前回は「「二位三位連合」で巻き返したマクロン大統領〜「禁じ手」の大戦略・民意を反映しないフランス選挙・「スパッと政権移譲」の英国〜」の話でした。
世界に衝撃与えた2024パリ五輪開会式:フランスの超高いプライド

今年2024年7月27日に開催された、2024年パリ五輪の開会式は、凄まじく世界の目を惹く演出でした。
セーヌ川・エッフェル塔など、パリの街全体がライトアップされ、極めて鮮やかで画期的でした。
これまでの五輪開会式においても、「開催国のプライド」を見せつける演出がなされてきました。
今回のパリ五輪の演出は、これまでのどの五輪開会式よりも鮮やかだったと言えるでしょう。
「フランスのプライド」を超えて「フランスの超高いプライド」を世界中に見せつけたとも言えます。

日本の首都である東京の感覚から考えると、比較的コンパクトな大都市であるパリ。
東京の山手線の中くらいの中に、パリの要素が詰まっています。
もし、パリが東京のように広大で無秩序な大都市だったら。
パリは、あのような典雅な大都市にはならなかった可能性が高いです。
都市や景観を国家の財産と考えるフランス:セーヌ川と隅田川

我が東京にも川は流れていて、隅田川や荒川は文化的にも実用的にも非常に重要です。
ところが、隅田川や荒川では「セーヌ川と比較にならない存在」です。
江戸時代の頃、江戸という名前だった東京は、海と川に囲まれた「水の都」でした。
明治時代以降に、日本では、
とにかく
西洋に追いつけ、追い越せ!
強力すぎる欧化主義が取られ、「日本古来の文化」を放棄するような方向で国家が進みました。
当時の欧州を丸ごとコピーして、欧化主義・帝国主義を推進する中で、
江戸から東京になった
この街を開発するのだ!
江戸から東京となった街は、関東大震災などを経ながら、大きく変貌してゆきました。
その後、第二次世界大戦中の東京大空襲で灰燼に帰した東京の街は、復興へ向かってゆきました。
極め付けは、1964年の東京五輪でした。
東京を貫通する
高速道路を作るのだ!
そんなこと言っても、
どこに?
川の上に
作れば良いだろう!

そして、川の上に首都高速道路がつくられ、「川は東京の都市構造の裏側」となりました。
1964年といえば、たかだか60年前で「つい最近」です。
パリで、
セーヌ川の上に
高速道路作ります!
何言ってるんだ!
そんなこと絶対に許さん!
と決定する政治家や官僚が登場したら、フランス全土で暴動が起きそうです。
とにかく、都市や景観を国家の財産と考えて、大事に大事にしてきたフランス。
このフランスにおいて、長らく首都として君臨してきたパリの風格は超越的存在です。
そして、その「世界でただ一つできる五輪演出」を実施したのが2024パリ五輪開会式でした。
あえて物議醸したマリー・アントワネットの生首

このような「パリ全体の演出」に対しては、概ね好感を抱く方が多い中、大いに反感を持つ方もいます。
その理由の一つが、「マリー・アントワネットの生首」演出でした。
かつて、フランス国王妃でありながら、フランス革命の際に1793年に38歳で処刑されました。
この処刑も単なる処刑ではなく、公衆の面前でギロチンにかけられてズバッと処刑されました。
Japanのハラキリは
気持ち悪い!
現代日本では、1970年の三島由紀夫事件以来、ほとんど聞かない切腹。
この切腹に対しては「ハラキリ」と表現され、海外では異常視されています。
確かに、「切腹=ハラキリ」が強烈な違和感を与える気持ちはわかります。
一方で、「30代の女性を公衆の面前でギロチンにかける」発想もまた、多くの日本人には理解不能です。

パンがないなら、
ケーキをお食べ!
民衆が苦しむ中、こう言い放ったと伝説があるマリー・アントワネット。
この言葉は非常に有名ですが、「マリー・アントワネットの言葉ではない」説が有力です。
何にしても、どう考えても「気持ちが悪い」マリー・アントワネットの生首演出。
これは、開催者であるフランス政府も、
これは、世界から
猛反発も買うだろうな・・・
まあ、だが、我がフランスは
フランス革命を経て成立した国家だ・・・
現代のフランスという国家の
偉大なる歴史は、血塗られた歴史でもある・・・
確かに、諸外国の歴史だって
その裏側は血塗られているのだからな・・・
王妃であったMariを公開処刑に追い込んだ
民衆の力こそが、我がフランスの国家の底力なのだ!
このような考えもあって、「物議を醸し出す」ことを承知であえて演出して見せたのでしょう。
この発想にフランスの「真の大国としての超越的プライド」を感じます。
2021年の東京五輪開催式も、なかなか良い面もありました。
東京五輪は平和な雰囲気で、
あんな殺伐としたのは嫌!
という声もありますが、マリオ等「架空の世界」で「なんとなく平和を演出」したのが実態でした。
ある意味、「わざと物議を醸し出して」世界中の注目を惹きつけたパリ五輪開会式。
ここに、フランス政府と国家の未来を目指す大戦略を感じます。
次回は上記リンクです。