前回は「設計会社作成の「明らかに過大な」工事見積と建築裁判〜損害額の根拠となる「工事見積書」・とても大事な損害額の根拠〜」の話でした。
「工事を行う力も資格もない」設計会社の見積書

筆者は、建築や不動産に関する裁判・紛争に関するコンサルティングを行っています。
最初は、とても縁遠い存在だった裁判や紛争の世界。

今、建築裁判を
やっているんだけど・・・



設計図書や見積もりなどが
分からないので、協力して欲しい・・・



OK!
力になるよ!
きっかけは、友人の弁護士からの連絡であり、これまでに大小70程の案件に関与してきました。
普通の人は、なかなか見ることがない訴状などの書面を初めて見たときは、



訴状は、
こういう書類なんだ・・・
法曹界の人にとっては「見慣れた書類」である訴状は、法曹界以外の人にとっては「初見の書類」です。
そして、慣れてくると、訴状や書証・証拠などの書類に「ある傾向」が見て取れるようになります。
・原告が主張する因果関係・ストーリー
・損害額の根拠となる書証:工事請負契約書や工事見積書
裁判においては、最も重要なことが「因果関係」であり、「原告が被告を訴える理由」です。
これは当然のことですが、損害賠償請求事件の場合、その「損害額の根拠」が極めて重要です。
一般の人の感覚ならば、



被告のせいで、色々な
迷惑を受けた・・・
ある個人・法人などが、何らかの理由で「迷惑を受けた」場合、相手に賠償を求めたくなります。
そして、「突然裁判」となる前に、ある程度の話し合いが行われる場合が多く、



まずは、話し合いで、
〜万円ほどを頂ければ・・・



当方は
矛を納めよう・・・
訴訟は、多大な時間と費用が掛かるので、「訴える可能性がある側」もリスクがあります。
この「話し合い」においては、「このくらいの金額」という曖昧な雰囲気でも良い場合があります。
ところが、裁判の現場になると「このくらいの金額」では、根拠とは見做されません。
そこで、「損害額の根拠」として「明確な数字が記載された書面」が書証として必要です。



この工事見積書が
損害額の根拠です!
本来、工事見積書は「工事を請け負う可能性がある」建設会社が作成する書類ですが、



とりあえず、設計会社が
作成した工事見積書です!
裁判の世界では、「工事を行う力も資格もない」設計会社作成の工事見積書が頻繁に登場します。



なるほど、損害賠償金額の根拠が、
この書面ですね。
本来、「関係ない」とも言える設計会社作成の工事見積書。
ところが、裁判官は、それらの書類に対しては「正しい書類」として受け取る傾向があります。
「明らかに高額」の設計会社作成の工事見積書:建設業免許と工事


建築設計会社は、設計の際に建設会社が作成した見積書を精査します。
規模にもよりますが、集合住宅・マンションなどの中規模以上の工事の場合、見積書も分厚くなります。
上記の書類は、設計図書・仕様書・約款を含んだ分厚い契約書ですが、この一部が見積書です。
一つの工事を行う場合「一社に依頼する」ことは少なく、大抵は「相見積もり」になります。
この場合、例えば「一つの工事で三つの工事見積書を精査」するのが、設計会社です。



私たちは、多数の工事見積書を
精査してきました!



だから、工事見積書を
作成することが可能です!
工事見積書を多数見た経験があり、工事のことが「ある程度分かる」設計会社。
設計会社の中には、裁判や紛争などに対して、「工事見積書を作成する業務」を行う会社があります。
本来、工事見積書は「工事を請負意向がある」会社が作成する書類であり、



全てを積算すると
〜万円ほどで・・・



利益を、このくらい見込みたいから、
総額で〜万円くらいか・・・



いや、あまり高額だと断られて、
受注出来ないかもしれないから・・・



少し利益額を減らして、
〜万円くらいにしておこうか・・・
このように「提出する工事金額」に対して、様々検討を加えて、工事会社は作成します。
そもそも、極めて少額の工事以外は、工事に関しては「建設業」免許(一般・特定)が必要です。
「一級建築士事務所」等の免許を有する設計会社は、「建設業」免許を持っていることは極めて稀です。
そのため、「工事を行う力量」も「資格」もないのが、設計会社です。



私たちが、裁判や紛争、話し合いに
必要な工事見積書を作成します!
「力量の有無」は議論があっても、「建設業」の資格を有さない設計会社が工事見積書を作成すること。
これは、「違法の可能性がある」と筆者は考えます。
さらに、問題があるのは、設計会社作成の工事見積書は「明らかに不自然」な点が多いことです。



今回の紛争・裁判で
必要だから、工事見積書を作成してください。



承知しました!
工事見積書作成で、〜万円でいかがですか?



了解です。
お願いします。
このように、原告などの当事者や代理人から「工事見積作成」を依頼され、報酬を得る設計会社。
裁判においても、当事者間の話し合いにおいても「どちらかが要求する満額が通る」ことは少ないです。
・原告:工事金額が高い方が良い
・被告:工事金額が少ない方が良い
このように、原告と被告では、工事金額に対しては、対極的姿勢となります。
そして、原告側が作成する工事見積書は「明らかに高額」であることが多いのが現実です。
「報酬を得る」以上、業務を発注する「原告または被告の意向」を汲むのは当然であり、



今回は、原告側だから、
工事金額を高めにしよう・・・
あるいは、



今回は、被告側だから、
工事金額を低めにしよう・・・
このように、「意図を汲む」場合や、「直接意図を聞く」こともあるでしょう。
いずれにしても、「力も資格もない」設計会社作成の工事見積書は、本来意味がありません。
裁判所など、裁判・紛争に関わる当事者は、このことを理解して対処すべきと考えます。