強力な英国外交と幼い日本外交〜薩英戦争賠償金・幕府から「借りた」薩摩・薩摩と大英帝国の交錯する思惑・「精神異常者の集団」が跳梁跋扈していた日本〜|日英の未来と友好4・国際関係・戦略的外交

前回は「現代日英関係と欧州における英国〜グラバーの目的・グラバーと薩摩・貿易禁止と密貿易・生麦事件・英国の日本への視線・薩英戦争・意外な薩摩藩の強硬姿勢〜」の話でした。

目次

強力な英国外交と幼い日本外交

左上から時計回りに、Rishi Sunak英首相、Olaf Scholz独首相、岸田首相、Emmanuel Macron仏大統領(Wikipedia)

ウクライナ戦争勃発時から、英国の存在感は世界の国家の中で群を抜いています。

現在は、苦しい立場にあるジョンソン元首相ですが、ウクライナ戦争においては一貫して「強い姿勢」を堅持しました。

左上から時計回りに、Boris Johnson英首相、Vladimir Putin露大統領、Emmanuel Macron仏大統領、Volodymyr Zelenskyウクライナ大統領(Wikipedia)

表立った外交以外にも水面下の折衝等、実に様々な「駆け引き」が行われ続けているウクライナ戦争。

ロシア国内では、ワグネルによって「内乱の一歩手前」まで行ったものの、こう着状態が続きます。

ジョンソン元首相・トラス元首相を継いだ、若きスナク首相もまた、積極外交を進めます。

旧植民地であるコモンウェルスの各国とも良好な関係を築き続け、圧倒的潜在力を有する英国。

対して、外交的影響力は非常に限られる日本。

この違いは「国家の格」によることもありますが、日本外交の積極性のなさ・幼さにも起因します。

薩英戦争賠償金:幕府から「借りた」薩摩

薩英戦争 歴史道vol.6(朝日新聞出版)

日本政府には、幕末時の薩摩の「したたかな外交」から学んで欲しい。

当時、優れた人物が沢山いた薩摩。

左上から時計回りに西郷隆盛、大久保利通、村田新八、五代友厚(Wikipedia)

彼らの中には、「まだ無名であった」人物も多いです。

それでも「薩摩人のみで、当時の新政府幹部を揃えるができる」ほどのレベルだった巨大国家・薩摩。

世界最強の大英帝国相手に、「無謀にも」戦争をした「日本の一公国」薩摩。

薩摩藩の砲台は全滅となりますが、薩摩側も奮戦します。

なんと、旗艦ユーリアラス号が砲撃を受け、艦長のジョスリン大佐が戦死します。

一体
なんなんだ・・・

なぜ、Japanの一公国Satsumaごときが
Chinaより強いのだ・・・

大きな衝撃を受けた大英帝国。

双方大打撃を被り、休戦・停戦に至る交渉が始まります。

ここで、薩摩藩は、予想外の奇手にでました。

薩摩には金はないことは
ない・・・

だが、エゲレス(大英帝国)などに
払う金は、ビタ一文ない!

エゲレスへの賠償金は、
徳川幕府から借りてしまえが良い!

なんと賠償金を「幕府から借りて」払います。

ちゃっかりしているというか、なんというか。

もちろん

借りた金は、幕府に返す
つもりなど毛頭ないがな・・・

薩摩は、幕府から「借りた金」を踏み倒します。

薩摩と大英帝国の交錯する思惑

Thomas Blake Glover(グラバー園)

そして、ここで英国の最新兵器に改めて着目します。

英国側も

どうやらこの強いSatsumaの連中は、
武器に大いに興味がありそうだ・・・

と、考えます。

そして、薩摩藩は琉球の密貿易もあり、多額の借金を抱えているものの、

どうやら、Satsumaは、
それなりの金を持ってそうだ・・・

この頃、薩摩で島流しから復帰した西郷隆盛もまた、英国の最新兵器に大いに興味を持ちます。

この最新兵器を、
日本最強の我が薩摩藩士が使用すれば・・・

国内に
敵なし!

ここで、英国と薩摩双方の利害関係が一致します。

グラバーは、勇躍したでしょう。

俺の出番だ!

とグラバーは出てきました。

そして、多くの英国の武器弾薬を売るために、薩摩に接近、猛烈に営業活動をかけます。

グラバー商会は、薩摩藩に多数の武器弾薬を売ります。

この武器・弾薬は、幕末・維新期の日本国内の戦場で大活躍することになります。

すでにインドを植民地化し、アヘン戦争・アロー戦争を吹っ掛けた清を叩き潰します。

アヘン戦争(Wikipedia)

そして、アジア大陸に着実に手を伸ばしてきた大英帝国。

アメリカ大陸には広大なカナダが植民地としてありました。

その征服地として、最後の行き着くところが、英国から見て極東、まさに東の果てにあった日本でした。

当初、英国が日本をどのように見ていたのかは不明です。

日本に対しては、

Japanを攻撃して、
植民地にするか・・・

Japanを攻撃、と言っても、
やつら強いぞ!

はたまた、貿易して
商売相手にするか・・・

どちらが、
我がGreat Britainにメリットがあるのだ?

大英帝国は「攻撃して植民地にする」か、「交易して商売する」か大いに悩んだでしょう。

「精神異常者の集団」が跳梁跋扈していた国・日本

Sir Rutherford Alcock英国公使(Wilipedia)

グラバーが着実に商売を広げていた頃、大英帝国の総領事はオールコックでした。

よっしゃ、
俺の出番だ!

オールコックが在任している頃は、高杉晋作・伊藤博文等による英国公使館焼き討ち事件が起きています。

長州藩士 高杉晋作(国立国会図書館)

はっは〜
全部焼いてしまえ!

夷狄のいる城など、
この世から消してしまえ!

危険を感じたオールコック。

・・・・・

我が国の公使館を
焼き討ちにするとは・・・

なんという
奴らなんだ・・・

オールコックは、英国公使館を横浜に移転します。

Japanは、
物騒な国だ・・・

まあ、ちょっと
やり過ぎですな・・・

と、オールコックもグラバーも感じたでしょう。

当時、「英国・米国等の海外との通商に反対し、海外勢力を撃退の上、鎖国を守る」という攘夷が吹き荒れていました。

この攘夷の中心地であった長州藩。

本気で、馬関(下関)に砲台を築きます。

そして、1863年についに米国艦船・フランス艦船を一方的に砲撃したのです。

欧米側から見たら、

こいつら
一体何考えているんだ?

どうも、
Japanには、過激な連中が多いようで・・・

軍艦でもない船を、
「一方的に攻撃する」とは、クレイジーだ!

当時の欧米から見たら、「論外の極み」でした。

若き日の伊藤俊輔(博文)(Wikipedia)

欧米の高官からみたら、日本の武士達は

JapanのSamuraiは、
生麦での事(生麦事件)といい・・・

彼らは
「精神異常者の集団」なのか?

と映ったに違いないでしょう。

そして、その「精神異常者の集団」の一人だったのが、初代内閣総理大臣となる伊藤俊輔(博文)でした。

そして、グラバーは、

この動乱期を、
どう上手く立ち回るか・・・

と思案しながら、道を探ります。

新地球紀行

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