冴えに冴えるアーネスト・サトウの外交手腕〜「建前」の条項・島津久光の怒りに怯える岩下と重野・奇想天外の奇策・賠償金を幕府に借入〜|日英の未来と友好21・国際関係・戦略的外交

前回は「国際法と島津久光の意向の板挟み〜岩下方平の奮戦・アヘン戦争とアロー戦争・アジアに対して組む「宿敵同士」の大英帝国フランス〜」の話でした。

目次

島津久光の怒りに怯える岩下と重野

左上から時計回りにJohn Neal駐日代理公使、Ernest Satow英外交官、薩摩藩士 岩下方平、薩摩藩士 重野安繹(Wikipedia)

Namamugiで我が国民を殺害した犯人
引き渡して頂きたい・・・

こう主張するアーネスト・サトウに対して、

・・・・・

・・・・・

薩摩側の岩下と重野は、無言になります。

・・・・・

アーネスト・サトウもまた無言。

日英双方で沈黙が流れる中、岩下は考えます。

これは困った
ことになった・・・

エゲレス(大英帝国)が犯人引き渡しを
引き下げなければ・・・

交渉決裂になって
しまう・・・

生麦事件で英国人を斬ったのは、久光お気に入りの側近の有村俊斎(海江田信義)たちでした。

生麦事件(Wikipedia)

久光様に、
「有村たちをエゲレスに引き渡す」など言おうものなら・・・

薩摩国父 島津久光(国立国会図書館)

我が薩摩藩士が
夷狄(大英帝国の人間)を斬ったのは、我が国の作法だ・・・

私の側近の有村たちを
エゲレスに引き渡す?

・・・
岩下よ・・・

お前は
馬鹿か?

こうなるに
決まっている・・・

久光様に
提案すら出来ぬ・・・

苦渋の表情となる岩下と重野。

薩摩藩士 岩下方平(Wikipedia)

久光様に
「犯人引き渡し」など言おうものなら・・・

また、エゲレスとの戦争に
なりそうだ・・・

ここは、なんとか
エゲレスに折れてもらえぬだろうか・・・

岩下と重野の苦渋の気持ちが、表情に表れてきました。

冴えに冴えるアーネスト・サトウの外交手腕:「建前」の条項

薩摩藩士 重野安繹(Wikipedia)

ここで、知性派の重野は「ダメもと」でアーネスト・サトウに伝えます。

「殺人犯の引き渡し」を
大英帝国が要求するのは、理解できる・・・

それは理にかなってますが、
薩摩としては受け入れ難いです。

ここで、アーネスト・サトウは提案します。

条項には必ず
入れていただきたい・・・

必ず、殺人犯を
責任持ってSatsumaには探してもらいたい・・・

あとは、Satsumaに
お任せする・・・

ここで、「お任せする」という妙なことを言い出した大英帝国外交官のアーネスト・サトウ。

うん?
「お任せ」だと?

これは、
どういうことか?

「建前」と
いうことか?

ここで、重野も条項の具体案の調整に本気になります。

ここはまず「条項に入れる」と
回答しなければ、何も進まぬ・・・

分かりました。
法律に則っている以上・・・

「犯人引き渡し」は
入れましょう。

ぜひ、そうして
頂きたい。

そして、Namamugiの
賠償金もいただく必要がある。

そうしないと
話はまとまらないでしょうね・・・

薩摩側の「犯人引き渡し」と「賠償金」は条項に入れざるを得ない方向に決まりました。

ここで、薩摩側は英国に話を持ちかけます。

「犯人引き渡し」と「賠償金」は
条項に入れましょう。

条項に入れることは、
久光様を説得するのに結構ハードルが高い・・・

なにか、
別の「薩摩にとってのよいこと」が欲しい・・・

何か、我が薩摩に
メリットがあるように出来ないでしょうか?

我がGreat Britainの軍艦や
最新の武器をSatsumaへ販売しましょう。

それでは、ただの
ビジネスではないか・・・

Tokugawaに「武器購入」は
制限されているはず。

それは、
よくご存知ですね・・・

このサトウという外交官は、
どこまで知っているのだ・・・

日本語も堪能で、大変な知日派であったSatow。

「TokugawaとSatsumaは別」
と考えております。

金額に関しても、
今回の経緯を考慮しましょう。

これは良い条件かも
しれない・・・

ここまで話が進んだところで、

一度
休憩しましょうか?

そうですね、
そうしましょう・・・

一度英国・薩摩共に「うちうちの相談」となります。

「交渉妥結」が見えてきた中、重野と岩下は相談します。

「犯人引き渡し」は
条項に明記されますが、問題ないでしょうか?

条項に記載されても、
反故には出来ますか?

法律的には
「出来ない」でしょう。

そこは「建前」と
考えて・・・

エゲレスの主張を
受け入れるのが良さそうですね。

英国と薩摩の交渉が「険悪な状況」から急速に「宥和」へと傾きつつありました。

生麦でエゲレス人を斬った
犯人は・・・

薩摩が「探して引き渡す」という形
ではいかがでしょう?

「探し出すことが出来なかった」
ならば・・・

引き渡さなくても
良いのでしょうか?

そこは解釈次第ですが、
「不可能」であれば「やむなし」と・・・

うむ・・・
そうですね。

あとは賠償金
ですね。

うむ。
我が薩摩も相当街を焼かれ、非常に厳しいですから・・・

なんとか
金額は下げたいところです・・・

奇想天外の奇策:賠償金を幕府に借入

新地球紀行
薩英戦争 歴史道vol.6(朝日新聞出版)

英国側も「うちうちでの相談」をします。

我が東洋艦隊は、
かなりの大打撃を受けた・・・

艦長のジョンスリングと
副長まで戦死した・・・

とにかく、賠償金をJapanから
取らねば、本国には報告できぬ。

Tokugawaのように
易々と支払ってくれれば良いのですが・・・

今後、Satsumaとは
うまく付き合ってゆきたいが・・・

なんとしても、
賠償金は支払わせる!

なんとか
交渉をまとめましょう。

そして、再び双方が交渉の席につきました。

賠償金は
如何程ご要求ですか、

大英帝国としては、
30,000ポンドを要求したい。

この金額は
国際的にも国際法としても、合理的金額です。

「言い値を支払った」TokugawaとSatsumaは全然異なる姿勢であることを理解しているSatow。

金額は交渉に
なるだろう・・・

と内心考えています。

我が薩摩も
大変な打撃を受けました。

その金額は
支払えません・・・

我々はSatsumaとは
今後お付き合いしてゆきたい。

25,000ポンドでは
どうでしょうか。

突然、一気に15%以上の5000ポンドもの減額を提示してきた大英帝国。

こんなに、
一気に下げてきた・・・

ということは、最初の
30,000ポンドは「吹っかけ」か?

ここで、アーネスト・サトウは、

この金額で、
いかがでしょうか・・・

強い目力で、岩下たちを見つめました。

いずれにしても、
先方が大きな譲歩をしている以上・・・

本気で
こちらも考えねば・・・

25,000ポンドと
言うと・・・

岩下と重野は「日本での価格」を計算します。

当時は、まだあやふやな面もあった「為替」ですが、外国との貿易の活発化につれて、確定しつつありました。

約6万両ですか・・・

我が薩摩の
公式な年間収入の40%ほど・・・

大変な
金額だ・・・

どうしても
お支払いが難しいなら・・・

ここで、策士アーネスト・サトウの瞳がキランと輝きました。

Japanの国家元首である
Tokugawaからお借りになっては?

それは
良い手かもしれない・・・

琉球などの密貿易で莫大な年間収益を上げていた薩摩藩。

調所広郷の改革もあり、財政状況は良い方向に向かっていた薩摩藩。

ところが、6万両もの現金を支払うのは非常に困難です。

そうだ、幕府に借用を
申し込もう・・・

幕府が貸して
くれるでしょうか?

そこは、幕府にも
我が薩摩の立場をわかってもらうしかない。

分かりました・・・
なんとか支払う方向にしましょう。

OK!
これで、賠償額は固まりましたね!

交渉は一気に進み、妥結目前となりました。

新地球紀行

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