前回は「「不自然な要素が満載」の設計会社作成の工事見積書〜淡々と粛々と進む裁判・「損害額の根拠」と書面ベースの戦い〜」の話でした。
最終的には「お金の話」になる損害賠償事件:設計や工事中の増額トラブル

私たちは、これまでに多数の建築・不動産裁判に関わってきました。
多数のお金が動く建築・不動産においては、トラブルも多い傾向があります。
そして、建築・不動産裁判は、ほとんどのケースが損害賠償事件となります。
損害賠償事件は、正式には「損害賠償請求事件」と呼ばれます。
・民事事件
・行政事件
・刑事事件
・家事事件
・少年事件
・医療観察事件
日本の裁判所では、上のような事件が裁判で扱われます。
最も多いのが民事事件であり、損害賠償請求事件も含まれます。
・民事訴訟
・民事調停
・労働審判
・支払督促
・民事執行
・破産及び再生
・民事保全
民事事件の種類は、上のような例がありますが、損害賠償請求事件の割合は大きいです。
建築トラブルにおける建築裁判では、多くの場合で建主側は「損害賠償請求事件」となります。
対して、ゼネコン側は、支払いを求める「「請負代金請求事件」となります。
意味や名称は異なりますが、いずれの場合も「金銭に納得が出来ない」ことに起因します。
今回は、建主側が金銭に納得できず、支払いの一部または全部を実行しなかった場合を考えましょう。
建主AX建設に建築を依頼したが、
金額が納得いかない・・・
大抵の場合、工事請負契約後の増額に対して、「納得できない」建主は一定数存在します。



まあ、だが今後のこともあるから
やむを得ないか・・・
ここで、比較的大人しい日本人は、「今後の付き合い」を念頭に「納得できないが払う」ことが多いです。



納得できないものは
支払いたくない!
その一方で、「納得できないものは絶対支払えない」人もいます。
この時、ゼネコン側は、



増額は、建主は
納得の上で契約しています!



契約通りの
支払いを求めます!
こうして「請負代金請求事件」に発展します。
「法律違反OK」の裁判官たち:「損害に繋がらない」法律違反とは?


こうして、係争に至る前、あるいは至った後に、私たちは建築専門家として入ることが多いです。
そして、争いの原因となっている建築工事に関して、多数の資料を確認します。
・工事請負契約書
・契約前後の工事代金増減表
・設計図書(基本設計図書及び実施設計図書)
・確認申請書(大型の場合は、開発許可申請書等)
・建築確認済証及び完了検査済証(受領書)
・条例などに対する申請書と許可証(受領書)
・工事中の記録写真
・工事見積書
・打ち合わせ議事録
建築工事においては、設計図書や契約書、あるいは写真など多数の書類が登場します。
それらの全ての書類を丹念にチェックすると、



これは、
おかしい・・・
おかしな点、不自然な点が必ず現れます。
今回のケースは、「ゼネコン側が被害者」という構図です。
ところが、トラブルとなるゼネコンには、大抵「なんらかの問題」があります。
この「問題」は大小様々ですが、これまで見てきたケースでは、工事請負契約に関する問題が多数ありました。
「何を問題とするか」は主観によります。
工事請負契約に関しては、建設業法違反などの例も多数あります。



〜の点において、
X社は建設業法違反の可能性が高いです。
ところが、私たちがこのように意見書等で緻密に指摘しても、



「建設業法違反の可能性」は
分かりますが・・・



それって、損害賠償と
因果関係ありますか?



因果関係がないなら、
法律違反は関係ないです!
裁判所や裁判官は、「損害賠償と因果関係なければ、法律違反は無関係」のスタンスです。
この「法理論」は、どうしても納得できません。
「法律違反を犯すこと」は、必ず「なんらかの損害と因果関係がある」はずです。
ところが、この点を立証することは極めて難しいです。
なぜならば、「法律違反を犯すこと」はゼネコンの姿勢であり、それがダイレクトに金銭に結びつきにくいからです。
「法律の総本山」である裁判所は、「法律を守ること」をもっと重視すべきと考えます。
次回は上記リンクです。


