偽造される「存在しないはず」の工事請負契約書〜国交省の監視不足・建築不動産裁判の前哨戦「代理人同士の話し合い」〜|法律違反への役所の姿勢2

前回は「建設業法違反取締を強化すべき国交省〜建設業の根幹工事請負契約書・建築紛争や不動産紛争と弁護士の役割〜」の話でした。

目次

建築・不動産裁判の前哨戦「代理人同士の話し合い」

新地球紀行
工事現場(新地球未来紀行)

筆者は、建築・不動産の紛争や裁判に関するコンサルティング業務も行っています。

紛争が起こると当事者間で話し合いが行われ、多くの場合、弁護士が代理人として入ります。

原告側弁護士P

A社の代理人
弁護士のPです。

被告側弁護士S

B社の代理人
弁護士のSです。

法律のプロである弁護士が間に入り、裁判になることも見据えて、話し合いが行われます。

建築や不動産の紛争は、ほとんどが「お金がらみ」となり、金銭が折り合えば解決となります。

以前、再開発の立ち退きに関する建築・不動産紛争に関わった経験があります。

原告側弁護士P

B社が期限通りに立ち退いて頂かないと、
A社は損害を受ける可能性がありますが・・・

被告側弁護士S

B社としては、立退料として〜円ほど
支払って頂ければ、良いのですが。

原告側弁護士P

それほど高額な要求額は呑めないので、
A社は支払いません。

被告側弁護士S

それならば、B社としては
立ち退けないです。

このように、代理人弁護士の間で当事者間の紛争や問題に関して、話し合いが行われます。

ほとんどの場合で複数回行われ、当事者が立ち会うことも、立ち会わないこともあります。

原告側弁護士P

A社としては、譲歩して
この金額です。

被告側弁護士S

譲歩頂いたとしても、
その金額では、呑めません。

原告側弁護士P

B社が期限までに立ち退かないと、
工程やスケジュールに大きな影響が出ます。

原告側弁護士P

その場合、B社が損害を被ることに
なるので・・・

原告側弁護士P

A社に損害金を求める
可能性があります。

被告側弁護士S

B社としては、立退料などに
納得できないので、立ち退けないです。

「双方で折り合わない」場合は、裁判へと突き進むことになります。

偽造される「存在しないはず」の工事請負契約書:国交省の監視不足

新地球紀行
工事現場(新地球未来紀行)
原告側弁護士P

どうしても、B社が
納得頂けないなら、裁判しかありませんが・・・

「話し合いの場」であれば、双方が納得すれば良いですが、裁判になると、裁判所が判断します。

裁判になる場合は、「突然被告に訴状が届く」こともあります。

事前の話し合いが行われている場合は、「突然訴状」は少ない傾向があります。

多くの場合で、原告となる法人・個人から、被告となる法人・個人へ通知書が出されます。

原告側弁護士P

話し合いを続けてきましたが、
B社が退去してくれなかったので・・・

原告側弁護士P

A社としては、
〜円の損害を受けました。

原告側弁護士P

そこで、A社はB社に、
その損害を支払って頂きたい。

原告側弁護士P

〜月〜日までに、
下記口座まで、当該金額をお支払い下さい。

このように、多くの場合で「期限内に金銭の支払い」を求める通知書が届きます。

原告側弁護士P

支払いが行われない場合には、
訴訟します。

そして「期限内の金銭支払い」がなかった場合は、「訴訟に進む」ことを通告するのが通知書です。

この通知書に従って、「被告となる側」が支払えば「そこで終わり」となりますが、

被告側弁護士S

B社は、支払う予定が
ありません!

通知書は「想定内」なので、ここで終わることは、ほとんどありません。

そのため、通知書は、裁判前の「一種の儀式」のようなものです。

その後、この紛争は裁判となり、原告側は「損害の根拠」として工事請負契約書を提出してきました。

原告側弁護士P

被告のせいで、この工事をする
必要があった!

原告側弁護士P

そして、原告はこの工事を別途に
発注せざるを得なかった!

原告側弁護士P

その別途(追加)工事発注の書証が、
この工事請負契約書です!

追加工事発注の因果関係

1.被告の行為によって、新たな別途(追加)工事が必要となった事実

→2.その別途(追加)工事を実際に行った事実

→3.その別途(追加)工事の費用を原告が支払った事実:損害

上記のような因果関係による流れにおいて、契約書の存在は強力です。

ここで、筆者は、「工事請負契約書の日付が工事後」であることに気づきました。

さらに詳細に日付の流れを確認すると、下記の流れでした。

工事請負契約書作成の流れ

1.B社が期限までの退去拒否

→2.A社は別途・追加工事を実施・完了(A社の主張)

→3.工事完了後、半年以上経過して、工事請負契約書作成(通達書発送の約10日前)

→4.通知書発送

→5.A社が訴訟提起

上の流れから、A社の代理人などの関係者は「訴訟のために契約書を作成した」のは明白でした。

この「工事請負契約書作成」を主導したのは、代理人と考えます。

原告側弁護士P

工事請負契約書が
あれば、裁判が有利に運ぶ!

原告側弁護士P

A社さん、工事請負契約書を
X社に依頼出来ませんか?

A社

ああ、それならX社に
一言依頼すれば、作ってくれますよ!

このような流れで、「工事請負契約書は裁判のために作られた」と考えます。

建築設計や工事関係者の人なら分かりますが、「追加工事で契約書を別途作成」は原則ありません。

「追加工事は追加費用として請求」するだけで、双方で納得していれば良いのです。

この点では、「本来存在しないはず」の追加工事契約書が、裁判のために偽造されたことになります。

筆者は、工事請負契約書を作成したゼネコンのことを国交省担当者に通報しました。

Yoshitaka Uchino

この工事請負契約書は
建設業法違反と考えますが・・・

国土交通省

確かにその可能性が
高いですね・・・

ところが、「明らかに法律違反」でも、「直ちに処罰」とはならないのが、役所のスタンスです。

A社

ふっふっふ・・・
これで、我が社が有利か・・・

このようなことが、実際に起きているのが、建築裁判の現場です。

国交省には、ぜひ建設業法・建築基準法の遵守のために、目を光らせて欲しい。

新地球紀行

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