戦場を変える大戦略〜原告がセットするアウェーでの圧倒的不利な戦い・証拠や書証が「分かりやすい」建築裁判・「長篠の合戦の武田軍」から切り返す戦略〜|裁判戦略と戦争4

前回は「「時の流れ」を活かす裁判戦略〜時系列の前後関係の精査・「裁判の王様」である契約書・立証の根拠と苦しい戦い〜」の話でした。

目次

証拠や書証が「分かりやすい」建築裁判

新地球紀行
工事現場(新地球紀行)

筆者は、これまでに様々な建築裁判のコンサルティング業務を行いました。

世の中には様々なタイプの裁判がありますが、建築裁判は「分かりやすい」と思われます。

建物の問題や瑕疵が元で、大抵の場合は損害賠償裁判となることが多いのが建築裁判です。

そして、当事者の考えによっては、損害賠償に加えて「不法行為」などが主張に加わることもあります。

弁護士A

被告の責任で、
工事に関して〜の問題が発生した!

裁判では、原告側に立証責任があり、

裁判官

原告が要求する損害賠償額の
根拠はこれですね・・・

裁判官

それで、その損害賠償の
立証はどれでしょうか?

現地調査もありますが、ほとんどが「書面による裁判進行」となるため、裁判官は証拠・書証を極めて重視します。

この中、建築裁判では「建物に関すること」なので、まずは「建物」が立証対象となるので、

弁護士A

問題の写真は
これだけあります!

「建物」というモノが存在している以上、それらの写真は多数登場します。

弁護士A

さらに設計図書・工事請負契約書は、
これらです!

そして、設計図書や工事請負契約書等があり、最も分かりやすいのは工事請負契約書です。

裁判官

これが
工事請負契約書ですね・・・

日本には多数の法律がありますが、裁判官が最も重視するのはベースとなる「民法」です。

そして、民法の規定の中で「契約行為」が非常に重いために、契約書の存在は思いです。

さらに、建築には多数の設計図書があり、ベテランの建築士でなければ「理解するのが難しい」です。

この中、

弁護士A

設計図書は、見ても
全然わからないけど・・・

弁護士A

証拠として提出すると、
「専門的」なので価値が高いだろう・・・

代理人弁護士の人は、「見ても殆ど理解できない」設計図書一式を提出してくることがあります。

裁判官

設計図書一式が
これですね・・・

裁判官

見ても全然
分からないけど・・・

裁判官

裁判所所属の建築専門の
調停委員の意見を聞けばいいか・・・

裁判官も理解できないながら、枚数が多数ある設計図書は分量が多いこともあり、証拠・書証として存在感があります。

弁護士A

これで、立証を固めているから、
絶対に勝てる・・・

証拠が分かりやすいこともあり「損害が明らか」であるため、原告代理人の多くは「勝ち筋」と考え、

弁護士A

証拠に沿って、主張すれば良いから
やり易い・・・

「証拠に沿って論を展開すれば良い」と判断して、提訴するのでしょう。

戦場を変える大戦略:原告がセットするアウェーでの圧倒的不利な戦い

New Global Voyage
建築工事・月間工程表(新地球紀行)

さらに、多数の工程表などの工事関係書類が登場することもあります。

弁護士A

これだけの証拠があるので、
原告の主張を通してください!

裁判官

確かに、証拠は
沢山ありますね・・・

因果関係も分かりやすい建築裁判・建築訴訟では、原則として被告は「極めて不利」な傾向があります。

弁護士A

これだけの証拠と書証で
押せば良い!

そもそも、原告が提起する論法に従って戦わざるを得ない被告代理人は、

弁護士B

原告のこの点が
おかしいです!

様々な反論を展開しますが、そもそもが「原告がセットする戦場」での戦いとなります。

いわば、「原告がセットするアウェー」で圧倒的不利な戦いを強いられるのが被告であり、

弁護士A

我らの主張の何が
おかしいのですか?

弁護士A

あなたの主張が
むしろ不合理ですよね!

裁判官

確かに、被告は
ただ反論しているだけだ・・・

「ただ反論」しても、無意味なのは明らかですが、

弁護士B

とにかく、責任を原告側に
押し付けるしかない・・・

被告代理人としては、「責任を原告側に切り返す」しか方法がないことも多いです。

こうなっては、「明らかに負け」となることが多いのが建築裁判です。

「長篠の合戦の武田軍」から切り返す戦略

New Global Voyage
長篠の合戦屏風(戦国合戦絵巻 ダイヤプレス)

これではまるで、長篠の戦いで「織田・徳川の馬防柵」に突撃した武田勝頼軍と同じでしょう。

「武田勝頼が無謀であった」と表現されることが多いのが、長篠の戦いです。

新地球紀行
戦国大名 織田信長(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)
織田信長

武田軍の背後の砦を
攻め落としてやろう・・・

織田信長

そして、退路を絶てば、
武田勝頼は「前進するしか他にない」状況になる・・・

実は、織田・徳川軍は極めて用意周到に戦略を練り、「武田軍が突撃せざるを得ない」状況を作り出していました。

織田信長

武田が突進してきたら、
鉄砲を撃ち浴びせれば良い・・・

この「織田・徳川の大戦略」の中、勇猛極めた武田軍は大敗北して凋落しました。

新地球紀行
工事現場(新地球紀行)

長篠の戦い同様に「原告がセットした戦場で戦う」のは、致命的に不利です。

そこで、被告側が取るべき戦略は「戦場を変えること」しかありません。

具体的には、大量に登場する書証・証拠書類の契約書・設計図書・工程表などを精査し、

弁護士B

原告が提出した書証の
〜が明らかに不合理です!

このように「戦場を変えて、奇襲攻撃を仕掛ける」のがベストでしょう。

裁判官

確かに原告が出した書証・証拠が
おかしいならば・・・

裁判官

原告の訴訟提起の内容の
信ぴょう性が薄れますね・・・

原告自身が提出した書証には、必ず不合理な点があります。

それを叩いて、「被告に有利な戦場を作り出す」戦略をおすすめします。

次回は上記リンクです。

新地球紀行

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次