前回は「建設業法違反を容認する裁判官〜法律違反よりも「実害の有無」・「正義の味方」ではない裁判所・「とにかく法律による判断」が最優先〜」の話でした。
裁判で重要な「損害賠償額の根拠」となる書面:「全ては書面で」の裁判

筆者は、これまでに多数の建築裁判のコンサルティングを行ってきました。
建築裁判では、ほとんどの場合が「損害賠償裁判」となります。
建物の瑕疵に問題がある場合は、少し異なりますが、多くの場合は「金銭を求めて提訴」となります。
・原告が主張する因果関係・ストーリー
・損害額の根拠となる書証:工事請負契約書や工事見積書
ここで、裁判においては、提訴する側も提訴された側も代理人弁護士が登場しますが、
原告・建主AX建設に建築を依頼したが、
きちんと工事してくれなかった・・・
建設に対する、「原告の思い」が「裁判の根幹」であることは当然です。



Y建設に建築を依頼したが、
工事中に増加した金額が納得いかない・・・
「工事のトラブル」や「金銭のトラブル」など様々ですが、「これらの思い」を、



X建設に対して、不満があるから
〜円くらい、払って欲しい!
このように、そのまま裁判官に「支払って欲しい」という思いを伝えたところで、通らないのが裁判の世界です。



お気持ちは
分からなくはないですが・・・



それで、何が
根拠ですか?



根拠を書面で
提出して、書面で主張してください。
このように、裁判官は「全て書面ベース」で裁判を進行させます。
そして、訴訟を提起する際には、「このくらいの金額が欲しい」ではダメで、



提訴して、損害賠償を
求める金額の根拠を全て書面で提出してください!
明確な金額の根拠が全て書面で求められるのが裁判の現場です。
この「全て書面で求められる」ことは、裁判官・弁護士などの法曹界の方なら「常識」かもしれません。
その一方で、「全ては書面で」であり「何事も書面で」が裁判です。
この傾向は、先進国の裁判所では、どこでも同じかもしれません。
その一方で、「全ては書面で」には違和感を感じます。
裁判で法律違反は「どこまで許されるのか?」:損害賠償と建築基準法違反


そして、損害賠償請求事件では、原告代理人と被告代理人が、書面で戦い続けます。
かつて、ある建築物を建築した建主とゼネコンY社の損害賠償請求事件のコンサルティングを行いました。



ゼネコンYは、建主の意向を
完全に無視した施工を進めた!



だから、建主はゼネコンYに
工事差し止めを求めた!



ゼネコンYが悪質であるのは
明らかだから、支払った代金を返金いただきたい。
「建主の意向」にどこまで、設計者や施工者が応じるのかは、一概には言えません。
建主が設計を設計のプロである、建築士または建築家に依頼した場合は、「デザインはある程度任せる」べきです。
そして、ゼネコン・建設業者は、「建主の意向」を反映した設計図書に従って、粛々と建築を推進すべきです。
この事件では、明らかに「ゼネコンYが建主に意向に逆らった」事件でした。
そのため、時系列や証拠を見れば、「建主が正しいのは一目瞭然」ですが、



原告、被告から提出された
書面をじっくり拝見しますね・・・



被告は「建主の意向」に
反してない、と主張していますが・・・
そして、「明らかに悪い」はずのゼネコンは、一生懸命色々な書類を出して反撃してきます。
この事件では、ゼネコンが建築基準法に明確に違反していることが、書類から判明しました。
さらに、間抜けなことに、ゼネコン側である被告代理人から提出された証拠書類によって、違反が発覚しました。
建築基準法違反は、「法律の総本山」である裁判所では「最大限考慮されるべき」内容です。
このことを、建築基準法の条文を丁寧にまとめて、意見書として提出しましたが、



建築基準法違反、
ですか・・・



まあ、褒められたことでは
ありませんね・・・



ところで、その違反が
損害に結びつきましたか?
このように裁判官は「結局、損害に結びついたか」を重視します。
この裁判では、他にも様々な反撃を行い、当方がコンサルティングをした原告側が「勝訴的和解」となりました。
結局、良い方向で終わりましたが、「建築基準法違反は関係ない」とする裁判官の視点は納得が行きません。
裁判官には、「法律違反は、あらゆる損害の原因の一つである」ことを認識して頂きたい。

