前回は「海軍内部の深刻な亀裂〜条約推進派と艦隊派の熾烈な争い・日米の格の違い・永野総長の謎の信念・海軍を追われた堀と「追った一派」の南雲・肝胆相照らす仲・山本五十六と堀悌吉〜」の話でした。
極めて投機的要素が強い奇襲攻撃:投機性の最大理解者・山本司令長官


乾坤一擲の、
我が大日本帝国海軍の運命を賭けた戦い・・・





軍令部としては、
南方資源地帯確保が最優先であり・・・



このような、異常に投機的な
攻撃は、絶対に認められません!
若い頃から優等生で、優れた見識を持っていた伊藤軍令部次長。
伊藤次長の主張は「極めて合理的であり、尤もなこと」だったのです。





真珠湾奇襲攻撃が認められぬなら、
私は連合艦隊司令長官を辞任します!



!!!!!
山本の「辞任攻撃」に驚愕した軍令部。





山本は、我が大日本帝国の
顔だ・・・



山本が長官を辞めたら、
誰が米軍と戦うのだ?



・・・・・



まあ、山本があれほど
強く主張するなら、やらせてみてはどうか?



戦争はやってみなければ、
分からないからな!



いえ、その・・・
あの・・・・・
海軍兵学校卒業期 | 職責 | 名前 | ||
28 | 軍令部総長 | 永野修身 | ||
31 | 海軍大臣 | 及川古志郎 | ||
32 | 連合艦隊司令長官 | 山本五十六 | ||
36 | 第一航空艦隊司令長官 | 南雲忠一 |
永野総長の意味不明な論理から、強引に軍令部の了承を取り付けた山本長官。


そして決定した、正規空母6隻という空前の大艦隊の第一航空艦隊。
この超強力な艦隊を向かわせることに決まりました。



危険すぎる・・・
ほとんど博打だ・・・
軍令部の伊藤次長はじめとする「良識派」からみたら、「信じがたい博打」でありました。
「正規空母6隻による真珠湾奇襲攻撃」は。



確かに、投機的であり
博打だ・・・
そして、「投機的な博打」であることを最も理解していたのは、他ならぬ山本長官でした。
桶狭間とひよどり越えと川中島を「一度にやる」こと





やはり、
どうあっても南雲には任せられん!
はっきり言えば、山本長官にとって南雲司令長官は「合わない」存在だったのでしょう。
真珠湾奇襲攻撃に対して、山本は思います。



まさに
乾坤一擲の奇襲作戦だ・・・



桶狭間とひよどり越えと川中島を
一度にやるようなものだ・・・


「桶狭間」は、勢力の小さな織田信長が大勢力・大軍の今川義元を破った戦い。
後に覇王となった織田信長は、この戦いで鮮烈なデビューを飾ります。


新歴史紀行(別サイト)で、織田信長の話をご紹介しています。(上記リンク)


「ひよどり越え」は源義経が、一気に崖を駆け降りて平家の大軍を破った戦い。


「川中島」は、武田信玄と上杉謙信の死闘「川中島の戦い」です。



これらの戦いを
一気にやる気持ちで臨まねば・・・



真珠湾奇襲攻撃は、
成功は難しいだろう・・・



だが、そのためには、
卓抜たる能力を有する人物でなければならぬ・・・
信長と義経と謙信を合わせた人物:奮い立つ山本長官


山本長官は思います。



桶狭間とひよどり越えと川中島を
一度に制する人物・・・
「桶狭間」を制した天下人・織田信長。
政治力・知謀に長けた印象の強い織田信長。
実は、「際立って高い軍事能力」こそ信長の真骨頂でした。


「ひよどり越え(一の谷の戦い)」で、平氏を一気に破った源義経。


「川中島」は、武田信玄と上杉謙信のどちらを山本長官が意識したのか、判然としません。
おそらく上杉謙信を意識したでしょう。
第四次川中島の戦いで、武田軍の「キツツキ戦法」に対して、猛然と武田信玄の本陣へ突撃した上杉謙信。



信長・義経・謙信の能力を
併せ持つ人物・・・



そのような人物は、
我が帝国海軍にいるだろうか・・・
それは、いるはずがないのです。
世界中で探しても、「信長・義経・謙信の能力を併せ持つ人物」は歴史上存在しません。



・・・・・
悩み抜きましたが、すでに禁じ手に踏み切っている山本長官に、怖いものはありません。



ならば、私が、自分が
真珠湾へ行くしかない!


山本長官は、軍令部および海軍省に伝えます。



私、山本が自ら
第一航空艦隊司令長官となります。



そして、機動部隊を直卒して、
ハワイ真珠湾奇襲攻撃へ向かいます。
ここで山本長官の独断専行が再開しました。(上記リンク)
これを「主張すること」自体が許される風土もまた異常でした。
そして、「いかにも日本的」でありました。
米軍・英軍では、こういう我が儘は、そもそも許されないでしょう。
山本長官の我が儘に対し、海軍首脳、つまり山本の海軍兵学校先輩達は、悩むのか、突っぱねるのか。



私自ら真珠湾へ
ゆくしかないのだ!
次回は上記リンクです。