裁判で延々続く「世間とズレた」議論〜施工瑕疵から論点拡張する戦略・誰が見ても明確な施工瑕疵と建築裁判の実態〜|日本の裁判

前回は「「存在しない書類」が登場する裁判の現場〜建築裁判において頻発する偽造書類・「偽造見破る」ポイント〜」の話でした。

目次

誰が見ても明確な施工瑕疵と建築裁判の実態

新地球紀行
工事現場(新地球紀行)

世の中で、意外と多いのが建築紛争・建築トラブル、そして建築裁判です。

これらの建築紛争や建築裁判に関するコンサルティングを開始してから、10年ほど経過しました。

きっかけは、中学から大学同期の弁護士の友人からの相談でした。

弁護士A

やあ・・・
今、建築裁判の案件を抱えているんだけど・・・

弁護士A

設計図書や見積書を見ても、
全然分からないから、相談に乗って欲しい・・・

Yoshitaka Uchino

いいよ!
力になるから、なんでも相談してください!

このような「気軽な相談」から始まったのが、私たちの会社のコンサルティング業務でした。

この「建築コンサルティング業務のきっかけ」の話は、上記リンクでご紹介しています。

その後、実に様々な建築紛争・建築裁判のコンサルティングをしてきました。

小さなものは「工事費数百万円程度のリフォーム」から、大きなものは「工事費100億以上の再開発」です。

これらの多様な建築裁判のプロセスを間近で見てきて、感じることは、

Yoshitaka Uchino

法曹界・裁判の世界は
とても特殊だな・・・

「裁判の世界は超特殊」という事実です。

Yoshitaka Uchino

裁判の世界は、現実の世界と
大きな乖離があるのでは・・・

こう思うこともあります。

ある施工瑕疵の現場で、依頼主から写真などを見せていただくと、「いかにも酷い」現場でした。

「杜撰な施工」や「施工瑕疵」というレベルではなく、見るからに酷い工事でした。

その結果、支払い等をめぐって施工業者と依頼主が裁判となっていました。

現場を訪問する際、依頼主側の「相談している施工業者」さんがいました。

「裁判を起こしている施工業者」とは別で、「依頼主側」なので「依頼主に寄り添った立場」です。

その施工業者さんからは、

施工業者A

この工事現場は
酷いよね・・・

施工業者A

誰が見ても明確な施工瑕疵だから、
これを主張すれば勝てるのでは?

「簡単に勝てるのでは」と言われました。

Yoshitaka Uchino

確かに気持ちは
分かりますが・・・

Yoshitaka Uchino

裁判では、きちんと立証して
裁判官に理解してもらう必要があります。

施工業者A

だから、この写真を
見せれば「終わり」じゃないの?

確かに、この「誰が見ても施工瑕疵」ならば「施工業者が悪い」のは、「当たり前すぎる」議論です。

ところが、裁判の現場では「そうはいかない」のが建築裁判の実態です。

裁判で延々続く「世間とズレた」議論:施工瑕疵から論点拡張する戦略

New Global Voyage
東京地方裁判所(新地球紀行)

これの「明らかな瑕疵」は、「建築業界」というより世間一般の議論として当然のことでしょう。

ところが、建築裁判に限らず「裁判の現場」では、「そうもいかない」のが現実です。

仮に、「明らかな施工瑕疵がある」工事をされた依頼主側の弁護士が、

弁護士B

裁判官、
この写真を見てください!

弁護士B

どこから、どう見ても杜撰な工事で、
施工瑕疵でしょう!

弁護士B

だから、依頼主は全額を払う必要が
ないのは明白です!

こう主張したところで、まず裁判官は、

裁判官A

主張は承りましたが、
施工瑕疵を立証してください。

まずは「施工瑕疵の立証」が必要になります。

この「施工瑕疵の立証」は「写真で十分」なはずですが、

裁判官A

全ての瑕疵を一覧表にして、
経緯を説明して立証してください。

「ただ写真を見せる」ではダメで、経緯も含めて立証してゆく必要があります。

これで、「色々と立証すれば済む」話ならば良いです。

ところが、施工者側の弁護士が、

弁護士C

被告・依頼主の主張は
間違っており、この施工は瑕疵ではありません!

「瑕疵ではない」と主張すると、

裁判官A

それでは、双方の主張を書面にして
しっかり主張してください。

裁判官は「双方の主張を立証・書面化」することを指示します。

この結果、

弁護士B

前回主張した通り、
この施工は、〜の部分がずれており・・・

弁護士C

前回主張した通り、
この施工は瑕疵ではなく・・・

「写真から、誰が見ても瑕疵」である施工に対して、「瑕疵かどうか」の議論が延々続きます。

ある裁判では、途中から依頼されましたが、

Yoshitaka Uchino

この「瑕疵かどうか」の
繰り返しの議論を1年ほどやっているのか・・・

似たような議論が延々と続いている状況でした。

こうなると、裁判官も人間ですから「論点がぼやけてくる」傾向があります。

裁判官A

これは、
双方の主張の間を取るか・・・

裁判官A

こんな感じの
和解案でどうでしょうか?

そして、「双方の間をとる和解」を提示してくる傾向があります。

こうなると、「依頼主側の思い」は「ほとんど通らない」傾向になります。

このような場合、大事な戦略があります。

それは、「施工瑕疵が始まり」であっても「施工瑕疵のみの論点にしない」ことです。

これまでの経験から、「明確な施工瑕疵を起こす業者は他にも問題がある」傾向があります。

例えば、法律違反なども平気な業者が多いです。

損害賠償事件において法律違反を指摘しても、裁判官は、

裁判官A

損害と法律違反は
別だから・・・

「損害論と法律違反は別」という姿勢ですが、「法律違反が損害に結びつく」可能性があります。

このような「施工瑕疵の裁判」では経験豊富な一級建築士に早めに相談するのが良いでしょう。

そして、「論点を小さな部分」に限定せず、「広い視野で戦う」戦略が良いでしょう。

次回は上記リンクです。

新地球紀行

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