前回は「リメンバー・パール・ハーバー 4〜山本長官の禁じ手に動揺する海軍作戦指導最高組織 軍令部〜」の話でした。

しびれを切らして、遂に「奥の手=禁じ手」に踏み切った山本五十六。
伊藤次長は、大先輩の永野総長に「真珠湾奇襲攻撃」案を潰してもらおうと考えて、相談に行きます。

山本を可愛がっていた永野はここで折れてしまいます。

山本がそれほど言うのなら、
いっちょやらせてみようじゃないか。
永野もまた、草鹿同様に消極的賛成へと転じます。



えっ・・・・・?


却下してもらう予定が、真逆の方向になってしまい、もう取り返しが付きません。
ボトムアップ式に意思決定されることが多い日本において、総長決断という異例のトップダウンになりました。
ついに真珠湾奇襲攻撃は、軍令部を通過します。


米国ならば米軍最高司令官である大統領が出てきて、話し合うことになるでしょう。
しかし、当時の近衛文麿首相は性格もありますが、軍の人事に割って入る状況にはありませんでした。
それは、「統帥権」と言う天皇に属する権限があり、日本軍の最高司令官は形式的には昭和天皇だったからです。
その為、内閣総理大臣ですら軍の人事に口を出せません。
むしろ、「陸軍が陸軍大臣を出さないと内閣が倒れる」と言う米英では考えにくい状況にあったのです。


海軍・軍令部の上層部全員が、山本の悲壮な決意・熱意に押し切られてしまい、真珠湾奇襲攻撃案は了承されます。
もはや、山本五十六が軍令部総長・連合艦隊司令長官を兼ねたかのような異常な状況でした。
この山本のゴネ得とも言える姿勢は、のちに大きな禍根を残します。
米国であれば、どうであったでしょう。
例えば、米太平洋艦隊司令長官のJackが、
俺の要望を聞いてくれなかったら、辞任する!
と言ったとします。
おそらく、海軍長官は、こう言うでしょう。
そうか。
本人が嫌なら仕方ないな。
ならやめてくれ。
後任は誰にする?
そして、合理的な米国は、合理的に人選をします。
後任の候補として、
DickとJohnとSteveがいますが。
人物に対する好みも影響しますが、それぞれの適性を見極めた上で、海軍長官が決定するのでしょう。
なら、Johnだな。
そして、辞令が出るのでしょう。
山本五十六が炸裂させた「辞任するぞ攻撃」に対する海軍高官の対応は、「いかにも日本的」でした。
そしてこの「日本的な一種異様なノリ」のまま、真珠湾奇襲攻撃へと向かっていくのでした。