情勢や社会通念が「同一」とは思えないです。

そのため、「過去の判例」は、あくまで「過去の判例」であるべきと筆者は考えます。

ところが、

確かに、過去の判例では、
〜という判断がされていますね・・・

「過去の判例」に対して、裁判官は「極めて貴重に扱う」傾向があります。

他の諸外国の裁判でも、判例が扱われることが多いと考えます。

一方で、日本ほど「判例が強い影響があるのかどうか」は不明です。

この「前例主義の権化」とも言える「過去の判例の強い影響力」は、少し「改めるべき」とも思います。

「近い過去」、たとえば「10〜20年以内の裁判」の判例ならば、「参考となる」のは理解できます。

一方で、

50年前の最高裁判決では、
〜という内容であり・・・

という「50年前」つまり「まだ戦後の香りが残っている時代」の判例も登場します。

判例に対しては、

判例は「近い過去」を
優先する!

とは、裁判所や裁判官が「言うことは困難」であることはわかります。

行政において、様々な線引きがありますが、国民側から見れば、

AとBの線引きの
根拠はなんだろう?

と思ってしまうことも多く、

ちょっとくらい
「線引き」と違ってもいいのでは?

と思わないでもないことがありますが、「ちょっとくらい違ってもOK」とはなりません。

これは、行政側の発想からすれば当然のことであり、

「ちょっとくらいOK」なら、
「線引き」が曖昧になり、無意味になる・・・

となります。

このため、「近い過去の判例優先」となると、

ならば、「近い過去」とは
「何年前までのこと」なのか?

となり、これだけで論争になってしまいそうです。

この「過去の判例を活かす」姿勢は理解できますが、裁判において「個々の事例は異なる」と考えます。

そして、「判例重視」が行き過ぎると、

判例を活かすために、
こういう裁判戦略が良いだろう!

無用な「裁判戦略」を生み出す傾向をもたらすでしょう。

業務である以上「戦略」は重要です。

一方で、一般国民にとって、裁判は「真実を明らかにして、正しい方に軍配をあげる」場でもあります。

ところが、「真相追求」よりも「判例などを活かして勝つ戦略」等の方が大事なのは、おかしいです。

裁判所・裁判官には、ぜひ「真実追求」により重点を置いて欲しい。

そして、「過剰な前例主義」は見直し、それぞれの事件に対して個別にしっかり判断を下すべきです。

次回は上記リンクです。

新地球紀行

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