前回は「世界と逆行する日銀の発想〜「経済の舵取り」の認識が強いFRB・「経済の真のプロ」のパウエル議長と「学者中の学者」の植田総裁・優れた学者を崇拝する傾向が強い日本・全く無能だった「作戦の神様」〜」の話でした。
「通貨の番人」である日銀の怠慢:「何もしない」気楽な番人
「通貨の番人」と呼ばれる日本の中央銀行である日本銀行。
日銀の司令塔である幹部は9名います。
・総裁:1名
・副総裁:2名
・理事:6名
そして、この9名の合議制で政策金利などの大事な方針を決定します。
ところが、FRBやECBと全く日銀が異なる点があります。
それは、「政策金利をほとんど変えない」ことです。
インフレが非常に強いので、
金利を急速に引き上げる!
近年の米国消費者物価指数CPIの強烈な上昇を受けて、パウエルFRB議長は急速に利上げしました。
俺たちが司令塔となって
このインフレを退治するのだ!
政策金利の決定こそが、
極めて大事なのだ!
過去においてもFRBは急速に金利を引き上げたり、引き下げたりしています。
俺たちFRBが米ドルを
守っているのだ!
対して、歴代の日銀総裁や理事たちは、
私たちは「通貨の番人」だから、
じっと番人として見守っています・・・
ということなのか、FRBやECBと比較すると「何もしていない」とも言える状況です。
状況を注視して、
しっかり番人をしています・・・
確かに「番人」なので「何事もなければ、見守っていること」が仕事かもしれません。
「何もしない」のが
私たちの仕事!
ところが、この四半世紀=25年の間、「何もない」ことは絶対にありません。
現に2020年の新型コロナ発生以降の4年ほどの間だけでも、世界は激動しています。
そして、日本円もドルも激しいインフレを迎えています。
実際は「激しいインフレが発生」しているのに、
何も起きていないから
万事OK!
私たちは、
しっかり見守っています!
日本国内においても強いインフレ傾向にあるのに、「何も起きていない」と考えているようです。
何も起きていないから、
何もしません!
つまり「何もしない」ことが仕事である「気楽な番人」たちのようです。
これが仕事であり、一般的な基準と比較して莫大な報酬を手にしている日銀幹部たち。
「通貨の司令官」であるべき中央銀行総裁:プロ意識が強い海外中央銀行総裁たち
この「仕事をしない番人」である日銀総裁に対して、
過度な期待は、
インフレとの戦いに役立たない!
早期の利下げは
しないだろう!
「通貨の番人」ではなく「通貨の司令官」という認識が強いChristine Lagarde欧州中央銀行(ECB)総裁。
ハッキリと様々な方針を明確にしています。
方針は状況によって変化することがあっても良いので、現時点の方針を発信することは大事です。
・・・・・
対して「沈黙は金」とばかり、あまり発信しない日銀総裁。
そろそろ
日銀は利上げするのでは・・・
これに対して、市場は日銀総裁たちの「心のうち」を推し測って、金融市場が動きます。
物価の安定と雇用の最大化は、
我々の使命!
特に物価の安定と
適切な為替の維持が重要だ!
日本銀行の幹部の方々も「通貨の番人」ではなく「通貨の司令官」というプロ意識を持って欲しい。
危険な円安水準と高騰する日経平均
上のグラフは2000年から現在2024年1月までのドル円相場の変遷です。
2012年には、1ドル80円を切っていたドル円相場。
2022年頃から猛烈な勢いで円安が進み、現在では1ドル150円ほどです。
2020年以降に限ると、上のようなグラフになり、2022年4月以降に急速な円安が進んだのが分かります。
その後、一度は円高傾向になりましたが、再度円安傾向になりました。
円安は構わない・・・
むしろ歓迎!
と考えているとしか思えない日銀総裁や幹部たち。
この円安傾向に押された形で、最近日経平均株価が急上昇しています。
ところが、ドルで考えれば、日経平均上昇は「即座に喜ぶべき状況」ではないことが分かります。
1ドル140円から、5%円安になった1ドル147円になった時点の日経平均株価を考えます。
日本国内限定の視点であれば、
株価が上がって、
日本企業が評価されている!
となりますが、「世界の視点」で考えれば「日経平均も5%上昇」は当然と考えて良いでしょう。
バブル期以降、日本という国家の力が縮小する一方であるとしても、現在の1ドル150円程度の円安は危険です。
世界の視点で考えれば、自国通貨が安くなって「良いことは何もない」のは考えなくても分かるはずです。
自国通貨下落を「見守る」だけの日銀幹部たちは、「仕事をしていない」と考えるのが真っ当でしょう。
少なくとも、日銀幹部たちには「通貨の番人」ではなく「通貨の司令官」というプロ意識を持って欲しい。