堂々と偽造書類を裁判所へ提出する東証上場ゼネコン・総合建設業者〜とても大事な工程表・年間工程表と月間工程表と週間工程表・重要な証拠を提出する者は「第三者」なのか?〜|建築裁判・不動産裁判

前回は「平然と偽造書類をでっち上げるゼネコン・総合建設業者〜裁判のために契約書を偽造・「第三者だから無関係」という異常事態・損害賠償額の最も明白な証拠=「瑕疵工事の見積書」〜」の話でした。

目次

とても大事な工程表:年間工程表と月間工程表と週間工程表

新地球紀行
建築工事・年間工程表(新地球紀行)

建築工事を行う際には、工程表の作成が大事です。

着工時期も大事ですが、竣工時期・完成時期が非常に大事な建築工事。

なんらかの理由で「完成が遅延すること」は、出来るだけ避けなければなりません。

工事をする対象が個人邸・戸建住宅であれば、建主が、

ちょっと色々と追加で
お願いしてしまったから・・・

完成が1ヶ月くらい
先になってもOKです・・・

と言うこともあるかもしれません。

対して、集合住宅や事業性の高いオフィスビルなどの建物の建築などでは、

完成時期は
必ず守って下さい!

というスタンスです。

これは当然のことであって、工事が遅延して完成時期が遅れると「経済的損失が発生する可能性が高い」からです。

このように「経済的損失が発生する原因」が建築業者の側にある場合は、損失補填の必要が生じる可能性があります。

個人邸の場合でも「経済的損失発生の可能性」として、「賃貸マンションに入居していた場合」などが考えられます。

個人邸の場合には、建主がたまたまご実家に一時的にお住まいの場合などは、

ちょっとくらい
完成が遅れても問題はないです・・・

となることがあるので、それほどシビアに考えなくても良い場合があります。

いずれにしても、「建物の予定通りの完成」は極めて大事です。

そのため、着工前にゼネコン・建設会社は年間工程表を作成する必要があります。

そして、大雑把な工事の順番や時期などの工程を記載して、

このような流れで
工事をしてゆきたいと考えます・・・

設計者や建主は、建設業者から工程表を受け取ります。

これらの工程表は、建築確認申請などの各種届・申請には不要であることが多いです。

ところが、助成金申請などでは「工程表の提出が必要」であることがあります。

それは、

いつ完成するかによって、
助成金を出す時期が変わり、財源に影響がある・・・

と自治体などが考えるからでしょう。

また、ある一定規模の大規模な工事においても、工程表の提出は求められることがあります。

これらの工程表には、最も大枠である年間(全体)工程表・月間工程表・週間工程表があります。

最も大枠の工程表は、工事期間が1年以上の場合の建築は年間工程表、1年以下の場合は全体工程表となります。

自治体などで提出が求められるのは、年間(全体)工程表であることが多いです。

堂々と偽造書類を裁判所へ提出する東証上場ゼネコン・総合建設業者

新地球紀行
建築工事・月間工程表(新地球紀行)

年間工程表には「大雑把な流れ」が記載されており、工事の状況によって多少変化します。

ちょっと予想外に
〜の工事が遅れたので、ここで調整しよう・・・

「工事を管理すること」が、ゼネコン・総合建設業の最も大事な仕事の一つです。

工事の進行状況に合わせて、工程は多少変化しますが大筋が変わることはありません。

週に1度程度現場で打ち合わせする設計者に対しても、工事の進捗状況が報告されます。

そして、年間工程表は多くの場合「一度作成」されて、あとは月間・週間工程表が随時作成されます。

この材料の納期が少し
遅れそうなので、こちらの工事を先に実行します・・・

などの報告が設計者や建主にされて、「工事状況に合わせて工程を調整して工事が進行」するのが常です。

この「ほとんど訂正されるはずのない」年間(全体)工程表ですが、裁判の現場では状況が異なります。

これまで、建築裁判のコンサルティングをしてきましたが、ある裁判では「何度も訂正された」年間工程表が登場しました。

この「ほとんど変更が加えられるはずがない」年間工程表が複数出てきたのを見た際には、

これは、
非常に怪しい・・・

こう感じました。

しかもこの「怪しい年間工程表を作成していた」業者は、ある東証上場ゼネコンでした。

あのゼネコンが
こんな書類を作成するんだ・・・

最初は「とても驚いた」のが現実です。

このたくさんある
年間工程表は「裁判のために作成した」のでは・・・

この裁判では、「工事完成の遅延」による「損害賠償」が問題でした。

この時、原告代理人である弁護士は「工事遅延の理由」を立証する必要があります。

この「工事遅延の立証」の書類は、多くの場合は「弁護士が裁判のために作成する説明書類」が多いです。

エクセルなどで簡単に、分かりやすく「工事の遅延」を説明して、

原告のせいで、
これだけの工事遅延が発生しました!

その証拠は、
この「工程表を整理した書類」です!

そして、この「工程表を整理した書類」の
元となる書類は、ゼネコン作成の年間工程表です!

という論理で、裁判としては「非常に分かりやすい」流れなので、

それは、ストーリーが
しっかりしていますね!

と裁判官は考えるようです。

ところが、工事の工程が変わっても「年間工程表を修正する」習慣は建設業界にはありません。

これは、普通に考えれば分かることで、「年間工程表は大枠の工程表」であり「多少の変更はありうる」からです。

そして、「多少の変更」は調整の上、月間工程表・週間工程表などに反映されます。

「大枠」である「年間工程表が修正される」はずはないのです。

重要な証拠を提出する者は「第三者」なのか?

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工事現場(新地球紀行)

これは、おそらく原告側の工事を行ったゼネコン担当者が、「代理人・弁護士に依頼されて作成した」としか思えません。

そもそも「存在しないはずの、何度も何度も修正が加えられた年間工程表」は「存在するはずがない」のです。

年間工程表は、

全体としては、
この流れで、工事を行います!

という、建築工事現場のマニフェスト・ミッションみたいなものと考えて良いでしょう。

それなのに、年間工程表が度々変わるのは、

私たちのマニフェスト・ミッションは、
しょっちゅう変わります!

と宣言しているようなもので、極めて奇異なのです。

ある裁判では、工事中に一月経過しない間に「二度も年間工程表が修正されていた」ことがありました。

さらに、それらの「なんども修正された年間工程表」が裁判所に証拠として提出されていたのです。

これは、

裁判の因果関係を立証するために、
あなたたちの工程表が必要です!

原告による「損害」を説明するためには、
工程が変更せざるを得なくなり、工事が遅延したように説明したい!

そのためには、ゼネコンの工程表が
「原告のせいで変わり、遅延した」と立証したい!

と考えた代理人・弁護士がゼネコンに「様々な年間工程表の作成」を依頼するのでしょう。

この時、仮に一部の工程変更があれば、実際に月間工程表・週間工程表があるはずです。

それらと「年間工程表を比較して工程のずれを立証すれば良い」のですが、

年間工程表と月間工程表・週間工程表では、
比較するのは、裁判官は理解しにくいだろう・・・

だから、全部年間工程表であれば、
見やすくて、比較しやすい!

と考えたに違いない代理人・弁護士。

この要請を受けて、ゼネコン担当者は、

本当は年間工程表は
一枚しかないけど・・・

裁判に合わせて、
何度か修正したことにして、年間工程表をつくろう・・・

と考えたのでしょう。

これが、ゼネコンが「裁判の当事者」であれば、かなり危険なことであることは分かるはずです。

それにも関わらず、いとも易々と「書類を偽造する」のは、

ま、我々は
第三者だからな・・・

当事者ではないから、
「少々のこと」は問題ないだろう・・・

と思っているからでしょう。

裁判の概念としては「当事者とは、原告と被告」かもしれません。

一方で、「重要な証拠・書証を提出する場合は、第三者の立場を逸脱する」と考えます。

「第三者だから関係ない」と、偽造した書類を堂々と裁判所に証拠として提出する会社。

海外の事例は知りませんが、日本の法制度は「証拠を提出する者の立場」を再考すべきでしょう。

新地球紀行

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