前回は「リメンバー・パール・ハーバー 6〜うやむやの中で決定した真珠湾奇襲攻撃〜」の話でした。

攻撃部隊から外された、山口多聞司令官率いる第二航空戦隊。
山口司令官は、怒り心頭です。
極めて優秀な山口多聞は、戦略的才能は山本五十六に匹敵すると言われ、かなりの激情家でした。
山口は主張します。

ここまでみんなで
一生懸命やってきたのだ!



最後の最後で外されては、
第二航空戦隊の部下等に合わせる顔がない。



なんとしても我々も、攻撃部隊に加えてもらいたい!
山本長官は、困り果てます。


自分の職を賭して押し切ったハワイ真珠湾奇襲攻撃でした。
そして、軍令部の「最も大事な空母を沈められたらどうするのか?」という反論に対する配慮もあります。
双方の話し合いの結果、やっと「空母四隻」で決着したところでした。
しかし、山口司令官は絶対に折れません。
ハワイまでは距離が長いため、給油する必要がありますが、出撃後は途中に日本側の港がないので、洋上給油となります。
そのため、航続距離がやや劣る空母 飛龍・蒼龍の二隻は、他の空母と足並みを揃えて侵攻するのに難があったのです。


同じ海軍兵学校卒業生として、山口司令官は山本長官の8期下になります。
「山口司令官」ならぬ「後輩の山口」が「山本先輩」に詰め寄ります。



我々が足手まといであったら、太平洋にほったらかしにしてくれてよい。
山口多聞と山本五十六は、もともとウマが合う仲でした。



他の空母等は、我々を見捨ててくれても構わない。



とにかく、我々も参加させてくれ!
対して、山本と南雲なウマが合いません。


戦艦を最重視する、いわゆる「大艦巨砲主義」が主流の時代。
山口は、航空機による空母機動部隊の編成を、山本と共に強く主張している間柄です。
さらに、山本が海軍首席代表をつとめたロンドン軍縮条約などでも山口も一緒に随行し、山本と共に汗をかいた仲です。



山口とは、
とても気が合う。
山本が空母赤城の艦長であった時、着艦に失敗しそうになった航空機がありました。
その時、山口と共に飛行機が飛行看板から落ちないよう、飛び乗って支えた逸話があるほど、山口とは肝胆相照らす仲です。



南雲とは大違いだ!
山本長官にとって、山口司令官との仲は、南雲司令長官や草鹿参謀長との関係とは比較の対象になりません。


人情家の山本。



そうか。
山口がそこまで言うのか。
永野軍令部総長が、山本に思ったことと同じことを感じます。
伊藤整一軍令部次長は海軍兵学校で山口の1期上、山本の4期下です。
年齢が近い同窓生同士で、さらにお互い優等生同士。
相手の気持ちも分かります。


海軍の重大な作戦の決定において、海軍兵学校の先輩後輩の関係が大きく影響します。
諸外国でも、軍隊は陸軍士官学校、海軍兵学校などの卒業生が多く、いわば「みんな同窓生」です。
この中、日本特有の「同じ飯を食った中」という気持ちが、海軍人事のみならず、作戦にも絶大な影響をもたらします。