前回は「戦場を変える大戦略〜原告がセットするアウェーでの圧倒的不利な戦い・証拠や書証が「分かりやすい」建築裁判・「長篠の合戦の武田軍」から切り返す戦略〜」の話でした。
「根本的なことがズレている議論」が多い建築裁判

筆者は、これまでに多数の建築裁判に関わりました。

やあ・・・
今、建築裁判の案件を抱えているんだけど・・・



工事の見積書、工程表、
打ち合わせ記録など沢山書類があるんだ・・・



しかし、見ても何が何だか
よく分からないから、相談に乗って欲しい・・・
きっかけは、中学から大学まで同級生だった友人の弁護士からの連絡でした。
建築裁判と関わり始めた頃の話を、上記リンクでご紹介しています。
建築裁判の多くは損害賠償事件で、様々な設計図書、見積書、工事請負契約書などが登場します。
それらを、弁護士や裁判官が見ても分かるはずがないのが現実です。
建築裁判のコンサルティングでは、途中からコンサルティング業務を開始する場合もあり、



これが、相手方の訴状で、
これが準備書面か・・・
依頼者、または依頼者の代理人の弁護士から書類等を預かって読むと、



設計図書や見積書に関して、
きちんとした議論がなされてないな・・・
このように、大きな違和感を感じるこが多いです。
建築士の視点から見ると、建築裁判は「根本的なことがズレている議論」が多いです。
先制攻撃が重要な裁判戦略:「確実に不合理である書類」を叩く


建築裁判のコンサルティングでは、相手方の訴状・準備書面等に対する反論が重要です。



さらに重要なのは、
相手方が提出する書証のチェックです。
相手方が原告であれ、被告であれ、書証を根拠に主張してきます。
一般的な裁判でも同様な場合があるかと思いますが、これらの書証には、問題があることが多いです。
工事請負契約書、設計図書、工程表などを詳細にチェックすると、



これは、不合理で
明らかにおかしい・・・
実務上、「不合理で明らかにおかしい」書類や、



この設計図書は、
裁判のために作られた書類だな・・・
実務プロセスや時系列などから、明らかに「裁判のために作られた=偽造した」書類も見かけます。
これらの「確実に不合理である書類」を叩くことは大事です。



この設計図書は、
明らかに不合理で問題があります!



なるほど・・・
それは気づかなかったですね・・・



それは、
ぜひ主張したいと思います。
代理人の弁護士に伝え、当方の意見書や準備書面に反映してもらいます。
ところが、中には不思議な弁護士もいて、



その主張は、相手方に〜の書面を
出してもらってからの方が、効果的ですね・・・



そこで、この主張は、
先送りさせて頂きます・・・
せっかく指摘した「重要事項」や「根幹となる不合理な事実」の主張を「先送りする」弁護士がいました。



早めに主張した方が良いと
思いますが・・・
このように反論しましたが、



裁判の戦略上、相手に何かを出させたり、
言わせた後の方が有効です・・・
このように「後手の方が有効」と、この弁護士は主張しました。
この「後手の方が有効」は分かりますが、「相手方が思った通りに書類を出す」や「何かを主張する」ことが前提です。
そのため、裁判において「後手が有効」は、筆者は誤りであると考えます。
結局、この裁判は、この弁護士の誤判断により大きく不利となってしまいました。
山崎の合戦の羽柴秀吉の「先手必勝」戦法


本能寺の変直後、羽柴(豊臣)秀吉が「中国大返し」をして、京へ舞い戻りました。





逆賊明智を
打ち滅ぼすのだ!
「考えられないスピード」で京へ進撃したのが、羽柴秀吉率いる羽柴軍でした。





な、なぜ、
羽柴が・・・
明智光秀が「秀吉の異常なスピード」を理解できなかったのは、当然であり、



光秀、この秀吉と
天下分け目の勝負だ!



やむを得ん・・・
羽柴を迎え撃つ・・・
山崎の合戦で明智光秀を滅ぼした羽柴秀吉は、そのまま「天下人の階段」を駆け上がりました。



とにかく、急ぎ京へ
行き、明智と対峙するのが最優先だ!
秀吉は「動物的な勘」で、「京へ向かうことが最優先である」ことに気づいたのでした。
ここで、秀吉が、



明智と戦う体制を
整えて、万全を期す!
播磨あたりでモタモタしていたら、「明智の天下」となっていた可能性もありました。
秀吉の「先手必勝」戦法に限らず、合戦や戦争では「とにかく早々に攻撃」が重要です。
そして、それは「裁判という名の戦争」においても、同様と考えます。