前回は「強まる中国の存在感〜金融不安と世界株価・台湾と米国・中国指導部の高い政治力〜」の話でした。
世界と逆行する日銀の発想:「経済の舵取り」の認識が強いFRB
長らくマイナス金利という異常な世界に居続ける日本と日本経済。
そろそろ
マイナス金利止めようか・・・
ついに、植田日銀総裁がマイナス金利を撤廃する方向性になってきたという報道が続いています。
流石に
そろそろ日本の政策金利を引き上げよう・・・
ついに日本の金利が引き上げられる可能性は、徐々に大きくなっています。
ただ、これは「方向性という報道」にすぎず、植田総裁は明言を避け続けています。
・・・・・
対して、最近のFOMCでパウエルFRB議長は、
政策金利を
据え置きます・・・
連続3回目の据え置きですが、
もう上げないと思う・・・
流石に急速に金利を引き上げすぎたから、
来年は引き下げるかも・・・
というニュアンスを示しました。
つまり、日銀の「来年金利を引き上げる」のは「来年金利を引き下げる」という世界銀行と逆行することになります。
「周回遅れ」というのか、なんとも言えない状況です。
1998年以来、米国FRBと欧州ECBは金利の大きな引き上げ、引き下げを頻繁に行なっています。
例えば、FRBは2000年ごろのITバブル崩壊を受けて、6.5%程だった政策金利を一気に2%弱まで引き上げました。
その後、しばらく低金利を続け、景気が良くなってきたら一気に5%ほどに引き上げました。
2008年のリーマンショックで急落させて、一気に日本同様の0%近い金利に引き下げました。
米国経済が好調になると徐々に2016年頃から徐々に引き上げて、新型コロナショックで急に引き下げました。
その後は、近年の異常なインフレを受けて、
米国CPIの上昇が
異常だから、急速に金利を引き上げます!
そして、急速すぎるインフレを
退治してみせよう!
ここ25年で「かつてないほどの急速な利上げ」に動いたパウエル議長。
私が米国経済の
舵取りをしているのだ!
という意識が非常に明確です。
この「経済の舵取り」という認識を非常に強く持っていることが、FRBやECBの姿勢です。
対して、植田総裁は「日本経済の舵取り」という認識をもっているのか、いないのか。
・・・・・
戦略として「話さない」のも良いですが、「適切な主張」はして欲しいものです。
なんとも学者然としていて、よく分からないのが実情です。
「経済の真のプロ」のパウエル議長と「学者中の学者」の植田総裁
米国ほどでなくても、日本でもインフレは非常に強く進行しています。
上のグラフは総務省調査をもとにしていますが、実感としては、もっと強いインフレ傾向があります。
この「インフレの感触」はスーパーで買い物をしていると、強く感じます。
あれ?
5,000円超えたか・・・
以前なら、
4,000円ちょっとの感覚だけどな・・・
スーパーで買い物すると「以前なら4,000円強」ほどだったのが「5,000円を超える」ことが増えました。
これは「感覚」にすぎませんが、この感覚を数値化すると「15~20%程度物価が上がっている」ことになります。
流石にそれほど急に上がってないようにも思いますが、実際、新書の価格も大きく値上がっています。
この新書が
1,000円を超えたのか・・・
昔なら「800円ちょっと」の感覚の新書が「1,000円を超える」ことも珍しくありません。
つまり、「日本と米国は全然違う」のではなく「米国ほどでなくても、日本もかなり物価が上昇している」のです。
総務省の調査では、企業物価はコロナ以前よりも「10%程度の増加」ですが、消費者物価指数は3〜4%程度の上昇です。
本当に、消費者物価指数は
3〜4%の上昇で済んでいるのかな?
スーパーの買い物の価格にしても新書の価格にしても、とても「3〜4%の上昇」とは思えません。
これは、総務省の統計の方法によるかもしれません。
いずれにしても、東大理学部数学科から東大経済学部に学士入学した「学者中の学者」である植田総裁。
経済理論なら
私の右に出るものはいない!
と内心思っているかもしれません。
ところが「学者は学者」であり、机の上で理論をひねくり返しているだけなのです。
一度も企業等で、経済の舵取りの実務をした経験がない「学者」の植田総裁。
かつて、ディロン・リード&カンパニーの
上席役員をした経験がある・・・
そして、カーライル・グループ共同経営者の
経験もある・・・
対して、複数の企業で役員・共同経営者の経験を持つパウエル議長。
東大卒の植田総裁に対して、プリンストン大学とジョージタウン大学を卒業した弁護士であるパウエル議長。
東大とプリンストン大学を比較すると、プリンストン大学の方が上な気がしますが、仮にここは「同等」としましょう。
ところが、しっかりした銀行家・経営者の経験があるパウエル議長は、
経済は理論も大事だが、
理論だけでは分からないことが多い・・・
経済理論は複雑で、高度な微分方程式を解いたりすることもあります。
ところが、その微分方程式は「前提条件」などによって様々な解を持つでしょう。
この点、「経済を肌身で実感した経験を持つ」パウエル議長と「机の上で考えている」植田総裁。
どちらが、「経済を本当に分かっているか」は論じるまでもなさそうです。
優れた学者を崇拝する傾向が強い日本:全く無能だった「作戦の神様」
そもそも、日本では「優れた学者を実務の現場で崇拝する」傾向が昔から強いです。
海軍兵学校40期を144名中8番の成績で卒業した非常に優秀だった福留繁。
この頃の海軍兵学校は、「国家に尽くす海軍軍人」になる道で東大と同等の難関でした。
この40期には、山口多聞・宇垣纏・大西瀧治郎など多士済々を輩出した「花の40期」と言われています。
その「花の40期」を8位で卒業し、現在の大学院に相当する海軍大学校を首席で卒業した福留。
戦略・戦術論において、
私の右に出るものはいない!
海軍の戦略・戦術に関しては、かなりの見識を持っていて、
福留さんは
「作戦の神様」だ・・・
と周囲からは大変な期待を持たれていました。
山本五十六連合艦隊司令長官も福留を大変高く評価して、
福留くんには、
軍令部第一部長になって欲しい・・・
福留を目にかけて、軍令部の作戦部長であり強い権限を持つ第一部長になるよう求めた山本。
山本長官は途中で戦死してしまいますが、その後の連合艦隊司令長官も、
福留くんを
連合艦隊参謀長に欲しい・・・
と福留を「名指しで指名」するほど、非常に期待されていました。
軍令部第一部長、連合艦隊参謀長、第二航空艦隊司令長官などを歴任した福留繁。
ところが、福留繁の能力は「低かった」のであり、到底「作戦の神様などではなかった」のが現実でした。
時はちょうど、「戦艦から空母へ」大きな大転換期でしたが、
空母・航空隊は
戦艦の補助だと思い続けていた・・・
まさか、空母・航空隊が
主軸になるとは考えもしなかった・・・
実際、「時代の転換点」でそのことを理解することは非常に難しい面があります。
ところが、「作戦の神様」であるならば、「作戦の根幹」である攻撃の軸の理解は必須でした。
この「攻撃の軸の理解」すら出来ていなかった福留は「単なる優等生」でしかなく「実戦では役立たず」でした。
・・・・・
「作戦の神様」と呼ばれた福留は、「実戦では全く使えない」存在だったのでした。
挙句の果てには、機密書類をゲリラに盗まれてしまった福留(海軍乙事件)。
その結果、米海軍に日本海軍の作戦が筒抜けになる大失態まで犯しました。
後に、
機密書類は
盗まれていない!
と主張して、失笑されることになった福留。
これは戦前のことであり、80年ほど前のことですが、現代日本も笑えない状況ではないでしょうか。
「机上で考える学者」は「実戦では、ほとんど役立たない」のは、欧米では当たり前のことです。
この「福留を重用する発想」は米海軍では全くなく、
学校の成績は良いに越したことは
ないが・・・
なんと言っても、実務・実戦での
成果が最も大事だ!
であり、それがパウエル議長の選出に結びついています。
「優れた学者・戦略家」を崇拝し続け、敗北を続ける可能性が濃厚な日本。
このままでは、まだまだ日本経済の「失われた〜年」は続きそうです。
早急に、根本的発想を「欧米の標準」に変革しなければ、日本は没落を続けてしまうでしょう。