前回は「「異常に素直」な電文「ニイタカヤマノボレ一二〇八」到来〜「忍者の如くひっそりと」真珠湾に近づく南雲艦隊〜」の話でした。
米国に翻弄され続けた外務省:決意固めた東郷外務大臣の思惑

日本が、中国などで戦争を繰り広げていた1941年11月下旬。
米国のハル国務長官から「ハル・ノート」が日本外務省に手渡されました。
その書面は「絶対に日本が呑めない」ことばかりが、書きつられていました。
「日米交渉の司令官」とも言える立場であったのが、東郷茂徳 外務大臣でした。

ここまで強硬な
姿勢を米国が持っているとは・・・



今までの日米交渉は
なんだったのか・・・
「ハル・ノート」の内容が強烈すぎて、現地の米大使館が「何をやっていたのかが謎」なレベルでした。


「ハル・ノート」が出される直前、ルーズベルト大統領と会談したのが野村・栗栖両大使でした。



野村や来栖からの
報告では、もう少し良い感じだったが・・・



なぜ、なぜ米国は
突然、ここまで強硬な姿勢になったのだ・・・
鹿児島(旧薩摩)出身の東郷茂徳は、薩摩隼人らしい気骨を持っていた人物でした。



やむを得ん・・・
我が外務省も対米戦に向けて、常在戦場だ!
日露戦争の日本海海戦で有名な東郷平八郎と、東郷茂徳は無関係です。





我がUnited Statesは、
とっくの昔に日米戦を決めていたのだ!
日本側の野村・栗栖両大使と交渉を続けていた、「米外交の司令官」ハル長官。
実際に、ルーズベルト大統領とハル長官が「いつ、対日戦を決定したか」は諸説あります。



ハル長官と、何度も何度も
具体的な交渉をしていたのだが・・・
いずれにしても、「米国に翻弄され続けた」のが当時の日本外務省の実態でした。
「大きすぎる大艦隊」第一航空艦隊:徹底的な情報秘匿に成功


陸海軍の幹部・将兵たちは、対米戦開戦へ具体的に準備をしていました。
ハル・ノートは1941年11月27日(日本時間)に手渡されましたが、その前日の26日には、



よしっ!
真珠湾へ向かう!



空母六隻からなる
大艦隊で真珠湾へ!
すでに「悲観的だったはず」の日米交渉が継続しており、さらに「大奇襲攻撃」であったこの出撃。
この頃の日本海軍の「情報秘匿」は徹底していました。
ほとんどの将兵たちは、



随分な大艦隊だが、
どこへ向かうのだろう?



さあな・・・
どうやら艦長までしか知らないようだ・・・
この時は、南雲司令長官・草鹿参謀長以下、司令官と艦長のみが知らされていました。
「米太平洋艦隊の本拠地である真珠湾へ奇襲攻撃に向かうこと」を。


空前の大艦隊を編成した第一航空艦隊。
第一航空戦隊・第二航空戦隊・第五航空戦隊からなる第一航空艦隊は、「大きすぎる艦隊」でした。
第一航空戦隊(南雲司令長官直卒):空母 赤城・加賀
第二航空戦隊(山口司令官) :空母 飛龍・蒼龍
第五航空戦隊(原司令官) :空母 翔鶴・瑞鶴
正規空母二隻ずつを持つ各戦隊には、それぞれ司令官がいます。
ここで、第一航空戦隊は南雲司令長官が「司令官を兼ねる」立場でした。
この「司令官を兼ねる」のは「日本的発想では納得」ですが、ある意味では「曖昧な組織」でした。



私は
第一航空艦隊司令長官だ!
そもそも、南雲司令長官が第一航空艦隊司令長官であれば、



私は
第一航空戦隊司令官でもある!
本来ならば、第一航空戦隊司令官は、別の人物の方が明確でした。
「最高責任者を明確に」という意味では、「司令長官を置くこと」は大事です。
ところが、各艦の艦長がいる中「最高司令官と各艦の間の司令官」の立場は微妙でした。





私は第二航空戦隊司令官
であり、空母蒼龍と飛龍を率いる!
実際、「攻撃命令の権限」に関して、第二航空戦隊や第五航空戦隊の司令官の権限は曖昧でした。
後に旗艦を飛龍に変更するも、真珠湾奇襲攻撃時には旗艦を蒼龍としていた山口司令官。



私は蒼龍から
第二戦隊を指揮する!
ところが、「最終的な命令権限」は南雲司令長官及び草鹿参謀長が握っていました。
これらの点は、米国の方が「遥かに権限が明確」でした。
この「曖昧さ」は、日本海軍・連合艦隊の米海軍より劣る点でした。
一方で、空母六隻もの大艦隊を派遣し、「ずっと情報を秘匿しながら、遠方の攻撃に向かった」連合艦隊。
確かに、日本海軍・連合艦隊の作戦実行能力は、世界の海軍でトップクラスでした。





我が陸軍は、
中国から一気に戦線を拡大する!



南方資源地帯や東南アジアを
一気に攻略するのだ!
陸軍もまた、対米戦と同時に東南アジアに大展開する作戦を持っていました。
ここで、外務省には「極めて重要な仕事」がありました。



米国には、こちらの攻撃前に
最後通牒をしなければ・・・
その「極めて重要な仕事」とは、米国へ対米戦開始を通告する「最後通牒の交付」でした。
次回は上記リンクです。