前回は「「不自然な工程表」と土壌汚染・地中障害の謎〜「明らかな瑕疵」と発注者の「支払う責務」・法の根幹である契約書〜」の話でした。
「とにかく書面が最重要」の裁判:弁護士の最重要業務「書面作成」

筆者は一級建築士で、弁護士や一般の方の依頼を受けて、建築裁判のコンサルもしています。
このきっかけとなったのは、中学〜大学の同級生の弁護士からのSOSでした。

今、建築裁判を
やっているんだが・・・



専門的なことが
分からないので、協力して欲しい・・・



ぜひ、
力になるよ!
そして、建築裁判のコンサルティングや意見書の作成などを開始して十年余り。
建築裁判に関しては、かなり分かるようになってきました。
それまでは、裁判は「遠い存在」で、テレビドラマで観ていただけでした。



〜に関しては、
原告が嘘をついている!



そんなことはない!
被告こそが、大嘘つきで矛盾がある!
テレビドラマでは「見せ場」として、弁護士同士で侃侃諤諤の論戦を張ります。
この「論戦」は「口喧嘩」に近いのもまた、「ドラマだから」です。
「ドラマだから」は分かっていますが、弁護士同士の論争は面白いです。
そして、本物の裁判でも同様に「弁護士同士の論争」があると思いましたが、実情は全く異なります。



それでは、原告の
主張は、この書面です・・・



原告の準備書面を
読みましたが、被告は反論ありますか?



被告は反論があるので、
次回期日前に準備書面と書証を提出します。



そうですか・・・
それでは次回期日は〜日です。
このように、実際の裁判では多少の「口頭のやり取り」がありますが、ほとんど全てが書面です。
裁判を行う日のことを「期日」と呼びますが、期日において口頭での主張は、ほぼありません。
そのため、弁護士の最重要業務は「書面作成」となります。
いわば、「書面作成」によって、大きな収入を得ているのが弁護士の実態です。
「一人歩きする」訴状・準備書面と「一人歩きしない」設計図書


この「書面を作成することが最重要」であることは、



裁判では書面が最も重視されるから、
「書面作成」が最重要なのは当然!
法曹界の方にとっては「当然のこと」かもしれません。
一方で、建築裁判に10年以上関わってきた筆者としては、かなり違和感を感じるのが現実です。
建築士は設計の際に、様々な設計図書や書類等を作成します。
・基本設計図書(最も基本となる設計図書)
・実施設計図書(詳細な設計図書)
・CG
・模型
・仕様書など建主に説明する書類
・建築確認申請書
・その他条例や助成金申請等に係る書類
上記の通り、建築士は大小様々な建物の設計プロセスにおいて、上記のような書類等を準備します。
2000年代から、CGが非常にリアルになったので、模型を作成しない建築士もいます。
ここで、建築士が作成する書類等の中では、当然ながら設計図書が最も重要です。
弁護士が「書類を作成すること」と建築士が「設計図書を作成すること」は同等かもしれません。
ところが、弁護士が訴状や準備書面等の書類を作成すると「書類が一人歩きする」傾向があります。
書面こそが裁判で最重視され、その書面がずっと生きてゆきます。
対して、建築士の設計図書は最重要で大きな変更は不可ですが、工事中に様々な調整・修正を行います。
この点では、「設計図書は一人歩きしない」傾向が強いです。



私たち裁判官は、
とにかく書面を重視します!
とかく「書面が超重視される」裁判においては、「書面という紙」がドンドン闊歩してゆきます。
本来ならば、「書面を軸に口頭で議論」があって然るべきであり、



なぜ、書面に対しては
「書面でなければ答えられない」のだろう・・・
このような疑問を、ずっと感じています。
海外での裁判の進行は知りませんが、「とにかく書面」の日本の裁判。
もう少し法廷での議論があって然るべきと考えます。
次回は上記リンクです。