不利な状況を逆転する「契約書を叩く」戦略〜契約書が超強力な存在である建築裁判・戦場の変更と真珠湾奇襲攻撃〜|裁判戦略と戦争1

前回は「裁判で延々続く「世間とズレた」議論〜施工瑕疵から論点拡張する戦略・誰が見ても明確な施工瑕疵と建築裁判の実態〜」の話でした。

目次

契約書が超強力な存在である建築裁判

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工事現場(新地球紀行)

これまでに多数の建築裁判に関わり、現在も数多くの建築に関するコンサルティングを行っています。

建築裁判において、最も多いのが損害賠償請求の裁判です。

そして、裁判においては「損害賠償額の根拠」が非常に重要視されます。

裁判において、根拠もなく、

弁護士A

損害賠償額は、
大体この位を求めたいです!

このように主張しても、

裁判官A

それでは、その根拠を
示してください。

裁判官は相手にせず、原則として「全く通らない」ので、根拠を明確にすることが大事です。

そして、この「損害の根拠」となる資料が多くの場合、工事請負契約書です。

弁護士C

損害賠償の根拠は
工事請負契約書に全て記載があります!

こう弁護士が主張すると、

裁判官A

契約書は非常に重要なので、
それはその通りでしょう。

契約書に対しては、裁判官が「すんなり過ぎるほど、ハッキリと理解」する傾向があります。

とにかく、建築裁判において「超強力な存在」であるのが建築工事請負書です。

確かに、社会においては「契約」は大事です。

「契約の大事さ」は分かっていますが、「契約書を交わす」経験は「それほど多くない」のが普通です。

そして、民法などの法律においては、契約は非常に重視される傾向があります。

いわば、「法律の根幹」とも言える存在が契約であり、それを具現化した「契約書」は超強力です。

不利な状況を逆転する「契約書を叩く」戦略:戦場の変更と真珠湾奇襲攻撃

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工事契約書(新地球紀行)

とにかく、「契約で定められたこと」を裁判官は非常に重視する傾向があります。

そして、建築裁判において、登場することが極めて多い契約書は「議論の中心」となることが多いです。

裁判官A

契約書には
このように記載されていますね。

このように「契約書を重視する」姿勢を裁判官が示すと、

弁護士C

そうです!
「契約書通り」であるべきなのです!

「契約書を盾にする」戦略を取る方の論理は、裁判において「極めて分かりやすい」です。

対して、

弁護士A

契約書には、そう記載ありますが、
これはおかしいです!

「契約書がおかしい」と反論しても、裁判官には「分かりにくい」のです。

裁判官A

これは、「契約書の内容を正」と
するしかないな・・・

裁判官は、「契約書は正」と考える傾向が極めて強いです。

そのため、「契約書中心の戦略」では、「契約書の内容に疑義を唱える」のは分が悪くなります。

かつて、「契約書がある」で早々に分が悪くなった建築裁判に関わりました。

裁判官A

契約書に記載されている以上、
こちらの言い分が正しそうです!

こう裁判で告げられた当方側の代理人の弁護士が、

弁護士A

いやはや、
これは負けかな・・・

このようにハッキリと「敗北宣言」を行い、「敗北の方向」になった裁判がありました。

この時、筆者が考えたことは「契約書中心の議論」から大きく変えることです。

Yoshitaka Uchino

これは、戦略を大きく変えて、
「戦場を変える」べき!

こう考えた筆者は、「本丸である契約書を叩く」戦略に切り替えることにしました。

超強力な工事請負契約書には、様々な疑念・問題点がありました。

その「契約書の疑念・問題点」を明確にして、裁判で主張した結果、

裁判官A

よく分からないが、
確かにこの契約書には「おかしな部分」がある・・・

裁判官A

ならば「契約書があるから」という
議論が成り立たないのか・・・

裁判官の方針が大きく変わり、大きく切り返したことがありました。

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南雲機動部隊のハワイ奇襲攻撃の航路図(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

この「戦略の大変更」あるいは「戦う戦場を変える」のは、戦争戦略とも似ています。

「勝てるはずがない」米国に対して、「乾坤一擲の大戦略」を実行した山本五十六。

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左上から時計回りに、山本五十六 連合艦隊司令長官、南雲忠一 第一航空艦隊司令長官、草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長、宇垣纏 連合艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社、歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研、Wikipedia)

当時「誰も考えなかった」であろう「真珠湾を空母航空艦隊で奇襲攻撃」を敢行しました。

山本五十六

米国と普通に戦って、
勝つのは不可能!

山本五十六

ならば、「普通」ではない
「超越的戦略」でゆくしかない!

上記リンクでは、真珠湾に向かう空母機動部隊の話をご紹介しています。

裁判においても、戦争と同様に「大きく戦略を変える」ことは極めて重要です。

「机の上の戦争」である裁判には、様々な戦争の歴史が大いに参考になるでしょう。

次回は上記リンクです。

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