平然と偽造書類をでっち上げるゼネコン・総合建設業者〜裁判のために契約書を偽造・「第三者だから無関係」という異常事態・損害賠償額の最も明白な証拠=「瑕疵工事の見積書」〜|建築裁判・不動産裁判

前回は「建設業法違反の工事見積書が「証拠」となる裁判の現場〜裁判の証拠として最も適している「工事見積書」・工事見積書を作成する一級建築士〜」の話でした。

目次

損害賠償額の最も明白な証拠=「瑕疵工事の見積書」

新地球紀行
工事契約書(新地球紀行)

損害賠償額が高額になる傾向が強い建築・不動産裁判。

損害賠償額は「工事費用」となるため、原告が求める賠償額が数千万円となることは珍しくありません。

場合によっては、「求める損害賠償額」が一億円を超えることもあります。

裁判の際には、損害賠償額に利子の遅延金が発生し、さらには弁護士費用等も被告側に求めます。

これらをトータルすると、かなり高額になることが多いのが建築・不動産の裁判です。

そして、裁判の際に最も大事なのは訴状ですが、その訴状の内容の証拠・書証が極めて重視されます。

それでは、
その損害賠償額の証拠を示してください・・・

と裁判官は考え、それに対して、原告側の代理人・弁護士は、

損害賠償額の
根拠はこれです!

と主張し、工事見積書や工事契約書を書証・証拠として提出することが多いです。

これらの工事見積書は多くの場合が、「瑕疵を改修・修繕するときの工事費用」であり、「仮定の話」が多いです。

この「仮定の見積書」は、建設会社が作成する場合もありますが、多くの場合は調査会社が作成します。

是正する工事を
行う場合には、この位かかります・・・

それでは、その工事金額を主張するので、
明確な見積書を作成してください。

と弁護士が依頼することもあるでしょう。

あるいは、瑕疵を調査する際に、

裁判になったら、
工事見積書が重要だから、作成します。

と調査会社が作成する場合もあるでしょう。

いずれにしても、裁判に関わって初めて分かったことは、

損害賠償額を主張するならば、
その根拠が大事!

ということでした。

これは、弁護士・裁判官などの法曹関係者から見れば「当然」かもしれませんが、一般人にはなかなか分かりません。

裁判に関与する前までは、

損害賠償額は、
大体このくらいと考えます!

と主張すれば良いと思っていましたが、それでは、

だから、その損害賠償額の根拠は
なんですか?

となってしまいます。

「ただ主張するだけ」では、根拠が不明瞭であって、

根拠が書面で出せないなら、
根拠不十分と見做します・・・

この場合は裁判官は、主張を「ほぼ無視する」傾向があります。

これは「離婚裁判の慰謝料」など、「根拠が明示しにくい」場合は別と考えます。

「慰謝料」は、判例など相場によって「ある程度の基準」があると考えます。

対して、「工事費用」のように内容によって大きく変わり「根拠が明示しやすい」場合は、その根拠が大事です。

このとき、根拠となる書証・証拠として「工事見積書」は絶大な効果を発揮します。

平然と偽造書類をでっち上げるゼネコン・総合建設業者

新地球紀行
工事現場(新地球紀行)

建築裁判のコンサルティングをする際は、多くの場合が「被告側」です。

原告側がこの工事契約書と工事見積書を
損害賠償額の根拠としています・・・

原告が提出する訴状、書証・証拠などの書類は「書類審査」である裁判では非常に重要です。

この証拠によって、
原告の主張の因果関係が明確になっています・・・

そして、裁判に関わると良く聞くのが「因果関係があるのか、ないのか」です。

日常では聞きなれない「因果関係」は、裁判では極めて重要です。

この瑕疵による損害賠償請求では、

瑕疵を
早く改修した方が良い!

と考えて、先に原告側が工事を行うこともありますが、大抵は「工事を行う前」に訴訟になります。

その理由は、改修する工事が高額になる傾向があるので、原告側としたら、

先に工事をして、
支払っても、裁判で取り返せるか不安・・・

なので、本来は「早く是正すべき工事」なのに、先送りする傾向があります。

場合によっては、原告側が第三者であるゼネコン・建設業者に「工事を発注・契約」することがあります。

こういう場合は、非常に要注意です。

原告側の弁護士の論理は、

被告のせいで、この工事をする
必要があった!

そして、原告はこの工事を発注せざるを
得なかった!

そのため、この工事の原因は被告にあり、
因果関係が明白である!

この「三段論法」で攻めてくることが多々あります。

このように「実態としての工事契約」が登場すると、因果関係が「明白すぎる」ので、

それは、ストーリーが
しっかりしていますね!

法律論のプロ中のプロであり、因果関係・法律論を中心に考える裁判官は納得する傾向があります。

ところが、この「第三者であるゼネコン・建設会社」は、時々平然と偽造書類をでっち上げます。

この契約書は「工事完了後」なので
無効です!

僕たち設計者は日常の業務で「日付を重視する」傾向があります。

それは、設計・申請・工事のスケジュール管理が非常に重要だからです。

「スケジュール管理が重要」なのは、どんな業務でも共通していますが、建築業界は少し特殊です。

頻繁に変更される設計図書や見積書が「いつに作成されたものなのか」が大事だからです。

建設業法第19条:工事請負契約書

建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

一 工事内容

二 請負代金の額

三 工事着手の時期及び工事完成の時期

五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

建設業法やガイドラインには、「工事請負契約は着工前」と明記しています。

この「契約書が工事完成後であること」を即座に指摘すると、弁護士は、

そこは見てなかったし、
全然気づかなかったなあ・・・

と言うことが多いです。

日付かあ・・・
書証の日付は気にしないなあ・・・

が弁護士の世界では通常のようです。

この「工事完成後の契約書」は明確な建設業法違反で、ゼネコン担当者は「分かって作成している」のです。

そもそも、建設業において「工事請負契約書」は最重要です。

この「最重要業務」の「最も大事なこと」を「知らなかった」では済まされないことでしょう。

裁判のために契約書を偽造:「第三者だから無関係」という異常事態

新地球紀行
工事現場(新地球紀行)

工事完成後の工事契約書は
無効である。

と意見書で指摘することがありました。

この意見書での指摘は、しっかりと法理的根拠を明記して、具体的かつ簡潔に記載しています。

これだけしっかり書いたら、
合理的な反論は無理だろう・・・

と考えるものの、弁護士はやはり反論してきます。

「建設業法違反」の証拠を提出した弁護士は、

法律の「但し書き」によると、
必ずしも着工前でなくても良い!

と反論してくることが多いです。

どの法律にも「非常時」などを想定した「但し書き」がありますが、「非常時」は非常時です。

最近起きた「非常時」は例えば「新型コロナによる社会への影響」ですが、これが「但し書き」に該当するかどうか。

これは、「法律を作成し、管理している」法務省が明確にするべきでしょう。

損害賠償請求の裁判を提訴する際には、原告は弁護士・代理人を通じて、

あなた(被告)のせいで、
これだけの損害が発生しました・・・

〜月〜日までに、この損害額を
下記銀行口座に振り込んで下さい・・・

さもないと、
法的手段に訴えます!

という「裁判の前段階」とも言える「儀式のような手続き=通告書発送」があります。

実際には、金額にもよりますが、一方的にこのように通告されて、

分かりました・・・
ご請求通り、支払います・・・

と支払う方は、ほとんど皆無でしょう。

この意味では、この「儀式のような手続き」は不要かと思いますが、提訴・裁判としては必要なようです。

証拠・書証に工事契約書・見積書がある場合、その日付とこの「通告書発送」の前後関係が重要です。

実際には、工事完成後締結の工事契約書・見積書が「通告書発送」の直前であるケースがありました。

これは、どう考えても「裁判を見据えて工事契約書を偽造した」としか考えられません。

「想定」になりますが、おそらくこの通知書を作成している弁護士は、

この通告書を相手方に
送るが、間違いなく裁判になる・・・

通告書を送ってから一月〜二月後に
提訴する段取りだ・・・

だから、もう訴状を
準備しておこう・・・

と考えるでしょう。

このとき、おそらくは、

訴状はこんな内容だが、
証拠・書証を固めたい・・・

そうだ、工事見積書とセットの
工事契約書があれば、裁判官は納得するだろう!

と考えて、

裁判に証拠として提出するので、
早急に工事契約書を原告と結んで下さい!

とゼネコン・建設会社に相談・指示するのでしょう。

「工事完成後に工事契約締結」と言われれば、真っ当なゼネコン関係者であれば、

いや、あれはもう工事が
終わっているので契約締結はできません・・・

と言って断るでしょう。

ところが、中には「真っ当でない」人間もいるようで、

じゃあ、システム上、日付は工事後になってしまいますが、
原告と締結したことにしますか・・・

と考えて、原告となる側は、

それで裁判が有利になるなら、
押印しますよ!

と考えるのでしょう。

この「裁判の証拠作成のために法律違反の書類を偽造する」姿勢は論外であって、厳しく処罰されるべきです。

ところが、この「書類を偽造」するゼネコンは、

ま、うちは第三者だから
関係ないな!

と考えて、平然とこういう「法律違反の書類偽造」をするのでしょう。

この「法律違反の書類偽造」は、私文書偽造にあたると考えます。

さらには、公的機関である裁判所に「証拠として提出」であることを考慮すると「半公文書」です。

ならば、「私文書偽造」というよりも「公文書偽造に近くなる」と考えるのが正当でしょう。

こうした「法律違反の証拠偽造」という行為が跳梁跋扈しているのは、「証拠を査定しない」からです。

第三者であろうとなかろうと、「法律違反の証拠を偽造」する行為は認められるべきではないでしょう。

欧米の裁判の実態は知りませんが、「証拠の信憑性の査定」は裁判所がするべきと考えます。

その時に専門家の力が必要であれば、「専門家との協力体制」を構築すべきです。

この話は建築裁判の具体例ですが、「似たような話」は他の裁判でもあるでしょう。

非常に長期の時間がかかり、原告・被告共に精神的・金銭的負担が大きな裁判。

法務省がしっかりと考えて、早急に裁判における証拠の査定を行うシステムが必要です。

さらに、「証拠の偽造」や「法律違反の証拠作成」に対しては、それを行った者に対して厳罰で臨むべきでしょう。

新地球紀行

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