前回は「裁判と国家の姿 1〜建築裁判と訴訟の特殊な世界・建築のプロが一目見て不自然な証拠と書証の存在〜」の話でした。
裁判へ提出される証拠の偽造の可能性

中学〜大学の同級生(専門は異なります)の弁護士から相談を受けた建築に関する裁判。
僕が一通り、設計図書・見積書等の書類をチェックして、不自然な点が多数あることに気づきました。
見方によっては「不自然」ではなく、「偽造している」と思われる点も多数です。
それらをまとめて、友人の弁護士に送りました。

有難う!
全然気づかなかった事ばかりだ。
弁護士といえども、建築基準法・建築士法・建設業法等の法律には、あまり詳しくないようです。
また、設計図書を見ても全然分からなかったようで、とても感謝されました。



設計図書って、
こういう風に見るんだ。
建築士が見慣れている設計図書・図面。
職業柄、自分達が描いた設計図書はもちろん、他の方が描いた設計図書も非常に細かく見てしまいます。
「自分が描いている」からこそ、他の方が描いた設計図書もまた大いに気になるのです。
意見書作成へ


友人の弁護士は、僕がまとめた書類をもとに依頼主と相談したようです。



依頼者と話したんだけど、
ぜひ、専門家として意見書にまとめて欲しい。
「意見書にまとめてもらうかも」と言われていましたが、その方向になりました。



了解!
とりあえず書いてみるよ。
「専門家の意見書」の作成は、初めての経験です。
文章を作成することもありますが、建築設計・作品・都市・街並に関することが多いです。
大学・大学院時代に論文も書きましたが、設計などに関する話は論文というよりも「エッセイ」のようになりがちです。
論文の形式にする場合は「仮説」を提示して、それを「根拠」で立証してゆくプロセスが必要です。
一方で、建築作品・都市などに対する見解や設計の文章は「根拠」というより「自分の考え」になります。
そのため、どうしても「論文」より「エッセイ」になってしまうことが多いのです。



裁判官に読んだもらうから、
専門的なことも、分かり書いて欲しい。



裁判官は、過去の判例などを
参考にするから・・・



根拠を
明確にして欲しい。
このような要望を、友人の弁護士から受けました。
判例と法的根拠


「過去の判例」を参考にして判決を下すのが、裁判の世界です。
それらの判例を調べることは難しいですが、何はともあれ、しっかりと書くことにします。



分かった。
法律的根拠をしっかり書くようにしよう。
建築設計の実務では、「建築確認」というプロセスがあります。
これは事実上「建築許可」であり、この「建築確認」が完了していないと着工できません。
「建築確認」という言葉は「建築や条例等諸法規に照らし合わせて、適合していることを確認した」という意味です。
海外では、分かりやすく「建築許可」となっていることが多いです。
この「建築確認」という曖昧な言葉と曖昧な制度。
いかにも日本的なのかも知れません。
早速、もう一度たくさんの設計図書や資料を読み込んで、意見書の作成に取り掛かります。
個人邸の設計の場合でも、設計図書は数十枚になります。
集合住宅(マンション)・幼稚園等の規模になると、構造設計図書・設備設計図書も詳細になります。
すると、設計図書は百枚を大きく超える枚数になります。
さらに工事中には「施工図」という、僕たちが描く設計図書以外の膨大な施工関係の図面が上がってきます。
現場のコンクリートなどの躯体図・設備図面・サッシュや家具の詳細図面などをチェックする必要があります。
多くの場合、A1~A2サイズとなることもあり、「図面を描く」だけなく「図面を読む」のもだいぶ慣れます。
それでも、裁判となると非常に膨大な量の書類があり、「途中経過」の設計図書も多数あります。



読むだけで、
大変だ・・・
初めて対峙する裁判関係書類。
最初、友人からアドバイスを求められた時は、全体的にサッと読みましたが、今回はしっかり読みます。
これらの書類を読むだけで、かなりの時間がかかり、法規などもチェックします。
法規はある程度は頭に入っていますが、裁判である以上、法令集片手に



あの法律は、
何と書いてあったかな。
一つ一つチェックしてゆきました。


すると、どんどん「不自然な点」や「明らかに法律違反の点」が明確に出てきました。



よく、こんなに問題があって、
これまで論点にならなかったな。
「問題がありすぎる」と感じてしまうほど、大きな問題点も多数あります。
こういう建築的・建築法規関係の問題点を顧慮されることなく、「金額の査定」の話が続いていたようです。



全体的な
問題点が明確になった。
設計図書や各資料を読み込んで、全体像が見えてきました。
そして、「問題点」が「金額査定」につながるように、文章を構成してゆきます。



法律と金額の関係を
明確にしよう。
建築関係の裁判も多数あるようなので、それらの判例に対しても有意になるように配慮します。
そして、慎重に文章を作成してゆきます。
建築裁判に関わって非常に不思議だったのは、これら法律に関する査定が大してされていないことです。
「裁判所といえば、法律査定機関」と考えていました。
そのため、裁判があったら「まずは法律に適合しているのか」をチェックすると思っていました。
実際は全くそうではなく、「法律の合法性が棚上げ」にされる傾向があります。
そして、金額の話に終始した書面が多いのが非常に不思議に感じます。
次回は下記リンクです。