「対米開戦止むなし」方針決定へ〜日米開戦決定前の「重臣会議」の行方・全くなかった重臣「ハル・ノート受諾すべし」の声・日米戦争前提へ〜|リメンバー・パール・ハーバー64・時代の一面・真珠湾奇襲攻撃

前回は「揺れ続けた世界各国「自衛権の範囲」の解釈〜大戦争と法律解釈論・「交渉決裂の印象を与えぬ様」懸命だった日本外交・国家の主義方針〜」の話でした。

目次

「対米開戦止むなし」方針決定へ:日米開戦決定前の「重臣会議」の行方

新地球紀行
真珠湾奇襲攻撃(歴史街道2021年12月号 PHP研究所)

1941年12月8日、大日本帝国は、米国に対して真珠湾奇襲攻撃を敢行しました。

この真珠湾「奇襲」攻撃は、米国への「宣戦布告前」となってしまった歴史があります。

この「宣戦布告前」に関して、米国は”Sneak Attack=騙し討ち”と呼んでいます。

実は、真珠湾奇襲攻撃前、大日本帝国は、米国との交渉を必死に続けていた歴史があります。

その日米交渉の歴史を紐解いて、大日本帝国の”真の歴史”を考えてみたいと思います。

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「東郷茂徳外交手記 時代の一面」(東郷茂徳 著、明治百年史業書、新地球未来紀行)

日米開戦時、そして敗戦時に外相であった東郷茂徳が戦後に著した「時代の一面」という手記があります。

東郷茂徳

かくて交渉継続は不可能の状況になったが、
交渉は御前会議で正式に決定するまでは、

東郷茂徳

外務省側で打ち切ることは出来ないので、
出先に対しても、

東郷茂徳

交渉決裂の印象を与えぬ様にと
注意を与えた。

そして、11月末のハル・ノートをもって、事実上「日米交渉は決裂」となりました。

東郷茂徳

かくて連絡会議及び閣議においても
開戦止むなし、との意向であったが、

東郷茂徳

二十八日連絡会議の席上、首相から、陛下においては
事前決定前重臣の意向をも承知せられたい、との思し召しがあるから、

東郷茂徳

これに対する説明を、どうすれば良いか、
と言うことを申し出た。

当時の大日本帝国には、「重臣」と言う存在がありました。

「重臣」とは、原則として、「総理大臣を務めた人物」です。

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東條英機 首相兼陸軍大臣(国立国会図書館)
東條英機

陛下においては事前決定前重臣の意向をも承知せられたい、
との思し召しがあるから、

東條英機

これに対する説明を、
どうすれば良いか・・・

この頃、昭和天皇は、明らかに「日米開戦反対」の姿勢でした。

そして、1945年10月18日に、近衛内閣が倒れてしまい、東條内閣が成立した経緯がありました。

つまり、1945年11月末時点で、東條英機総理大臣は「総理になって1月あまり」の状況でした。

全くなかった重臣「ハル・ノート受諾すべし」の声:日米戦争前提へ

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左上から反時計回りに、東郷外相、野村吉三郎 米国大使、Joseph Grew駐日大使、Cordell Hull米国務長官(丸 戦争と人物11 潮書房,Wikipedia)
東郷茂徳

これにつき、一部では、いわゆる重臣といっても、
昔の元老と異なり、啓沃の権限はないのであるから、

東郷茂徳

詳細之に説明する必要もないとの
説も出たが、

東郷茂徳

自分は、国家が極めて重大なる局面に遭逢して居るのであるから、
なるべく多数の人に其の真相を知らせることが適当である、

東郷茂徳

されば、苟くも国家の重臣たる人々には
詳細に説明する必要がある、

東郷茂徳

猶殊に陛下が其意見を求められん
とするのであるから、

東郷茂徳

政府の承知する限りに於いて、全ての知識を
供給すべきであると主張した。

とにかく、東郷外相は、「重臣にも説明し、意見を求めるべき」と主張しました。

東郷茂徳

そして、翌日、拝謁前午前中に各関係閣僚から
説明することとなり、翌日は、まず総理より

東郷茂徳

戦争に訴えざるを得ざる理由に尽きて説明があった後、
自分は日米交渉の成行につき、詳細に説明した。

東郷茂徳

戦争に訴えざるを得ざる理由に尽きて説明があった後、
自分は日米交渉の成行につき、詳細に説明した。

東郷茂徳

之に対し、若槻、廣田両氏から質問があったので、
詳細に答弁したが、

東郷茂徳

何人も米国の提案を受諾すべしと云うが如き
発言はなかった。

日米交渉十一月二十六日米側提案(ハル・ノート)

合衆国及日本国間協定ノ基礎概略

第一項 政策ニ関スル相互宣言案

合衆国政府及日本国政府ハ共ニ太平洋ノ平和ヲ欲シ其ノ国策ハ太平洋地域全般ニ亙ル永続的且廣汎ナル平和ヲ目的トシ、両国ハ、右地域ニ於テ何等領土的企図ヲ有セス、他国ヲ脅威シ又ハ隣接国ニ対シ侵略的ニ武力ヲ行使スルノ意図ナク又其ノ国策ニ於テハ相互間及一切ノ他国政府トノ間ノ関係ノ基礎タル左記根本諸原則ヲ積極的ニ支持シ且之ヲ実際的ニ適用スヘキ旨闡明ス

1.一切ノ国家ノ領土保全及主権ノ不可侵原則

2.他ノ諸国ノ国内問題ニ対スル不関与ノ原則

3.通商上ノ機会及待遇ノ平等ヲ含ム平等原則

4.紛争ノ防止及平和的解決並ニ平和的方法及手続ニ依ル国際情勢改善ノ為メ国際協力及国際調停尊據ノ原則

日本国政府及合衆国政府ハ慢性的政治不安定ノ根絶、頻繁ナル経済的崩壊ノ防止及平和ノ基礎設定ノ為メ相互間並ニ他国家及他国民トノ間ノ経済関係ニ於テ左記諸原則ヲ積極的ニ支持シ且実際的ニ適用スヘキコトニ合意セリ

1.国際通商関係ニ於ケル無差別待遇ノ原則

2.国際的経済協力及過度ノ通称制限ニ現ハレタル極端ナル国家主義撤廃ノ原則

3.一切ノ国家ニ依ル無差別的ナル原料物資獲得ノ原則

4.国際的商品協定ノ運用ニ関シ消費国家及民衆ノ利益ノ充分ナル保護ノ原則

5.一切ノ国家ノ主要企業及連続的発展ニ資シ且一切ノ国家ノ福祉ニ合致スル貿易手続ニ依ル支払ヲ許容セシムルカ如キ国際金融機構及取極樹立ノ原則

第二項 合衆国政府及日本国政府ノ採ルヘキ措置

合衆国政府及日本国政府ハ左ノ如キ措置ヲ採ルコトヲ提案ス

1.合衆国政府及日本国政府ハ英帝国支那日本国和蘭蘇連邦泰国及合衆国間多邊的不可侵条約ノ締結ニ努ムヘシ

2.当国政府ハ、米、英、支、日、蘭及泰政府間ニ各国政府カ仏領印度支那ノ領土主権ヲ尊重シ且印度支那ノ領土保全ニ対スル脅威発生スルカ如キ場合斯ル脅威ニ対処スルニ必要且適当ナリト看做サルヘキ措置ヲ講スルノ目的ヲ以テ即時協議スル旨誓約スヘキ協定ノ締結ニ努ムヘシ。斯ル協定ハ又協定締約国タル各国政府カ印度支那トノ貿易若ハ経済関係ニ於テ特恵的待遇ヲ求メ又ハ之ヲ受ケサルヘク且各締約国ノ為メ仏領印度支那トノ貿易及通商ニ於ケル平等待遇ヲ確保スルカ為メ尽力スヘキ旨規定スヘキモノトス

3.日本国政府ハ支那及印度支那ヨリ一切ノ陸、海、空軍兵力及警察力ヲ撤収スヘシ

4.合衆国政府及日本国政府ハ臨時ニ首都ヲ重慶ニ置ケル中華民国国民政府以外ノ支那ニ於ケル如何ナル政府若クハ政権ヲモ軍事的、経済的ニ支持セサルヘシ

5.両国政府ハ外国租界及居留地内及之ニ関連セル諸権益並ニ一九○一年ノ団匪事件議定書ニ依ル諸権利ヲモ含ム支那ニ在ル一切ノ治外法権ヲ抛棄方ニ付英国政府及其他ノ諸政府ノ同意ヲ取付クヘク努力スヘシ

6.合衆国政府及日本国政府ハ互恵的最恵国待遇及通商障壁ノ低減並ニ生糸ヲ自由品目トシテ据置カントスル米側企図ニ基キ合衆国及日本国間ニ通商協定締結ノ為メ協議ヲ開始スヘシ

7.合衆国政府及日本国政府ハ夫々合衆国ニ在ル日本資金及日本国ニアル米国資金ニ対スル凍結措置ヲ撤廃スヘシ

8.両国政府ハ円弗為替ノ安定ニ関スル案ニ付協定シ右目的ノ為メ適当ナル資金ノ割当ハ半額ヲ日本国ヨリ半額ヲ合衆国ヨリ供与セラルヘキコトニ同意スヘシ

9.両国政府ハ其ノ何レカノ一方カ第三国ト締結シオル如何ナル協定モ同国ニ依リ本協定ノ根本目的即チ太平洋地域全般ノ平和確立及保持ニ矛盾スルカ如ク解釈セラレサルヘキコトヲ同意スヘシ

10.両国政府ハ他国政府ヲシテ本協定ニ規定セル基本的ナル政治的経済的原則ヲ遵守シ且之ヲ実際的ニ適用セシムル為メ其ノ勢力ヲ行使スヘシ

後世の視点から見れば、「受諾を検討すべき」と言う声も根強いハル・ノート。

之に対して、重臣たちから「受諾すべき」という声が「全く上がらなかった」事実があります。

東郷茂徳

其の後、各氏から種々の質問があったが、
全部、船舶、飛行機、石油等の補給の問題、

東郷茂徳

財政食糧の問題、並びに日本内地における
思想問題等であった。

後世の視点から見れば、もう少し「日米戦争の是非」について議論があっても良かった重臣会議。

ところが、早くも「日米戦争前提」のもと、具体的な協議がなされたのでした。

とにかく、もはや「開戦止むなし」のみのまま、大日本帝国は突っ走ってしまった歴史がありました。

新地球紀行

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